第9話 ぶんぶんぶん、ハエが飛ぶ
まず現場を見なくては話になりません。
私はヘルメットをかぶって現場をふらふらします。
といってもまだはじまったばかり。基礎の掘削とコンクリート打ちをやっている状態です。
総堀りではなく、サーベーヤーが掘る位置を出して、そこだけ掘っていく方式。掘るといっても1~2メートルくらいなので、倒壊防止の山留め杭とかも打ちません。
掘ったら砕石いれてしつこく転圧。
いや、ほんとにしつこいくらいやります。ランマー使って、どっどっどっと、これでもかってくらい締め固めます。
はっきりいって、日本じゃここまでやりません。
案外、まじめなんだな、こいつら。
日本とはこだわるポイントがちがうのか、たんに下請けの立場が日本より弱いのかしりませんが、そう思いました。
それにしても人が多いな。
人件費が安いせいか、日本人みたいに「土木作業員なんていやだ」という人が少ないのか、人員は豊富。すくなくとも日本よりは。
広い現場とはいえ、やってることは基礎工事だけなので、あまり見るところもありません。事務所に戻ってくると、中にはハエがぶんぶん飛んでます。
ふと窓を見ると、窓の下枠のところにハエの死骸が何匹も転がってました。
うええ。
きっと近くのキャンティーン(食堂)の生ゴミに集まった奴が紛れ込んでくるんでしょう。
潔癖症には無理な職場だな。
潔癖症とはほど遠い私でも思わずため息が出ます。
それを聞きつけたスタッフがフレンドリーに声をかけてきました。
「南野さん、もうホームシックですか?」
ほっとけっ!
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