石化映画エキストラ

ひでシス

映画へのエキストラ出演

「え~。こんなの大丈夫なんですかぁ?」


「大丈夫ですよ、メグミさん。あなただって映画で石化ガスが使われているシーンを見たことがあるでしょう?」


メグミは台本を読みながら顔を上げた。スタッフはなんでもない様子でメグミの不安に答える。


映画へのエキストラ出演。そんなバイト広告を見つけたのはほんの3日前だ。メグミはちょうどその日は予定が空いていたし、映画に出演できるだなんて一般人にはなかなか無い機会である。そんなこんなでメグミはすぐ応募した。


エキストラ出演は運よく採用される運びになった。私は朝 撮影場所へ来て、そうして初めて台本を読んだ。作っている映画は、隕石が地球に落ちてきて生物が石化してしまうガスを出す菌が地球上で繁殖するというパニック映画だ。その台本の中で「エキストラM、N 石化ガスで石化される」という記述を私は見つけた。エキストラMとは私のことだ。


「石化ガス……。すぐに元に戻してもらえるんですよね?」


石化されるってなんなんだ……。メグミは訝しがって不安を口に出す。


「ワンシーン撮るだけだから、長くても半時間ぐらいですよ。」


半時間かぁ。半時間なら大丈夫かな?


 *


ビルの地下駐車場で他のエキストラNと共に私は居た。私たちの周りをカメラや照明、長い棒に付いたマイクなどが囲んでいる。いよいよシーンの撮影だ。


「じゃあいきますよ~。シーンP3-1 スタート!」


エキストラNさんと私は地下駐車場を歩いている。すると、ふとNさんがつまずいたようにコケる。なんだろうと思って私は振り向くと、Nさんの左足が重く、灰色に変色をしていた。石化ガスだ!


「きゃあ! 何!? 何なのこれっ!」とNは言う。「足が動かない……。」


「え……。これ、朝のニュースで言ってた石化ガスじゃない?! ほら、下水道みたいな湿ったところで菌が繁殖しているから、地下みたいな空気の滞留するところには気をつけなさい、って言ってた……」


「そんな! あ、足が動かない。こんなところで倒れてたら……身体が全部石化しちゃう!」


次の瞬間、カメラから見えないところからスタッフが石化ガスを私たちにゆっくりと噴射する。白いガスを受けたNさんの脚はピキピキと音を立てながら、脚からふくらはぎ、太ももへと灰色が上がっていく。


「た、助けて……!」Nはメグミの腕を縋り付くように掴んだ。徐々に石化していくNの身体を見て私は本能的な恐怖を覚える。


「っひゃあ!」メグミは恐怖で叫び声を上げてから、Nの手を振りほどいて逃げ出す。台本通りだ。


Nを見捨てて、白いガスから逃げるように私は駐車場を駈け出した。身体を硬い石にしてしまう猛毒ガスはゆっくりと、しかし確実にメグミを追い詰めていく。駐車場の通路を走ってガスから逃げる。


「そんな……、行き止まりなんて。」


駐車場の通路を駆け抜けて辿り着いた場所は袋小路だった。3面のコンクリートの壁がメグミの行く先を阻む。こんなことをしていたら……。


ガスはメグミに追いつき、ゆらゆら揺れながらメグミの足元に纏わり付く。


「誰か……! 助けて。石になんかなりたくない!!」


足の小指の先からメグミの身体はゆっくりと石化していく。私は石化の変な感触と拘束感で心が絞られるようで、自分の身体を自分で抱き締めた。


「助けて……助けて! いやああああぁぁぁぁぁぁ ぁ ぁぁ  ……。」


(ピキィ、ピキピキ)という音とともに脚から身体、そして顔が石化していく。絶叫と共に涙が目から漏れだした。視界が石化ガスでホワイトアウトする。しばらくするとガスは四散したのか、全身が石化したメグミが煙の中から出てきた。石化して重くなった体重をガスから少しでも逃れようとしたのかコンクリートの壁に預けるように倒れこんでいる。強い恐怖に震える表情が顔。助けを追い求める手は空中に投げ出されているが、その手を掴むものは誰も居ないのだった……。


