第13話

-玄武side-


―――姉さん…!姉さん……!!


―――あなたは…何も悪くない……


―――ごめんなさい…ごめんな…さい…


―――あなたを……れて………きたかった……



ノイズのかかった映像の中で、血溜りに横たわった少女は泣きじゃくる少年に微笑み、程なくして事切れる。



「今の…」



「……彼女は最期まで綺麗だったよ、綺麗に咲き誇っていた。だからこそ取り返したかった。奴らに奪われたものを。花びらの一枚まで根刮ぎ奪い返そうとした。……でも僕は無力だったんだ。血はどこまでも僕らを不幸にした。呪われていたんだ」


「君は…!?」


背後から聞こえた声に振り向くと、そこには亡くなった筈の母親の姿が、闇の中にすーっと立っていた



「…お母、さん……?」


―――玄武、母さんを殺しなさい


その声に、言葉を失う。

全身の血がさっと引くのが分かった。


―――何をしているの玄武、おまえはこの役目を継ぐ者。……妖一人殺すことくらい…できなくては…駄目よ


「お母さん……やめて……やめてよ」


―――玄武……さぁ、母さんを殺しなさい


母親がゆっくりと両腕を広げた。

定まらない視界のなかで、ボロボロと零れる涙を拭うこともせず、 母親だけをしっかりと捉える。


手の中の御札がゆらりと炎を纏うのを、母親が安心したような笑みで見守っている。



「お母さん……俺…………ぼくは…………」


また、

また罪を犯してしまう。 



自分を生み、育ててくれた母親を




あの日と同じように――――






母親の背後で、誰かが不敵に笑ったような気がした。



重たい扉の閉まる音と共に、

意識は闇の中へ沈んでいった




(続)




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