大錬金術師の血を引く者
デスト・ロットオルカーン
現在のデスト家の
特徴はもさもさの髭にダンディな顔である。
彼は冒険者で職業は「錬金術師」
一度触れたことのある道具ならどんな道具でも、倒したことのある生命体なら人間を除くどんな生命体だったとしても、それらを産み出すことができる職業であり、生命体ならそれを操ることも可能な職業だ。もちろん、産み出すものによって消費する魔力も上がったり下がったりするが、詠唱さえ間違えなければ必ず成功し、運が良ければ作ろうと思っているものの質が上がったりすることもある。
しかし、そんな万能職に見える錬金術師は彼一人。錬金術師になるのには高度なステータスはいらない。となると何故、他の冒険者は一人もならないのか。
その理由は、なれないからだ。
それもそのはず、錬金術師は「デスト家の血筋」がないと出来ない職だ。
何故そうなってしまったかと言うと…
歴史書の通りなら今から500年以上も前、錬金術師という職業を当事18歳だった初代デスト家の
その後、ヒルフェドラートの息子で魔力や攻撃力、全てにおいて高性能なステータスを持つデスト・ゼンゼグレッチャーは、父から教わった錬金術を駆使し、中級種のドラゴン トーベングルートを討伐し、「竜殺しの錬金術師」と呼ばれて一躍名を馳せた時期に、
アクセルの街へ複数の上級冒険者の錬金術師の悪巧みで、モンスターを召喚して襲撃しようとする事件が起きた。
召喚されたモンスターはどれもその街の騎士な冒険者では太刀打ちできない強敵ばかりで、
もう撤退寸前だった…
その時、たまたまそこに居合わせたゼンゼグレッチャーは住民を全員避難させるようにと騎士に指示をすると
錬金術でドラゴンを作り出し、襲撃を返り討ちにしたという。
その事件の後、結婚をし、子供を作り、頃合いまで育てると、ゼンゼグレッチャーは錬金術を悪用する輩がいると今後もこういう事件があるかもしれないということを考え、錬金術を封印することを決意し、家族に別れと息子に錬金術を伝え、仮面の悪魔・バニルと契約をして自分の魂と引き換えに、デスト家の血筋以外の人間が錬金術を使うことができなくなるようにしたのだ。
人々はその勇姿を称え、彼を「大錬金術師」と呼ばれる偉人になった
そして今に至るところである。
話を戻すとしよう。
実は、今の当主の屋敷の使用人が見かけなくなり、その代わりに上半身が執事服で、下半身が鎧。頭は手品を行うものの帽子、例えると帽子を叩いたら鳩が出てきましたみたいな手品に使うときの帽子だ。とそのような不気味な姿の人間みたいなのが屋敷を守っていたと言う話である。
そして今の歴史書を見ていて気になる錬金術があった。
それは、初代デスト家当主のヒルフェドラートはとある禁術を発見したことが記載してある。
やり方こそ書いてないものの、それはとある生命体と物質をくっつけることで新種の生命体を産み出すことができると記されている。
しかし、くっ付けた生命体は元に戻すことは不可能で、もちろんのごとくくっ付ける生命体と道具はこの世から存在が消えてしまうそうだ。
さらに、作り出した生命体は生きる意思をもたず、主の命令をひたすら待つだけになってしまうらしい。
これを、もし使用人を使ってやっていたとなる
かなり恐ろしい。
と言っても先祖に善人が多いため、使用人をそのように扱い、そんなことやるわけが…と最初は思ったが