 *


「はい、カットー! いや~よかったよ。よかったよかった」


カメラの裏から監督の声が聞こえてくる。だが、撮影が済んだとしても私は動けない。頭の先から足の先まで完全に石化してカチカチに固まっているからだ。


そうしてすぐに防鹿マスクをしたスタッフたちが台車を私の前に持ってきた。二人がかりで私を台車に乗せると、ガラガラと駐車場内を運んでいく。行き先は撮影車両のバンの中だ。その中にある石化ガス中和装置に私はセットされ、20分掛けて身体の石化を解かれた。


これで一仕事が終わった。私は装置の中から出されて空きスペースで休む。ジュースを飲んでいると、先ほどのスタッフに声を掛けられた。


「いや~お疲れ様。あのシーンすごくよかったよ。もしかして演劇やってたりした?」


「ありがとうございます。ええと、演劇はやってないですぉ。」


スタッフはニコニコした顔で話を続ける。


「それでねぇ。あんまりにもメグミさんの演技が上手いから、監督がどうしてももう一度って言ってて。ただの1発顔出しだけのエキストラじゃもったいないんだってさ」


「へ。なんですか?」


「さっきのシーンは別の子で撮り直す。それでメグミさんには、別の役をやってもらいたいんだ」


スタッフの話はこうだ。メグミの石化される演技にあまりにも真に迫るものを感じたと。1シーンだけだもったいない。この撮影場所でもう一度石化されて、研究所で被害者の石像として研究者たちに調べられるシーンを撮りたいということだった。


そりゃ石化される演技が真に迫っているのは当然だ。だって石化されるのは本当に恐かったのだもの。


「研究所で石像として調べられるって、じゃあ研究所でももう一度石化されるんですか?」


「いや、それだと格好が変わっちゃうじゃない。だから、ここで石化するシーンを撮影して、石化したまま研究所セットまで持って行って、そこで撮影するの。」


スタッフななんでもない様子でビックリするようなことを口にした。


「えっ それってどれぐらい石化されたままなんですか!?」


「大丈夫。まだお昼にもなっていないでしょ。研究所の撮影は夕方にやるから、全部で6時間ぐらいかな。お願いできる?」


「えええ……。それはちょっと。」


「ね。ね。お願い! ギャラはこんなけ出すから!」


スタッフのあまりにも必死な感じと、提示された額を見てメグミはシブシブ了承した。6時間ぐらいなら大丈夫だろう……。


 *


地下へ下っていくエレベーターのカゴの中にメグミは居た。電光表示はB1、B2と下っていく。


すると、エレベーターのドアの隙間から白いガスがゆっくりと入ってきた。あの石化ガスだ。


「えっ なにこれ。いや! 出して!!」


石化ガスを受けてまだらに変色した脚。部分部分が肌の感触がなくなっていて気持ち悪い。それを見てメグミは焦る。すぐさまエレベーターのすべての階のボタンを押す。こうすれば一番近い階に止まってくれるからだ。


ピキピキと脚が完全に石化してから、やっとエレベーターは地下3階でドアを開けた。


「ああ、助かっ……ひああああああぁぁぁぁぁ あ、アガガガガ ガガ ァァ」


開いたエレベーターのドアから大量の石化ガスが吹き込んでくる。急いで出ようとしていたメグミは石化ガスを正面からまともに受け、驚きと恐怖の表情のまま一瞬で全身が石像に変わった。


支えを失ったメグミの身体はぐらりと傾き、ゆっくりとドアの開いた先に身体が倒れていく。固まっちゃって受け身が取れないのに、イヤ! 助けて!!


(ゴオォォォォン!)


