謝罪 ~少女の償い~

意識があるようでない。そんな感覚の中を私は彷徨っていた。

もう少しで起きれるんだけど、そのもう少しが出来なくて起きれない。

その割に妙に鮮明に自分自身が見ているものがよく分かる。

夢の中なのかな……

覚醒していない。つまりそれは夢の中だと。

確かにいつもより心なしか身体が軽い。今にもこの大空へと羽ばたいていきそうな、そんな感覚。

あれ?

さっきから実にふわりふわりと妙に軽いと思ったら私の身体を支えていたであろう両足が宙に浮いていた。どうりで違和感を感じたわけだ。今まで感じたことのない初めての感覚に私は見舞われたからだ。

私の体重など、まるでなかったかのように風は私をさらい、青い大きな空が迎えてくれた。

そして風の流れに乗りながら、風の赴く方向に身を任せた。すると風は決まった場所に私を運ぶかのように勢いよく吹いた。

風に無理やり運ばれるのも嫌だったので、どうせ運ばれるならと自分で風に乗り、その場所へと向かおうとする。

手足を伸ばし、身体の力を抜く。身体の自由を風に任せる。すると簡単にもそれが出来てしまった。

今や、この大空を行き先は限定だが、私は飛んでいた。

どこに向かうんだろう?

ようやくこの疑問にぶちあたった。一番重要な問題である。

自分の目下には、どこまでも続く森林が広がっている。位置的にフォルセルだろうか。森林が大量に続いているという安易な考え方からそう考えてしまった。

あれ!?

突然、空気感が変わった。さっきまでほのかで暖かった印象が一瞬にして様変わりした。

……息苦しい

呼吸するのが辛い。

一体なんなの? と思い、周囲を見回した。幼い時から視力の良さは際立っていた。瞼をかっと見開き、私はようやくその原因を発見した。

いつしか目下は森林が終え、砂地に変化していた。そして岩肌がたまにあるくらい。

その砂地の中に巨大な影があった。

死霊鎧スパイティス。大きな巨大な鎧の中に生物の情念が篭っている。その失意の感情はおどろおどろしく、鎧の隙間から漏れ出している。巨大な甲冑がカタカタと音を立てて、動いている。

錆びた銀色の甲冑が悲しい旋律を奏でるかのように。

あんなのに見つかったら、ひとたまりもない。

そう危惧したが、どうやら相手は全くこっちに気がついていないようだった。それ以前に、何か別のものに気を取られているようだった。

今のうちなら……

私はそう思いながら、この場から少し離れようとした。

意識をここから離れようとするが何故だが縄で繋がれたように離れることが出来ない。さっきまで大空を飛んでいたのが嘘みたいだ。

そんな四苦八苦している私の視線の先に、ある光景が写った……

あれは……私!?

私の視線の先にはよくよく見慣れた真っ赤な長髪を振りかざし、死霊鎧スパイティスについて景気よく、炎属性の呪文を唱えているリリス族の女性が写っている。右手を開き、その手のひらを地面に向けて呪文を唱えている。詠唱の長さからいってそれなりの上位魔法であると感じた。

詠唱が止まった。いよいよ来る。右手に集まった炎の源を彼女は地面に軽く触れるように置いた。炎の源は地面の中を駆けるように進み、死霊鎧の足元まで向かい、一気に地面から轟々とした火柱として開放された。威力的にも相手を完全に燃やし尽くす魔力だ。

す、凄い……

自分の繰り出した魔法に驚いてしまった。

炎魔法の中級程度の魔法だが杖もなしに、詠唱とは中々簡単には出来ない。通常は杖を媒体として、空気中の魔気マジールも利用して魔法を繰り出すのだが杖なしだとそれが出来ないのだ。


「コォオオオオオン」


死霊鎧スパイティスの声にもならない虚しい声が砂地に木霊した。鎧の隙間から黒い煙が出ている。死霊鎧の見た目とその雰囲気からさきほどの炎魔法は効いているようだった。

悲壮感。

この魔物からはそんな感情に似たような感じが伝わってくる。

死霊鎧スパイティスが動いた。魔法を唱えた私に向かって砂の大地を踏みしめながら接近してくる。右手には巨大な古びた剣。刀身は少しだが錆び付いている。左手にはその身を守るための盾を備えている。

死霊鎧が剣を構えた。

もう目の前まで迫っているが私は逃げようとしない。

何で逃げないの!!

