飼主たちの共感の時間

 本作は『犬を飼うということ』と題した、筆者のエッセイの姉妹編となっています。

 犬を飼うという行為は、犬を飼おうかどうか悩むところから始まって、最後に愛犬を看取るまでの間続きます。その平均は14年ほどだそうです。


 自分で犬を飼ってみて思うのは、我が家の犬の一生全てが、必ずしも他の飼い主の方たちの共感を呼ぶものではないのだとう事です。

 正直に言うと、朝や夕方の散歩ですれ違うよそのうちの犬たちは、うちの子ほどは可愛く思えません。もちろん、可愛いのですが、うちの子がとりわけ可愛いのです。きっと皆さんが同じだと思います。


 恐らく、大勢の飼い主たちが、同じ話題に共感できるのは、実は犬の一生のうちのごくわずかの期間しかないのではないでしょうか?

 筆者が思うに、その共感は以下の5つではないかと思います。


『うちの子がうちにくるまで』

 ・ごく普通の人たちが、犬を飼うか迷い、結局飼おうと決心するまで。


『うちの子がうちにきてすぐ』

 ・新米飼主の苦労。しつけがなかなかうまく行かない、不安といら立ち。


『うちの子が旅立つまでのこと』

 ・愛犬の最期の闘病と、それに付添う飼い主の心の葛藤。


『うちの子がいなくなってから』

 ・愛犬を看取ってからの飼い主の気持ちの揺れ。そして心の再生。


『もう一度うちの子がうちにくるまで』

 ・先代犬との別れを乗り越え、また犬を迎えたいと思うまで。


 どうでしょう?

 子犬の頃を過ぎて成犬になってからの期間が抜けていますね。筆者の心に照らすと、その期間はどうにもよその子に共感がしにくいように感じます。皆さんも同じではありませんか?


 犬を我が家に迎え、しつけを終え、成犬の頃になると、犬と家族の付き合い方も距離感も、各家庭それぞれで違ってきます。

 甘やかされて育つ子もいれば、厳しい規律の中で暮らす子もいます。

 一人っ子の場合もあれば、多頭飼いの群れの中で過ごす子もいます。 

 中には、ショードッグになって、専門のトレーナーにつく子もいるかもしれません。番犬として屋外で飼われる子もいるでしょう。


 愛犬家同士でよく話題になるドッグフードも、高額なプレミアムフードを与えられる子もいれば、量販店で売られている一般的なフードを与えられる子もいます。 各家庭ごとに経済事情が異なりますから、当たり前のことです。


 しかし、千差万別ではあっても、どの犬も飼い主から可愛がられていることに変わりはありません。

 犬が元気で活力のある成犬の時期は、各家庭ごとに可愛がり方に流儀があります。我が家にとって楽しいことは、他の家でもそうとは限らないというのは当たり前のことでしょう。


 やがて老犬の時期を迎えると、また飼い主同士の意識とか悩みが、交錯してきます。

「うちの子と、あと何年一緒にいられるのかな?」

 そんな風に考え始める時期が来ると、よそのうちの老犬が、まるで我が子のように心配になってくるのです。


 本作『うちの子が旅立つまでのこと』は、そんな共感の時期の中でも、愛犬の闘病と別れを中心に、飼い主の視点でまとめたエッセイです。


 まずは闘病と看取りを全体的にまとめ、次に筆者と愛犬ピーチーの、闘病と別れを書いていきます。そしてその次には筆者と同じく、愛犬を看取った多くの飼い主たちの体験談を記していきたいと思っています。


 なお上記の共感の時間の中にある、『うちの子がうちにくるまで』と『うちの子がうちにきてすぐ』は、別著『犬を飼うということ』の中で連載をしております。

 あわせてお読みいただけましたら幸甚です。


『犬を飼うということ』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880399256



――記述に関する注意書き――


 本作は筆者の管理するブログからの転載記事が含まれます。

 ブログ内に於ける筆者の呼称は、”僕” となっており、作中では”筆者” と ”僕” が並立するページがありますことを、予めご承知おきください。

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