「(痛ったあああああい!!!)」


しばらくするとガスが晴れる。白い煙から現れたのは、大の字になってエレベーターの中から外へ倒れこんだ女性の石像と、閉じようとしては石化した脚という異物を感知してもう一度開くエレベーターのドアの動作音だけだった……。


 *


地下駐車場の中の撮影が全部終わるまで、メグミは他の撮影機材とともに駐車場のコンクリの壁に立てかけられて待っていた。撮影が全て済むと、メグミはバスの最後尾座席に載せられる。スタッフはその女性の石像をどうにか席の上に載せようとしていたが、脚の開きが大きくて諦めたようだった。それに席の上に載せたのじゃ、振動で跳ねてまた地面に落ちてしまうかもしれない。最後尾座席の足元にメグミは斜めに置かれる。そして運転の振動でバタバタ暴れないよう、上から幾つか荷物を置かれた。


「いやぁ、すいませんねぇメグミさん。ちょっとうまい固定方法がなくて。トラックに空きがあったらよかったんですが。」


トラックになんか載せられたらたまらない。それじゃまったく道具みたいじゃないか。一応バスに載せられたことにメグミは安堵していた。スタッフは口先で謝りつつもメグミの上にどんどん他の荷物を置く。


「(ちょっと! なによこれ!)」


メグミがプリプリ怒っていると、まもなくしてバスは発車した。


 *


「フ~ム。これがそのビルのエレベータ地下階で見つかった石像か」


厳しい顔つきをした白衣のおっさんだ私の灰色に固まった顔をマジマジと見る。研究所の小広間には私以外にも数体の石像が並んでいた。ただ他の石像は人間を固めたものではなく石で作った正真正銘の石像だろう。運ばれてきた時に見たがディディールの作りが甘い。カメラに写る分には問題ないのだろうが。ただ、レンズを近付けて大写しになるのは常に私だった。


白衣のおっさんはスリスリと私の肌を撫で回す。石化した今でも触覚は残っているのでやめて欲しい。セクハラだ。彼の手は脇から腕、手首まで行くと、今度は腕、脇、そして脇腹へと帰っていく。触診するような、でも柔らかいタッチが私の性感を高める。


「(やめてよぅ……、そんなふうに触らないでぇ…!)」


「所長。どうすれば彼女は元に戻るんでしょうか」


研究員は出し抜けに所長へ聞いた。


「こういうもんはね、石化成分が身体から抜ければいいのだよ。あのチューブを用意しなさい」


「わかりました」


「(?)」チューブって何かしら? そう思ってると彼らは台車を持ってきて私をその上に載せた。


別の部屋には人間一人が入れそうなぐらいの大きなガラス管のようなものが数本並んでいた。幾つかのチューブにはすでに石像が入っており、その中は青い透明の液体で満たされていた。


研究者たちは私を土台にセットすると上からガラス管をはめる。そしてバルブをひねって青い液体をメグミに上から注ぎかけた。


「(キャッ、冷たい! 何? ここで私は元に戻されるの?)」


身体全身が青い液体の中に沈む。だけども前回石像から元に戻された時と違って、この液体は私の肌になんの効果も与えてないようだ。


「ううむ。この解除薬でもダメか。」


所長は訝しげな顔をしたまま液体で満たされたチューブの中のメグミを睨めつける。


きっとこの液体はセットの一部であってただの着色した水なんだろう。だって私はカメラの回っている前で石化が解除されて、それからどうするかなんてことの台本を読んではいないもの。


「う~ん。中まで浸透していないのかもしれないな。煮てみなさい。」


「(えっ。煮る?!)」


研究員が題さに取り付けられたツマミをひねると、底面の温度がゆっくり上昇してきた。人間の温かみなどはすぐ超えて熱く熱された鉄板の上に立っているようになる。に、煮るってなによ! 熱い!