早く逃げなさいよ!!

私は声をあげ、叫ぶのだが聞こえるはずもない。

剣が間もなく私に振り下ろされ、もう間もなく直撃しようかという時だった。砂地にある岩の影から高速で私と死霊鎧スパイティスの間に入る何かがあった。

トーブ?

私はその影の姿を目で見て名前をつぶやいた。そこにはよく見知った幼なじみの友人がいた。

今より、少し背が高いだろうか。遠巻きに見ると、そう感じてしまった。

その小さな背中には、自分の背丈と同じ大きさの斧を背負っている。何か叫んでいるが残念ながら、こっちの耳には何も聞こえてこない。でも大体の内容は聞こえなくても分かった。いつものトーブならこういう時につぶやく言葉は大体は決まっている。

死霊鎧スパイティスの剣撃が私に振り下ろされる前に、トーブが私を抱えて、剣撃の攻撃範囲外に逃れる。

いつもの光景だ。

私の危機には彼が必ずさっそうと姿を現し、何食わぬ顔で助けてくれる。それは物心付いた時からずっと、気が付いた時にはそれが当たり前になっていた。

もしトーブがいなかったらと思うと私は生きているかどうかわからない。

トーブ。

あそこで私を抱えているトーブも何くわぬ顔で淡々と私を助けている。

私はというと、それに甘んじているのが現実。

なぜだか沸々と自分自身に対して怒りとは少し異なるけど、苛立ちを覚える。

そう思ってしまったら妙に頭が現実的になり、意識が鮮明になってきてしまった。現実に戻ろうとしている。見えていた光景がどんどん不鮮明になり、意識が覚醒してきた。

瞼に神経を集中させ、動かした。閉ざされていた瞼が少しずつ開いていく。

やがて二つの瞳が自室の木製の天井を捉えた。

夢……か

私は夢を見ていたことを自覚する。ゆっくりと身体を起こし、窓の外をぼっーと見つめるとその窓からは光が差し込み、部屋の床下を優しく照らしている。このことから今日の天候は良好ということが分かった。

身体を伸ばし、完全に睡眠からの覚醒を促す。

すぐに着替えて、朝食を戴きに行く。二階の自室から出て、右に曲がり、廊下を進むと階段がある。階段を降りるとそこにはすぐに台所がある。

私はゆっくりと階段を降りて、台所に訪れると、母が汁物を作っているのが見えた。


「おはよう、母さん」


私が挨拶をすると、いきなり背中越しに話しかけられて、驚きの表情をしている私の母であるアンナがいた。


「おはよう。もう少し待ってね。あと少しでできるから」


アンナはそう言い、現在作っている汁物をかき混ぜている。


「わかった。顔洗って、歯を磨いてくる」


そう言うと台所をつっきり、廊下を進み、突き当りの洗面台に向かう。備え付けの瓶に入っている綺麗な冷水で顔を洗い、布で顔を拭いてから歯を磨く。

この冷水は雨水をろ過し、沸騰させ、冷ましたもので、きちんと飲食用にも使える水だ。

よし。

顔も洗い、歯もきちんと磨き、台所に戻る。

廊下を歩いている途中、何か美味しそうな匂いがうっすらとしてきた。料理が出来上がったみたいだ。匂いを嗅いだ限り、とても美味しそうな匂いが鼻腔を差した。

机の上には、もう私の分のその汁物は配置されていた。すぐにでも飲んでくれと言わんばかりだ。見た目も名前は分からないけど複数の野菜が入っているようで、彩り自体は綺麗だ。木製の匙で汁をすくってみる。液体は液体なのだが、若干のとろみがある。そこがまたこの料理の良さなのかもしれない。