確か、このロットオルカーンはかなりの実力者で、王都に攻めてきた魔王軍と自分の作った配下という名のモンスターたちでいい勝負をした功績がある。本人も戦いに参戦していたらしいが、かなり健闘していたみたいで。
普通、これだけの実力者ならいい偏見を持たれてもいいはずではあるのだが、この善行を掻き消すような悪い噂をよく小耳に挟む。
その悪い噂というのが、気に入らない輩はすぐさま殺すというのだ。「死刑にする」ならどんな貴族でもやったりするのだが、自らの手で殺すというのはあまり聞かない。それでも、貴族ならありそうなことだ…と思ってたのはつかの間、こいつの殺しかたはとんでもないようだ。
それは…殺したあと、人の足だけをちょんぎって貰っていくという行為である。
「人間として、あり得ん行為だ…」
そしてその短期さと殺し方の無惨さから
彼についた二つ名は、地獄の錬金術師
そんな二つ名を持っている時点でやっていてもおかしくないのだ。ロットオルカーンは頭も良いので方法ならば思い付くかもしれない。
どちらにしろ、奴をこのままにしておくとたくさん人が死にかねん。
関係のない人に被害が広がりすぎり前に阻止せねば…
「シルラ様、夜間周りの交代時間が迫っております」
「もうそんな時間かい?早いものだ」
夜間周りなら、町中を歩きながら不審者はいないかと見守るだけだ。少し、奴の屋敷を覗いていくか…
まさか、この夜間周りがあの二人組との出会いになるとは、この時、騎士シルラ・カーエサルは気づいていなかった…
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その時カズマは…
「ゴホッ!ゴホッ!…やべぇ…ケツ痛い」
先ほど煙突の中を順調に降りてたところ、手を滑らせて…
「なんか今日はついてねぇなぁ。夜もめぐみんと夕食取り合ってたら、その具材が飛んでっちゃって、元も子もなくなっちまった」
でも食後にめぐみんが部屋に来て謝ってきて、その後いい雰囲気になったから悪くはないか…
「とりあえず今は任務を果たしますか」
先ほど、煙突に入る前にどこに神器があるのかという肝心なことを聞くのを忘れていたので急いで聞き返すと、地下にあると言っていた。とりあえず地下室があるのだろう。そこを目指せばいいと思う。
「おいっしょ。はぁ…てか煤だらけだ!きたねぇ!」
あわてて煤を払うと
扉の向こうで何者かの動く音が聞こえた。
「やべッ…気づかれたか…!?」
俺はすぐさま潜伏スキルを使い、ベッドがあったので、それに身を寄せた
カタッ カタッ カタッ カタッ カタッ
そのような足音は、部屋の前で止まった。
ガチャリ
扉の開けられる音がする
俺は身を寄せているベッドから顔を少し出して、暗視スキルを使うと…
そこに立っていたのは
上半身がメイド服で
下半身が女騎士の着るような鎧で
頭には、マジシャンのハットの
人間?
さらに顔が見えなく、そして胸がデカイ
凄くダサい格好をした女性の人間のようなのに、驚きながらも奇襲を仕掛けようと、柱にをつたって潜伏スキルを使いながら進む……
そしてその背後へもうすぐと言ったところで、
そいつの手が、一瞬にして変わるように歪
み
剣になった
「ーッ!?」
あまりのことに驚きを隠せず、少し声が出てしまった!そして、その少しの音をやつは見逃さなかったようだ
「ソコニダレカイルノカ?」
そう言いながら手という名前の剣を振り回した。
飾ってある花瓶が高い音を出しながら割れる
…ん?これってまさか俺を探すついでに音をたてて仲間を…!
