第14話 手を伸ばしても

「はぁあ・・・・・・・・・」

疲れた。

どれくらい登っただろうか。

道はいつの間にか、舗装されてないただの山道になっていた。

岩と岩の間を潜るようにして通り抜ける。

 時折、下の方にさっきまで自分達がいた宿舎が見える。

もうパソコンのマウスくらいの大きさになっていた。

こんな時までパソのことを思い出してしまうのか・・・・・・・・・。

悲しいもんだぜ、ニートの道は・・・。

まぁ半ニートだけどな。

 

 俺の後ろでは女神のアロラでさえ息を荒げている。

運動部の山田はまだ平気だって顔をしているが、眼鏡男子、もとい鍵浦と女子の2人は顔が死んでいる。

よっぽど普段から運動してないんだろう。

 俺は、というと、半ニートと言っても中学時代はバリバリの野球部だったおかげでなんとか登れている。

それでも大分息は上がってきているが・・・。


 もう中腹は越えただろうか。

大分登ってきた気がする。

時間は、出発してから一時間が経過。

「か、彼方さん・・・。お、お茶、の、残ってませんか・・・?」

アロラが息も絶え絶えに訴えてきた。

「ん・・・」

水筒を手渡す。

「あ、ありがとう、ございま、す」

アロラが水筒を受け取り、酒の席のおっさんか、というぐらいに一気に飲んだ。

「お、お前・・・俺の分も残しとけよ・・・」

だが、それは叶わなかった。

「あれ?アロラちゃんそれ、関節キスだけどいいの?」


 ガランッ。

アロラの手から水筒がこぼれ落ちて大きな音をたてる。

「お茶ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

「ごっ、ごめんなさいっ!!手を滑らしちゃって・・・」

すぐさま水筒を手に取るが、一口分も残っていなかった。

アロラを責めようにも、よほど申し訳なく思っているのか俯いているので、そんな気になれないし。

山田め・・・。余計なことを・・・・・・・・・。



 お茶を落としてから15分経った。

 後、何分だ?いや、何時間なのか・・・・・・・・・?

精神的にもヤバい・・・。

これはキツいぞ・・・。

上に向かって手を伸ばしても、登頂さえ見えてはこない。

「クソ、まだか、 てっぺんは」

「まだ、みたい・・・です、ね」

「あそこの岩を越えたら登頂じゃねぇかな・・・」

「それ、はただの夢、物語ですね・・・。幻想で、すね。・・・・・・・・・はっ!その幻想をぶち殺すっ!!」

・・・・・・・・・いきなり元気だな、おい。


 草木をかき分け、先を目指す。

周りを見渡しても 木、木、木木、木だ。

虫もいるし、カエルとかも足にぶつかってくる。

「こ、こうなったら、歌でも・・・歌いましょうか」

アロラの提案に、鍵浦ものってきた。

「アニソン、アニソン歌いましょう!」

お前ら元気だなぁ・・・・・・・・・。

木々の間を二人のハーモニーが駆け巡り、草木を、花々を潤していく。


 僕じゃない 僕じゃない 僕じゃない いつか「過ち」をゆるせるなら

 

やっぱしアニソンか・・・・・・・・・。

この曲は特に始まりとサビが好きなんだよなぁ。

アニメについては、次週が待ち遠しいくらいハマってたよ。主人公の乗ってるあれがさぁかっこよくてさ、良かったなぁ。また、見直そっかな・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・って俺は何をまた説明してんだよ。



 クソ、心の中でツッコむのも疲れた・・・・・・・・・。

はやく、登頂に・・・。



 


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