「いっただきまーす」


まずは食べてみる。見た目も大事だけど、一番大事なのは味だ。匙に少量すくい、口の近くまで持って行き、まずは鼻の近くで匂いを確認。いい匂い。少し初めに野菜の青臭い匂いがしたがすぐに消え去った。トロトロとした汁の香ばしい匂いがすぐに訪れる。

野菜が嫌いな私のためにどうやら味付けを変えて作ったみたい。少し舌先で味を確認すると甘じょっぱい味付けで野菜が主張しているところはない。野菜のあの独特の青臭い味が苦手だ。全然美味しくないし、食欲が削がれる。こんなことを口に出すと、トーブがいるといつも口を挟んでくる。好き嫌いなく食べなさいと。美味しくないものは美味しくないのよ。そんなことを思い出しながら、この新しい料理を一口、二口と進み、盛られた自分の分を全て平らげた。味について特に気になる点はなかったので


「母さん、とても美味しかった。また食べたいな。具は野菜だけのはずなのに野菜ぽくなくてよかった」


にっこりと笑って感想を述べた。好感触の感想を言われて、嬉しそうにアンナも笑った。


「考えて作ったもの。貴女がいつも野菜を食べないのを見ていたから。流石にずっと食べないのも良くないから。それにしても、野菜嫌いのエヴァに美味しいとまで言われるなんて私もまだまだ捨てたものじゃないわね」


アンナは一人でウンウンと頷いている。


「また作ってね。この前みたいに、作り方忘れたなんて言わないでね」


私が確認するかのように聞いた。この間は作ったのはいいんだけど、途中の試行錯誤の段階でどう味付けをしたらいいかという段階で色々と試したりしたため、何でどう味付けしたかということを忘れてしまった。そのため完成した味付けが最初で最後の作品になってしまった。料理自体美味しかったので非常にもったいない出来事だった。


「大丈夫、忘れないようにきちんと作り方の手順を書いてあるから」


そういうとアンナは小さな紙の切れ端を出した。この間と同じ過ちはしないと言わんばかりに紙切れを見せてくる。そこにはびっしりと文字の羅列が並んでいる。必死に書いたんだなということが伝わって来て、微笑んでしまった。


「それなら大丈夫か。なら次に食べれることを楽しみにしてるわ」


私はそう言い、席から立ち上がった。

向かう先は決まっていた。自然と足先が向かってしまうのだ。隣の家の幼なじみのところ。同族だけど、何かが違う。おかしな言葉遣いの不思議な友人。今頃何をしているだろうか。小難しい顔でいつもの精神統一って奴でもやってる頃かな。私はそんなことを思い浮かべながら外に出た。行き先はもちろん母親のアンナに伝えてある。

でも今日は足取りが重い。いつもなら軽快な足取りで向かい、元気に挨拶するんだけど、今日はそれが出来ない。心のどこかで行き辛さを感じる。理由は私自身がよく知っている。私はトーブを初め、たくさんの人達に迷惑をかけてしまった。しかも言い出しっぺの私がさらわれてしまった。

気まずい。

みんな事件が終わった後、怪我がなくて無事戻ってきてよかったと言っていたが、やっぱどこかそういうもやもやっとした感情はある。

私はいざトーブの家に向かおうとしたが、足は自分の家の裏手にあるズーンの元に向かった。人間が住む家屋より、少し小さな家屋。

木製で小屋の表面は木目が浮き出ている。地べたにはたくさんの砂や土、藁、葉っぱが敷かれており、中央には大きな木の切り株が置かれている。入口の戸を開けると、大型の肉食獣のダグゥがいびきをかいて地面に大の字で寝ていた。いびきの音が小屋の中に響きわたり、若干だが小屋が小刻みに振動しているような気さえする。

その姿を見て少し安心して、ぷっと笑いがこみ上げてきた。

いつまで経ってもこの子は変わらないなと思う。拾ってきたときからこの寝方は変わらない。そして甘えん坊だ。食べ物はたまに肉は食べさせるが野菜、果物を主体にしている。元々熊自体が雑食なので問題はない。

