その22

そうだ。今日は変質者、加賀美から助けてもらった礼をしていなかった。


「なあ」


「なに?」


「なにか食う? 今日のお礼。おごるから」


「え? いいよ」


カンナがコートの袖から少しだけ出ている手をふるふると小さく振る。


あ、ちょっと可愛いかも。こんな一面もあるんだな。


「バカ。遠慮すんな。これでもバイト部だぜ?しっかり稼いでるつーの!」


「いや、それ、風紀委員の私にいわれても」


「あ、そーか」


「あはは」


「でも今日はマジで感謝だ。メシくらいおごらせろ。コンビニメシで威張ってもしょうがないがな」


「ふふ、全然いいよ。今日は夕方から冷え込んでちょっと夕飯前になにかお腹に入れていこうと思ってたの。どれならいいのかな?」


「お? 結構食うのか? いいね! ダイエットとかいってろくに食わないなんてとんでもないことだ。任せろ好きなだけ食え!」


「え? マジで? 私、すごいたくさん食べるよ?」


「いいぜ。なんならどっちが多く食べられるか競争してみるか?」


この時、俺はカンナの両目がピカッと光ったような気がした、と記憶している。



続く。

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