星になった少年
@buchio0116
星になった少年
一向、ぐずぐずして寝床を出られずにいると、淡い陽光が柔肌を舐めるようにして瞼裏へ差し込んでくるのがわかった。朝の気配である。夢見から起こされたばかりのたんたんは、その尺取りのような不格好で目を瞬かせながら、しぶしぶと光のあるほうへ振り返ってみた。――朝になったのだ……。鈍間な体躯を引きずって、漸う見遣れば、そこに一昨夜の子熊やら洒落た大白鳥やらあるいは火炎の椋鳥の遊戯は、たち消え、見あたらない。あるのは煌々として、慈愛に満ちた明るみである。
ただ全体が不可思議である。たんたんはつま先と頭頂部を襲う寒々しさに軽く身震いをした。次いで、くしゃみがくる。するとまるで羽虫が転げまわるようにさわさわと、こそばゆい心地が全身に走った。
走馬燈の――断末魔が、たんたんの脳裏の耳目をかすめる。思い出など知るはずもない。自分が全体何者か、生来の居所も、一握の希望も、信仰でさえ、諦めた記憶すらないのである。
たんたんは、ただ一昨夜の宴を懐かしく思った。夢幻に囲われた、たとえそれらが実態のない躯であろうとも、ただ自分のあるべき所に帰りたかった。だが現実が朝を呼び起こすのである。彼はまた孤独に耐え、夜を一層望まねばならない。――自然、涙がぼろぼろと、こぼれた。一滴に力ない悲哀が、詩になってこぼれた。詩はほおを伝うとき、幾千幾万もの羽虫の寂寥をなぞりながら進んだ。やがては奥深くへ、溶けて見えなくなった。
跡には連綿と、静けさが残った。
たんたんは触れることの許されぬ陽光を見つめ、祈るしかない。身に刻まれた呪われた運命を悔やむことも考えはしたが、彼はただ涙をこぼし、壊れない程度にそっと瞼を閉じるように、祈る道を選んだのである。
星になった少年 @buchio0116
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