Blue Crow
鼠虫
青い空
僕より速い鳥なんが他にいらない…
どこまでも果てしなく続く青。
でも海の青と空の青は交わることがない。同じ青なのに、どうしてか。
単に色の濃さが違うだけなんだろうけど、僕にはもっと他に理由があるように思えた。
僕は今、空を飛んでいる。鉄の塊に乗って。眼下には青い海と滑走路が大部分を占める小さな島がある。僕が今乗っている鉄の塊の事をみんなは、戦闘機、と呼んでいる。ここまで説明すればもう大抵の人は分かると思う。そう、僕は軍人だ。いや、軍人と言うより傭われ遊撃隊といったほうが合ってるのかな? まぁ要するに僕は兵士で、今基地の上空を偵察しているところなのだ。
「ザック、レーダーに異常はないか?」
「はい、異常ありません。」
「そうか。あれはなんだったんだ…」
基地の管制塔より通信が入った。
先刻、基地付近の上空、高度5000m、レーダーに反応があったのだ。機体は一機だけの単独。確実におかしい。普通なら編隊飛行するだろう。近くに演習をするような場所は無いし、ましてや滑走路すらない。自分が帰還する基地にも今の所は僕の機体だけしか無い。
司令部からの指示をもらい、とりあえず基地に帰ることにした。
その場から基地へ折り返し着陸態勢に入ろうとした。ザーザザッザーと突然通信機のスピーカーからノイズが流れた。
「何だ⁉︎ どうした管制塔!おい!」
「電・・妨害・・た・・」
「クソッ、ジャミングか。どこからだ?」
耳元にノイズが響く。
何か目視で確認できるものは無いか、首を振って辺りを見回した。その時だった。
自機のレーダーに反応があった。しかもすぐ後ろだ。
「CAUTION....CAUTION.」
機体が、危ない、と知らせる。
轟音が後方から迫ってくる。
(ヤバい、落とされる…!)
そう思った時にはもう機体から脱出していた。コックピットから座席ごと射出され青空に放り出された。前方には自分の機体と所属不明の機体が見える。そして爆発音と共に自機が破壊された。アフターバーナーをふかし所属不明機が音速で飛んで行く。再び通信が入る。
「…これは、ほんの先触れだ…」
いかにも悪役っぽい声がヘッドホンいっぱいに響く。不快だ。
「お前は何者だ、名告れ!」
と僕は続けたが再びノイズが入り何も聞こえなくなり所属不明機も見えなくなった。
パラシュートで降下して着水までのこり60秒。司令部より通信が入った。
「ザック!大丈夫か⁉︎ すぐに船を送る!」
「了解です。」
それだけ言うとすぐに無線を切った。
はぁ、とんだ災難だ。レーダーに映らない機体の突然なる出現。そしてなにより、自分の機体が破壊されたことが心残りだ。これで当分の間、空を飛ぶことが出来なくなった。最悪だ。
苦渋を飲み込み、僕は無事に回収された。
「なんですかあれ‼︎ 司令部長‼︎ 何故知らせてくれなかったのですか!」
「…レーダーに反応がなかったのだ…」
基地に戻ってすぐに部長の部屋へ押し入った。苛立ちが込み上げてきた。
「…すみません。少し冷やしてきます。」
そう言うと僕は部屋を出た。
「まぁ、しょうがないじゃないか。君の判断は間違ってなかったよ。あの場合、私も脱出してたわ。」
そう言うのは僕の機体専属の整備士、アリスだ。
「…無理もないわ、レーダーに反応が無いなんで。ステルス機でも目視で確認できるのに、見えなかったんでしょ?」
頷く。
「ならしょうがない。誰も悪者にはならないわ」
でも、と僕が言いかけたのをアリスは遮った。
「ちょうどいい機会じゃない?新しい機体に触れる。あの機体、第三次世界大戦の時に開発された機体だし、今ロールアウトされてる新型なら相性いいやつ絶対見つかると思うんだけどなぁ〜?」
まぁ実際彼女の言う通りなんだ。
さっきの所属不明機も新型の1つだった。僕が乗ってる一昔前の機体が落とされるのも無理はない。
「わかったよアリス。君に意見に従うよ。」
アリスの目が輝きに満ちて見えた。
ほんと新物食いだな。
「じゃあ、そうと決まれば早速カタログ見ないとね! 」
「そうだね」
これなんかどう?と アリスが色んな機体をコンピューターで紹介してくれるのを僕は眺めていた。と、アリスがページをサクサクめくっているときにある機体が目に飛び込んできた。
「アリス、ちょっとこの機体の詳細を。」
「はいはいー!ん?この子?」
僕が指さしたのは海のように深い青色が特徴的な機体だった。
「ザック渋いねー、これがいいの?」
頷く。
「そっかそっか。じゃ、詳細説明だね。」
アリスがそう言うと難しい言葉が次々と彼女の口から出てきた。僕はそれを半分程度しか理解しなかった。
「・・みたいな感じなんだけど、どうする? もうこれに決めちゃう?」
「…これでお願いします」
ハイハーイっと機嫌の良い返事をして、
画面下部にある発注ボタンを押した。
Blue Crow 鼠虫 @mousebug
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