優しくズーンの寝顔を撫でた。体毛は柔らかく暖かさを備えている。熱が逃げにくいようになっているのかもしれない。

すると閉じられていた瞳がかっと開けられた。

すぐにその力強い二つの眼は私に向けられた。

ギュルギュルギュル。

喉を鳴らしている音が聞こえる。

するといきなりズーンは身体を起こし、私に覆いかぶさるようになるが途中でその動きを止めて、私の頬をざらざらした舌で舐めた。

何度も舐めるため、すぐに私の顔はべちゃべちゃになる。


「もうズーン、くすぐったいからもう止めなさいよ。こらぁ」


制止するように二の腕を伸ばすがズーンは止めようとしない。

甘やかしすぎたかしら。

私はぬいぐるみほどの小さい頃からのズーンを思い返してみるが甘やかしているところしか浮かんでこなかった。

自由にすくすくと育ちすぎってしまったかしら。

ズーンはようやく飽きたのか、私の顔を舐めるのを止めた。おかげで顔がべとべとと唾液で汚れてしまった。懐に忍ばせておいた布切れですぐに拭き取る。その光景をズーンはあどけない顔で見ている。この姿も小さい頃と何一つ変わらない。ダグゥとしてはもっと精悍な顔つきで一吠えで近くにいる生き物が逃げ出すようなことでなくてはならないと思うけどその威厳すらこの子にはない。

もう仕方がないんだから。

自分の子供をあやすかのように私はズーンを撫でた。

私のさっきまでの心境を一瞬でも忘れさせてくれたこの子には感謝しなくてはならない。

ズーンの背中に寄っかかる。弾力のある身体が私を受け止めた。ズーンはそんな私が寄りかかったことさえ感じていないようだ。

どうしよう。

いくらありがとうと言っても言い足りないくらい。

私にしか出来ない。トーブ達が喜んだり、嬉しいことないかな。

考えてみれば考えるほど中々浮かんで来ない。

しかも時間が経過すればするだけ微妙になってくる。

ギュルギュルギュル……

突然、独特の音が小屋の中に木霊した。音は私の寄っかかっているズーンから発せられたものだった。ズーンはというと特になにもするわけでもなく、空を鋭い爪で引っ掻くような素振りをしている。

お腹の鳴った音かな。

私はズーンをじっと見ているが、それらしい素振りは見えない。いや見せていないだけかもしれない。

ギュルギュルギュル……

また再びその聞き慣れた音は鳴った。


「お腹減ってるの? ズーン」


私はズーンの正面に行き、聞いてみた。

ガウッ!!