やべぇ早めにどうにかしないと
「ヒトノコエダッタ…ハズ」
俺は、今度こそ体制を建て直し、やつの後ろへ忍び寄ると…
「有無を言わせず、ドレインタッチ!」
奴の無駄にふくらんだ前の心臓部分を触り
まんべんなく揉み尽くすと
そいつはそこへ倒れこんだ。
「はぁ、手が剣に変わるなんて聞いてないぜ。奇襲しちまえば、楽か。
しかし、胸を触る初めての相手がこんなのなんて……まあ、悪くはなかったが」
中々にいい感触でした。
にしてもドレインタッチが効いてよかったぜ
これがダメなら苦戦していただろう
最悪たくさんのあいつに追いかけ回されたかもしれない
「それにしても、あんな形をした使用人がいるものか?領主のセンスを疑うべきなのか、それともなにか…ん?そういえば」
確か、この家の主はこの世界に一人だけの錬金術師らしい。なんでも、この家系の血しか、錬金術師になれないそうだ。
よくは知らないが。
「あんまり、厄介なことにならないといいんだが…」
嫌な予感が頭をよぎる。
しかし、ここでうだうだしていても仕方がない。俺は潜伏スキルを発動させ、気配を消すと
ドアを開けて誰かいないかを確認する。
「よし、誰もいないな。えーと…どちらへ向かえば…お、こっちに降りる階段があるな」
俺は階段を降りて、地下を目指した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、クリス
「いきなりヤバイとこに降りてきちゃったみたい…誰もいなくて良かったけど…」
私は豪華な家具の揃った部屋に落ちた
ここは、屋敷の二階。主の仕事部屋のみたいだ。今は、主はいないのでよかったが。
あと助手くんは三階の客室に落ちただろう。
そして、何故私がこんなにこの屋敷に詳しいのかというと…
机の上に置いてあった屋敷内の構図を見てるからだ
そして、問題の地下室の構図もあった。あったのだが…
「どうやって下にいくんだろう…」
そう、地下へ続く入り口などが書かれてないのだ。よほど大切な何かが隠れているのか…
「とりあえず図は貰っておこう」
そう思い、地図をしまうと…
パリーン
そんな音が、小さく聞こえた。
「ー助手君の方から!!」
そんな声を大きくあげたあと、
ガチャ ガチャ ガチャ ガチャ
私の声に気づいて誰かが向かってくる足音だ。
自分の行動に後悔して慌てて潜伏スキルを発動させ、机に隠れる。すると、
ドアが開けられ、そこに立っていたのは
下半身が、兵士のような鎧で
上半身が、召し使いのような服で
頭には、手品をやる人の帽子…?
そして顔が見えない!
その不気味な人間みたいなのに、驚き、しりもちを付いてしまった。
ドスン、となった。
そしてその音の方へその不気味なやつは走り出して、
手を斧に変えて体を回して走ってきた。
「ーッ!!!?って危なっ!」
私はすぐさま体制を直して、その場から離れ、攻撃を回避した。かなりの速さに驚かされ、声を大きくあげてしまった。
私はこの状態を切り抜けるため、ひとつの作戦に出ることにした。
音の方へ向かい、斧を振り回すも誰もいないことに気付き、そして廻りを警戒している不気味な人影に向けて
「バインド!」
と叫ぶと、その不気味な人影に命中し、その場で倒れながらもがいている。
もう、襲ってくることはないなと思った瞬間
手が歪みはじめ…
「ヤバイ!斧に変わっちゃう!」
私は腰のダガーを抜くと、すぐさまその手を切った。するとその瞬間。
「…え?」
スゥゥ、という音と共に手は粉のように消えていった。どういうことなんだ…?姿は奇特な上に体も変だ。
もしかして復活したりするんじゃないか!?と思い拘束された本体を見ると、そんなことはなくあがいているだけで、安心したようにため息をつく。
「ふぅ…ひとまず助かった……しかし、この屋敷は神器以外にもおかしい部分がある。さっきの人間みたいなのとか、地下室のこととか」
これらにはひとつ心当たりがある。ここの主の名前はデスト・ロットオルカーン。そして地獄の錬金術師の二つ名を持つ人物。おそらくそれが関係してるのだと思う。
「とりあえず、助手君に早めに合流しないと。まあ、助手君ならこの相手ぐらい何とかしてしまいそうだけど…」
とりあえず、色々気になるが神器の回収が先だ。
私はこの部屋を出るため、ドアノブに手を掛けた
銀髪盗賊団の盗品ファイル @mysteryDreamer
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