狂気にまみれし赤き華、大地に咲く儚き純恋花
姫宮未調
プロローグ~はじまり~
遥か昔、神々の時代に更に上空、そこに『女神の楽園』があった。
大地母神と破壊の女神、二人は良きライバルだった。しかしいつの頃か、破壊の女神の中に闇が巣食い始めた。
……最初の惨劇はここで起きたのだ。名もなき天使たちが大量に殺された。破壊の女神の手によって。巣食った闇は、彼女を狂喜へと
彼女を止めるために大地母神は戦った。前代未聞の女神同士の戦い。……制したのは、大地母神だった。敗した破壊の女神は、幽閉されることとなった。
闇を宿した女神は彼女だけではなかった。女神の女王の妹、女神の姫もまた、闇を宿していた。誰もが女王を崇め、心酔した。姫と話していても、彼女を通して女王を仰ぎ見る女神たち。自分を見てくれる者がいないことを嘆き、元々寡黙であったが更に口を閉ざしていく。
そんな姫は立ち入り禁止の場所にふらりと現れた。二人は出会ってしまったのだ。
「姫様、わたくしたちは同じなのです。闇を受け入れましょう?ああ、愛惜しい姫様。愛しておりますわ。」
彼女は姫に手を差し伸べる。だが姫は、初めて自分を真っ向から見てくれた彼女の、その手を取らなかった。そしてそのすぐあと、姫は1人、絶望に苛まれ、自害した。
父である神と姉である女王は彼女を見ていたというのに。
父は悪化の原因となった破壊の女神を、堕とした。すぐ下の天界ではなく、その下の人間界でもなく、その下の地底でもなく、更に最下層奥深き場所へと。彼女もまた、娘には代わりなく、殺すことを躊躇ったために封印したのだ。
父は姫の死を嘆き哀しみ、姫を甦らせた。記憶を消し、元より司っていた癒しに守護の力を与えた。
もう、自ら死ぬことがないように、他者からも殺されることがないようにと。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして現代、人間たちの秩序と安寧のために女神たちは人間に混ざること数百年。
記憶の彼方に追いやられた破壊の女神・カーディスは誰にも気がつかれずに、忽然と幽閉せし場所から消えた。
狂気にまみれし赤き華、大地に咲く儚き純恋花 姫宮未調 @idumi34
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