チューブの中の液体は40度を超えて今は60、いや80度を超えそうだ。熱くて耐えられない。なにこれ、こんな馬鹿な話聞いていない!! 細かい気泡がメグミの身体に纏わり付く。


「(はぁはぁ、あ ぁぁぁ、熱いよぅ……!)」


液体の温度はついに100度を超えたのかボコボコと煮え立っている。ガラス管の前で所長と研究員が何かを話しているが、熱さで内容を聞くどころではない。そうして私は動けぬまま、ガラス管の中で10分程度煮られることになった。


 *


シーンの撮影が終わると私をここに連れてきたスタッフが私の前にやってきた。人差し指でピトリとガラス管を触ると、「熱っ」と言って指を引っ込めた。


「こんなんじゃ解除できないなぁ。冷めるまで待たないと」


独り言のようにスタッフはそうつぶやき、また視界から消えた。


1時間後、私の温度もやっとだいぶ下がってきた。早く元に戻してくれないかしらと思っていると、そのスタッフの声が聞こえてきた。


「お疲れ様でーす」


彼は他のスタッフたちに挨拶をしてそのまま帰ってしまった。


メグミはもう完全に常温になったのにガラス管の中から取り出されずに他の石像たちと並べられて撮影セットの中に置かれたままだ。あのスタッフは私をもとに戻すことについてちゃんと引き継ぎをしてくれたのだろうか。


カメラマンなどが研究所の今日の分の撮影を終えたのか、機材の撤収とセットの片付けに入る。これでやっと元に戻してもらえる!


彼らは私のガラス管に満たされた液体を、他のガラス管と同様抜いた。ガラスのチューブを上から外すと、ガラス管が石像たちを雑巾のようなもので拭いている。その布は黒ずんでいて汚らしかった。


「(ちょっと、そんな雑巾で拭かないでってば!)」


メグミは全身を雑巾で拭かれてから他の石像と一緒に並べられて部屋の隅に安置された。あれ? 元に戻してくれるんではなかったの?


「それらの石像は明日レンタル業者が回収しに来るから。借りた時にあったバーコードのタグがあったでしょ。あれ付けておいて」


「わかりました~」


スタッフ同士のそういう会話が聞こえてくる。もちろんレンタル品の石像ではない私にはバーコードなんてものは無い。私以外の石像には手の小指や耳などにバーコードの印刷されたタグが結び付けられたが、私には何も付けられなかった。まだレンタル品の石像とは勘違いされていない。メグミは少し安堵する。


ただ、遠目に見たら私たちの違いは、バーコードが付けられているかどうかでしかないだろう。


しかしスタッフたちは私に気付かずに、撮影場所の電灯を消して真っ暗にすると、私を元に戻さないまま全員帰宅してしまった。


真っ暗になったスタジオの中でメグミは震えていた。いつ元に戻してくれるんだろう。忘れられているじゃないの!


体感では数えきれないほどの時間、現実では6時間ぐらいだろうが、が経つと、突然スタジオと電灯がついた。私のことを思い出して元に戻しに来てくれたのかしら! と思ったら違った。スタッフたちが言っていた、石像のレンタル業者である。


彼らは私の横に並べられた石像たちを台車に乗せてどんどん外へ運んでいく。そして最後に、私を抱きかかえて台車に載せた。


「(キャッ! え? 私をどうするの??)」


ガタガタと台車を揺らしながらメグミはスタジオの外へ運ばれていく。そこには搬入口を開けたトラックがまっていた。他の石像たちは運搬の振動で欠けたりしないように、木や発泡スチロール、それに針金を使って上手く梱包されていた。


「(ちょっとまってちょっとまって! 私にはバーコードタグが付いていないじゃない! よく見てよ!!)」


メグミの叫びも虚しく、彼らはメグミをトラックの中に運び込んだ。そして他の石像と同じように気や発泡スチロールを欠けそうな髪や指などに丁寧に巻いていく。針金で縛ったら出発準備完了だ。梱包材で包まれたメグミはもう他の石像とは区別が付かなくなっていた。この中に人間が一人混じっているだなんて誰も思いつきはしないのだろう。


パニックになっているメグミをよそに、トラックの扉が閉められる。そうして真っ暗闇の中、レンタル石像としての旅が始まった。


 *


「(ああ。いつまでこうしていればいいのかしら。だれか私を元に戻してよ……。こんなことならいくら予定が空いて暇だったからといって、映画のエキストラになんか応募するんじゃなかったわ)」


倉庫に搬入される際、メグミにタグが付いてないことを倉庫係が気付いた。それが人間だと気付かれる最後のチャンスだったのだが、倉庫係はいつものことなのか「じゃあこのタグを付けておいて」と新しいバーコードタグを発行し、メグミの小指に結わえ付けた。これでメグミは名実ともにレンタル石像会社の備品である。


メグミは美術館や公園や映画撮影など様々なところへ貸し出された。ただ、顔が恐怖の表情で固まっているメグミは美術館や公園などでは評判が悪く、最近はもっぱら倉庫で彼女の時を過ごすようになっていた。


映画撮影では治安の悪い町並みを演出するために身体にカラーラッカーで落書きをされた。撮影後にそれはシンナーで落とされたものの、メグミはなんとも言えない屈辱を感じた。またあるときはスルスルでスベスベの石像が入用だったのか、目の細かいサンドペーパーでメグミは全身を磨かれた。その時の大変は筆舌に尽くしたいものだ。なんども「(許して!)」と泣き叫んでいるにもかかわらず、全身を敏感なところも含めて荒々しいヤスリで削り取られたのだから。作業後は3日間ほど放心状態だった。肌に浮かんでいた肌模様や手の指紋などはすっかり消え去ってしまい、今では光りに照らされるとテカテカと肌が光るようになってしまった。こうしてメグミは少しずつ石像的な人間から人間的な石像へ、そうして石像としての石像へと作りかえられていった。


私たちの個人的な生活は自分自身を専有することを精神的な支えとしている。自分自身の専有とは、自分の身体を自由にする、好きなモノを食べ好きな場所へ行き好きな格好をすることなどのことだ。ただこういった意志と自由と責任は、結果としてあらゆる解決不能な難題を私たちに突きつけてくる。私が石像から元に戻れなくなってしまったことはいい例だ。こういった解決不能な難題は時として神経症などの形をとって我々の個人的運命に対して逆襲する。我々の内面で拮抗する、個人の解放の欲望と、種の根源から生じる個人・自由の排斥。こうした対立的な運動は、世界の現状への悔恨と、ますます激しくなる自己嫌悪によって表現されることになる。自由と自立を求める自意識はついに伝統的社会の順応強制主義・種のアルカイックな束縛からぬけ出すと同時に、運命の円環を打ち破って無限の線状性をもたらした。


そうして我々には運命はもはや不可能になった。我々自身が自分自身の終わりという想像力に付きまとわれた運命の共犯者になったからだ。つまり、現代においては自由をどう勝ち取るかが問題なのではなく、むしろどうやって自由から逃れるかが問題なのだ。限界のない個別化と自己嫌悪からどうやって逃れればいいのか、どうすれば運命から逃れない状態でいられるのか。オリジナルを失ってしまった私たちの運命はひどく傷付いてしまった。もう誰も、神も悪魔も、私の魂や運命を問題にしてくれない。そうそんなものは重要なものでなくなったから。だから今度は私自身で私自身を救済しなければならなくなった。私たち自身が自らをゲームの掛け金として自分自身の生存を賭けなかればいけない。運命が上手く機能しなくなってしまったのであれば、自分自身を宿命の実験台にしなければなるまい。


無謀な冒険者や単独登山者などはその一つだ。映画のエキストラとして出演してみるのもその類のものだろう。こういった極限の条件に自らを晒すか、それとも日常的な生活を(仕事、通勤、日々の生活に代表される)実験=反応テストの連続にしてしまうか。だがどちらにしても同じことだろう。残された可能性は、物質が半物質中で消滅するというあの運命しか無いのだから。セックスは反セックスの中で消滅し、個人は大衆の中で消滅するだろう。石像としてのスターのメグミは、レンタル品の石像の中で消滅してしまった。運命に関する我々の選択肢は、対立する自己の分身と衝突して消え失せることしかありえないのだ。

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石化映画エキストラ ひでシス @hidesys

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