異世界の洗礼②-3-2

「第二ラウンドか。いいだろう。魔法の練習台として丁度いい。『コマンド選択コード。〈――百烈拳マイティストライク ――〉実行リターン』」

有声宣告コマンドを発すると、時差無く私の両拳に黄金の輝きが宿る。



《 ―― System message ――

新異能制御機構スキルツリープロトコル詩篇旋法サームズモード亜神人族ジュダスの大聖詩篇〈聖釘の刻韻〉より――

〈―― 量子零装ノーブルエピック王の光輪コローナフェッレア ――〉の生成に成功しました!  ――》 



魔法という奇跡を仲介する謎粒子。その謎粒子が変質することで生まれるこの質量のない光形状の物質は、アオイ中将の資料によると【聖粒輝】と呼ばれているらしい。


今私の手に集まっているこの光の正体は、ナノマシンによって導かれ整形・形成された光粒子でできた弾丸の集合体だ。


魔法と科学の融合。先ほど聖釘ヘレナの感染媒体としても聖粒輝を用いたが、この粒子はなかなかに覇力ゲルダとの親和性に優れているように思える。


私は両足を縦に開き、腰を落とし、襲い来る精霊騎士の方向に向けて右正拳突きを放った。


っ!』


突如訪れる渦巻く風。黄金の光を伴い空気を激しく撹拌する旋風は、巨大な破壊の衝撃波となって上空に飛んだ三体の精霊騎士を粉々に砕く。同時にその余波は、真下にいた二体の精霊騎士を巻き込みその上半身をも粉々に砕いた。


体半分を失った精霊騎士がゆっくりとその場に崩れ落ち、白い砂となる。


「な、ななな、なッ!?」


「――ふむ。想定より派手だったな。加減が難しい」


その光景に観客からどよめきが上がる。術式が見えないだの魔力の流れを感じないだのという言葉がちらほらと聞こえてきた。


魔術ではなくただの魔法版百歩神拳だ、と説明したところでどうせ理解は出来まい。


私は何やら問いたそうにしている外野をすべて無視した。見ればわかることをわからない輩に一から説明するのには多大な労力がかかる。付き合ってなどいられない。せいぜい誤解を重ね恐怖を膨らませているがいい。


「さて。次は誰が相手だ?」


私の一言により押し殺したような悲鳴を上げ怯え縮こまっている少年らを睥睨してから、ゆっくりと、たっぷりめに、わざとらしく視線を金髪少年戻し、努めて低く、静かに言う。


「誰もいないなら、お前の番なのだが」


「ひぇっ! ひ、こんなっ、こんなデタラメがあるか! なんなんだ! 君は一体、何者なんだ!?」


バラバラになった精霊騎士の欠片のその先で、突風により吹き飛ばされ尻餅をついた金髪少年が、怯えすぎだろうと突っ込みたくなるような顔芸を晒している。服にワインがついてどうこうとクレームを付けていた少年は、今やもんどり打って転がった為に全身泥だらけである。


「何者って、守護天使だろう? お前達はそう言っていたじゃないか」


「こんな出鱈目な! こんな力! こんなもの! 守護天使にあるわけないだろっ! 君は何だ! なんなんだ! 一体、何者なんだ!!」


服についた土を払う事も無く、腰が抜けて力の入らないその身体を懸命に動かして必死に後ずさろうとしている少年の様子は見ていてほっこりする。何をしているんだ。そんなことをしたら服がもっと汚れてしまうではないか。ワインの汚れどころではないぞ。と注意してあげたい。


「あー。守護天使の他は村人か……それとも私の名前を聞いているのかね? ふむ、確かに君には自己紹介をしていなかったな。よかろう、ならば知るがいい。私の名はルベリウス=ヴェリサリウス。かつてこの銀河にその人ありと名を知らしめた銀河帝国が誇る大英雄、またの名を……って、なんだそのリアクションは」


「ルベ……ヴェリウ? そんな存在は知らない……いったいどこの何者なんだ」


少年が呻くように声を絞り出す。そんな奴は知らない。聞いた事もない。というのが真実であるとこれ以上なく伝わってくる。悲しい。

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