ズーンは私の質問を理解しているかのように答える。

そうは言っても朝ごはんはもう食べたわよね、確か。母であるアンナから朝食時に、ズーンに餌をあげたことは聞いていた。

ギュルギュルギュル……

三度目の音が聞こえた。何かを確かめるかのような音とズーンの物欲しそうな顔が私の耳と目を通じて情報が入ってきた。

少しおやつみたいな形であげるか。

私はゆっくりと立ち上がり、服のお尻についた藁や葉っぱを払うと、自宅の倉庫に予備の果物があるのを思い出した。

少しだけもらってきてあげよう。

そういった気持ちでズーンの小屋から出ようとしたときに私は心臓が止まるかのように驚いた。

そこには見慣れた幼なじみが立っていたからだ。

トーブ。


「ここにおったのか。いつもなら。もう当に来ておるのに姿を見せぬから心配したわ」


軽く呼吸が乱れているのが分かる。私のことを探していたからだ。


「うん、ごめんね。心配かけて」


私は事件の事もあり、素直に謝った。下手に心配を逆にかけてしまった。


「ふむ……謝るとはらしくないのぅ」


トーブは腕を組み、不思議そうな表情で私を見ている。一体どうしたというのだと顔つきで私を。


「私にも色々あるのよ。ズーンにおやつあげないと」


私はそう言い、トーブの横をすり抜けようとした。


「エヴァ」


その時、トーブが私の名前を呼んだ。その声は特別大きい声ではなかったが、何故か心に響くように聞こえてくる。自分の足が止まった。どくどくと心臓の高鳴る音が聞こえる。

お互い背中越しだがトーブにはまるで全て見られているのではないかという感覚にさえなる。


「何?」


なるべく平常心を保ちながら、返答をする。


「気にするなと言いたいところじゃが。それは無理な話。じゃがこういうときこそいつものエヴァらしくいればよいと思うぞ」


トーブが言った言葉は自分自身がもっとも分かっていたことだ。しかしそう簡単に割り切れるものでもない。


「うん、トーブに言われなくてもそれくらい分かってるわ」


私はそう言い、自宅の倉庫に向かった。倉庫の戸を開けて、果物を取る。ワシュワという水分をよく含んだ果物だ。梨を片手にズーンの元に戻る。

途中、ズーンの小屋に鍵をかけるのを忘れたことに気がついた。急ぎ足で小屋に戻ると、ズーンは変わらず小屋の中にいた。入口でトーブが見守っていたようだ。


「ありがとう、見ていてくれて」


私はトーブにお礼を言うと、小屋の中に入り、ズーンに先ほど倉庫から持ってきた梨を見せてから地面に置いた。ズーンは唾液を口元から垂らしながら、地面に置いた梨に近づき、大きな口を持っていく。梨を歯で挟み、口の中に運んで一気に鋭い歯で噛み砕いた。ズーンの口の中では梨の甘い果汁が飛び散っているだろう。


「ふむ、別に何もしておらんよ。静かなものじゃった。すっかり、ズーンも家族の一員じゃな」


トーブはそう言うと軽く微笑んだみたいだ。

ズーンを育てると決めた時に一番反対したのはトーブだった。しかし育てると決まってから一番協力してくれたのもトーブだ。


「うん、ありがとう。何から何までトーブには頼りっぱなしね。この間さらわれた時だって、私は何一つ出来なかったし」


そう、人を助けにいくところが逆に捕まり、助けられる事になってしまった。

自分ではやれることがたくさんあると思っていたが、何も出来なかった。

逆に友達を危険な目に合わせてしまった。周囲は許せても自分が自分自身を許すことが出来ない。


「まぁ、少し懲りたのであればワシは安心じゃ。エヴァが危険な目に合わないということに直結することじゃからな」


トーブが真っ直ぐな瞳で私に向かって言った。

赤色の髪に赤色の瞳はリリス族の象徴だ。

でも何だか、このトーブの言い方には苛立ちを覚えた。

まるで普段から毎度迷惑をかけているみたいに聞こえたから。


「……ないわよ。絶対懲りてないんだから!! 今回のことは本当に悪かったと思ってるけど、次は絶対に捕まるとか失敗はしないんだから!!」


私はかっとなって考えていたことをすぐに言葉にして出してしまった。

トーブとズーンはそんな私の物言いに揃ってきょとんとしている。突然のことに驚いているに違いない。少ししてからトーブがゆっくりとこちらに向かってきた。その愛嬌のある表情からは真意は中々理解できない。私とすれ違う時に彼はこう言った。


「分かった。ならまたの誘い待っておるぞ。ワシの知っているエヴァ・ジーズ―がまだまだ健在でよかったわ」


トーブは少し微笑んだかのように見せ、自宅へと戻っていった。

何なの? もう。

この時、私はよく分からなかったけど、この言い方はトーブなりの激励の言葉だったみたい。

少し気が楽になったので、自室に戻った。

トーブにルゥにマンダリン達。

今回のことで彼らには大変な迷惑をかけてしまった。何か彼らに対して出来ることはないかと考えた。うまくこれという考えや案は出てこなかったが、彼らに手伝えることは自ら手伝おうと私は決めた。そんなことがさらわれた時のお礼や恩を返したということにはならないと思うし、トーブ達も別に大丈夫だと言うとは思うけれど私は嫌だ。きちんと行動や形として示したい。じゃないと意味が無いから。

私はそう考えつつ、何をどう手伝うか思案している最中に、アンナの昼食への誘いの声で一旦考えることを止めた。

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