第17話 整備班



 リンカ・コア作戦までの数日間、佐座目の身の周りは目まぐるしく変化した。


 勝算を上げるために、情報収取を積極的に行い。

 今の体に慣れるためにトレーニングを積み重ねる。


 こちらから動いて変化する事もあれば、向こうからやって来る事もある。


 特に、理沙が組織に戻って来た事。

 これには驚いた。

 シュエルターに行って、資料に半日かけて目を通した翌日。部屋から出たら目の前にで待ち構えていたから、驚きもする。


 ディエスが船頭牙でない事を知って、それが理由で戻って来たのかと思ったが、彼女の様子を見るにどうにも違うようだった。

 落ちこぼれなのだから、安全な所にいてほしいというのが佐座目の本音なのだが、言って聞くような人ではないことぐらいは分かっている。


 そして、もう一つの変化は他のエージェントから話しかけられるようになったという事だ。


 どうにも菖蒲経由でディエスがディエスでない事が伝わったようで、同情のような視線とともに、世話を焼いてくれるのだ。さすがにいつまでも避けられたままでは色々と不便だったので、協力的になってくれて助かった。





 そんなわけで、作戦を明日に備えた今日も、佐座目は特訓にいそしんだり、情報収集に忙しくしていたのだ。


「それで、何でこんなところに来る事になるのよ」


 現在場所は、整備室。

 その名の通り、エージェントの使用する機材を整備するための場所だ。

 隣には、理沙が訝しそうにしながら歩いている。


「ええ、少し。面白い手を考えたので、実行可能かどうか相談しようと思いまして」

「ふぅん、アンタってホント牙とは違って頭使うタイプなのね」

「兄さんも一応頭は使ってるみたいですよ。未踏鳥さんにも勝ったことがあるじゃないですか」

「あれは卑怯とか、抜け道の類いでしょ」


 辛口な理沙の評価からすれば、兄のそれは誉められた作戦ではなかったらしい。


 大体想像はできるけど、詳しくは教えてもらえなかったからなぁ。


 そんな事を話しながら佐座目達は、武器の調整で使用者のエージェントと共に話し合っている整備班の間を縫って、その人……班長のもとへと向かう。


「お前がディエスの体に乗り移ったって、小僧か」


 その班長……部屋の奥にいた人は、無精ひげをはやして、ぼさぼさの髪を伸ばし放題にした体格のいい男だった。


 稲穂他刈いなほたかる……、それが整備班班長の名前だった。


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