第30話 脱出
研究成果を回収して、佐座目達は急いで階段を降りていく。どう考えても時間が足りない。
行動の自由を奪った五十嵐を置いておくという案が出たが美玲が却下した。
楽に死なせてやるつもりはない、と目が笑ってなかったので可能な限りは荷物にして連れて行くようだ。
フロアの床に穴を開けて短縮を図るほどの力はもう、自分たちには残されていない。
「エレベーターはどうなんですか!?」
「駄目だ。どうやったのか知らんが中身は撤去されていて、下から狙い撃ちにされるぞ。」
つまりは、ひしめいているというわけか。防衛機械が。
だが、他の場所にはいないのに、どうしてそんな人が入ってこなさそうな場所にいるのだろうか。
「前の時は、機械の行動に干渉できる奴がいたんだ」
なるほど。
この作戦にその手法が使われなかったことで、顛末を佐座目は察した。
「ああ、もうっ。どうしてこの建物階段が中にあるのよ。外にあればショートカットできるのに」
そういう事は建築家さんに言わないといけませんね。
と、そんな理沙の発言を聞いて佐座目は思い付いた。
「さすが理沙さんですね。そうですよ、律儀に建物の中を通って行かなくてもいいじゃないですか」
佐座目は提案を口にする。
その説明を受けて、その場にいた全員が声を挙げた。
その手があったか、と。
車というよりはもはや戦車に近い威容となってしまった改造車の前にいた稲穂は、残り時間を確認した後、他の整備班のメンバーたちに声をかけた。
「時間だ、撤退するぞ」
事前に連絡を受けていた通り、奴らは間に合わなかったかと思い。改造車に乗り込もうとするのだが、
もうすでに退去している他のエージェントの手を借りて、苦労して開けた五階フロアの外壁を見つめる。
目をそらそうとして……、
一瞬後そこから、銀色の鞭を片手にエージェント達が次つぎと飛び込んできた。
「すまない、連絡するのを忘れていた。乗せてもらえるか?」
「しぶとい連中だな」
稲穂は、口の端をわずかに上げて答えた。
八人全員を回収した後、一フロア使って、加速した改造車は抗体組織の建物を飛び出して、向かい合ったビルへと突っ込んだ。
直後、今まで自分たちのいた建物が爆発を起こして倒壊していく。
残り時間零分。
これにてリンカ・コア攻略作戦の終了だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます