願いをかなえるには、異世界に行かなきゃダメですか?

ぺんなす

ありすside

第1話 夢:ありすside

ここはどこはどこだろう。

目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。

とても不思議でファンタジックな世界が広がっていた。


「やっと目覚めたのですね。アリス様」

目の前に見知らぬ人が現れた。

その人は、なぜか私の名前を知っていた。

「んーではなくのほうが正しいですね」

いったいこの人は何を言っているのだろうか。

「あなた誰?」

「ああーそうでした自己紹介もせずに申し訳ありません。ワタシは、ジョーカーです」

ジョーカーと名乗ったその男はにこりと不敵な笑みを浮かべた。

「レデイを待たせるなんてワタシとしたことが……。はぁ、ワタシは男としてまだまだですね」

彼は一人でぶつぶつと言いながらその辺をうろうろしていた。

「ここ、どこ?」

「おっとすみません。またしても、本当にワタシはダメダメですね」

「そういうのいいから、早く説明して」

「それもそうですね。では説明しましょう。少々説明が長くなってしまいますがお付き合いください」

「分かった」

「ではまずここがどこかという質問ですがここはあなたの夢の中です」

私の夢の中?こんなファンタジックな場所が?

「まあ、もう少し詳しく言うとここは夢の入り口ですね。ありすさんはまだ眠り始めたばかりなので今日見る夢の入り口にいる状態ですね」

夢…の入り口…ここが私の夢の入り口なの?まだよくわからなかった。

「まあ夢の中という認識でいいです。この場所に関しては特に重要ではないので気にしなくていいですよ」

私は彼に言われた通りこの場所のことは気にしないことにした。

「はあ…とりあえず、気にしないでおく。それで、あんた何者?」

「ワタシは…うーん夢の中の住人といったところでしょうか」

「夢の中の住人…」

「はい。ですので現実にいるものではありません」

「そう」

「はい。ワタシは普段この世界で皆さんが見る夢の整理をする仕事をしています。ですがたまにこうやって皆さんのもとに現れて願いを叶える仕事をしています」

「願いを、ですか」

願いを叶える。つまり私の願いを叶えてくれるってこと?

「あっ申し訳ありません。説明が足りない部分がありました。正しくは願いを叶えるのを手伝う仕事です」

手伝うってことは彼が叶えてくれるわけじゃないのね。

「夢は自分で叶えるものですからね。他社の不思議な力によって叶えるものじゃありませんからね。まあ、手伝ってもらえるだけ幸運ですね」

まあ確かにそうだけど改めて言われるとなんか心にグサッて、何かが刺さったような気分になるからあんまり言わないでほしい。

「さて、ここからが本題です…と、言いたいところなのですが、まず最初に確認をさせてください。ありすさんは叶えたい願いがありますか?」

私はその質問に答えられなかった。

「そうですか。まぁ答えなくてもいいです。ワタシはあなたに叶えたい願いがあることを知っていますので。あくまで今のは確認なので大丈夫です」

願いを知っている?私の願いを、何故。誰にも言ったことないのに。

「何故知っているのか、という顔をしていますね。まぁ答えないですけど」

こいつ腹立つ。

「まぁ怒らないでください。では、そろそろ本題にいきましょう。あなたがその願いをどうしても叶えたいというのならこちらの扉を開けてください」

彼がそう言うと彼の後ろに大きな白い扉が現れた。

「叶えたくないというのならこちらの扉に」

すると、さっきの扉の隣にまた黒い扉が現れた。


「さあどうしますか」


私は思考が停止した。

「迷わず選ぶと思ったのですが…これは意外です。まぁいいです。人間は迷ってこそですからね。とはいえ時間が迫ってますので早めに決めてくださるとありがたいです。願い、叶えたくないのですか?簡単には叶いませんが、今のあなたの置かれている状況よりはだいぶましな生活が出来ると思いますよ」

彼は不敵な笑みを浮かべてそう言った。

ましな生活…。今の地獄から解放されるかもしれないってこと?それなら…。

「わかった。私、願いを叶える」

「良い判断です。さぁこちらへどうぞ」

彼は私に手を差し伸べた。

私は彼の手を取った。

彼は私のことを最初の扉の前まで連れて行ってくれた。

「さぁ叶えたい願いを強く心に念じながら扉を開けてください」

「叶えたい願いを…強く…」

「えぇ。強く、です。さぁ」

彼にそう言われて私は扉を開けた。

願いを叶えたいと強く念じて。

私は変わりたい。


私は​─────。


さぁ彼女の物語の始まりです。

どこにでも居る普通の女子高生が願いを叶えるお話です。

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