第6章『チャーリーの背中 6』
出された食事は、お世辞にも美味しいと言えるようなものではなかった。
それは栄養強化を徹底して優先された味気のない食材を使っているからであり、まともな土のない火星では芳醇な野菜など作れないのだから、仕方のないことだろう。木星圏のコロニーにおける食糧事情も似たようなものであったし、アレックスにとっても寧ろ懐かしいとさえ感じるような素朴な味わいがあった。
彼が気にしているのは、そのようなことではない。
食卓を挟んだ目の前に、自らが手にかけた兵士の遺族がいる。その事実がこの上ない緊迫感となって襲いかかり、食べ物を喉奥へと押し込むことで精一杯な状態となっていた。
(やはり、正直に話すべきなのか……?)
チラリと、アレックスはエルシャのほうを盗み見る。彼女は娘の口元に付いたスープの水滴を、ハンカチで拭き取ってあげている最中だった。
この様子から察するに、どうやらエルシャは夫を殺したであろう仇が目の前にいることには気付いていないらしい。ばれていないのなら無問題とすることも十分に出来たが、生憎にもアレックスはそう容易く後ろめたさを拭えるような性悪さなど持ち合わせていなかった。
しかし、その話題を切り出せるほどの勇敢さもない。何も無理に真実を伝える必要性などなく、むしろ触れないほうがお互いにとっても幸せなことだろう。“優しい嘘”という言葉があるように、残酷な現実は遠ざけたほうが良いことだってあるのだ。
もっとも、そんなものは後から思いついた建前であって、本音は“逆襲が怖い”だとか“嫌われたくない”という、もっと根底的なものだ。そのようにしてアレックスが打ち明けるべきか否かを思い悩んでいたそのとき、レミーナが悲しげな顔で口を開いた。
「……明日になったら、みんなもまた戦争に行っちゃうの?」
ナイフの如き鋭利さを持った問いに、食卓を囲んでいた全員が閉口してしまう。戦場に赴いたまま帰らぬ人となった父を持つ彼女だけにその一言は重く、どう応えるべきか判断に迷ってしまっていた。
「こら、レミーナ。食事中にそんなことを言うものじゃありません」
「でも……」
母のエルシャに咎められてしまい、レミーナは顔を俯かせて落ち込んでしまう。すると、そんな彼女を気遣ったのかチャーリーが先ほどの問いかけに答えた。
「心配するな、少し出稼ぎに行くだけだ。一仕事終えたら、ちゃんとまたここに戻ってくる」
「ほんと……?」
「ああ、約束する」
涙を拭って顔を上げるレミーナに対し、チャーリーはなだめるように微笑んでみせる。普段の物静かな獣のような彼からは想像できない、しかし自然で優しい笑みだった。
(おお……)
一連のやりとりを見て、アレックスはつい感嘆の吐息を洩らしてしまう。
例えそれが子供をあやすための便宜的なものであったとしても、決して有耶無耶にはせずに言い切るチャーリーの姿勢は、男として見習うべきだと思えたのだ。
(……やっぱり、けじめはきっちりとつけるべきだ。逃げるばかりじゃいけない)
──進み続けなければ、ミリアや父さんに顔向けなどできないから。
頭の中で踏ん切りをつけたアレックスは、やがて腹をくくって目の前の未亡人へと声をかけた。
「エルシャさん。……後で、大事なお話があります」
*
階層都市にひっそりと構える小さな墓地。そこを訪れたアレックスとエルシャの二人は、敷地内の片隅にあった墓石の前で足を止めた。
ザブー=ムグン。エルシャの夫であり、『ミスト・ガーデン』の戦いにて命を落としたというインデペンデンス・ステイトの兵士だ。
その名が刻まれた墓標の下に、彼の体は埋められていない。そればかりか、髪の毛のたった一本でさえも遺族の元には帰って来なかったとの事らしい。
悲しいが、戦争とはそういうものなのだ。妻子を持ち帰るべき場所を持つ父親も、未来という可能性を秘めた若い命も、戦火に焼かれて散っていってしまう。
きっと痛みや苦しみの中で死んでいってしまったであろう彼に、せめて安らかな眠りのあらんことを。そのように追悼の意を込めて、アレックスはエルシャと共に花を墓石へと手向けた。
「それで、アレックス君。二人きりで話というのは何かしら。こんな場所にまで連れてきて……」
少し戸惑ったようにエルシャが訊ねる。理由も言わずにここまで案内してもらったのだから、不審げに思ってしまうのも無理ないだろう。
祈りを終えたアレックスはゆっくりと立ち上がると、エルシャと正面を向き合って深刻な表情で告げた。
「エルシャさん。ザブーさんを……あなたの夫を殺してしまったのは、僕なんです……」
言われたエルシャは、訳が分からずに混乱している様子だった。しかし、彼女には目の前の少年が冗談を言っているとも到底思えない。
言葉の意味を半分も理解されていないことを察したアレックスは、まるで自らの罪状を曝け出すように、殺害に至ってしまった経緯を述べる。
「木星の『ミスト・ガーデン』に住んでいた僕は、当てもなく仲間と逃げ惑っていました。そんなとき、放置されていたDSWを見つけたんです。僕はそれに乗って──」
ひとつ、ひとつ、懇切丁寧に話した。
こんなことを伝えてしまえば、間違いなく自分はエルシャに恨まれてしまうだろう。もしかしたら、この場で刺されるなり首を絞められてしまうかもしれない。
アレックスは、それでも構わないと思った。
それほどまでの罪を自分は背負ってしまっているのだから、遺族から報いを受けるのだって当然の結果、因果応報であると言えるだろう。
こんなけじめの付け方が、決して正しいなどとは思わない。それこそ残されたエルシャ達のことを思うなら、黙っていた方がずっと利口な選択であっただろうし、打ち明けたところでそれはアレックスの独り善がりにしか成り得ない。
──もしかしたら自分は、然るべき天秤に掛けられた上で、エルシャに裁かれたかったのかもしれない。
「……それで、あの人を撃つことになってしまったのね」
「許して欲しいなどとは言いません。あなたには、僕を恨む資格があるから。せめて、僕の命でその恨みが晴れるなら、僕を……」
辿々しく言葉を紡いでいたアレックスを、突然の抱擁が遮った。
「よく、話してくれたわね……。ありがとう」
「えっ……」
一瞬、何を言われているのか本気でわからなかった。
ただ、エルシャに優しく体を抱き寄せられてしまい、不意に和らいだ気持ちになってしまう。
“ありがとう”、だと……?
それが肯定を意味するものだと理解したとき、不意にアレックスの瞳から一筋の涙がこぼれてしまった。
「なんで……なんです……? あなたは僕を、許せないはずだ……」
「ええ、許せないわ。でも、あなたは勇気をもって打ち明けてくれた。それだけで、十分よ」
「でも……、僕は……」
「あなたは仲間を守るために戦ったんでしょう。それは間違ったことなんかじゃない。あなたが謝る必要なんて、どこにもないのよ」
信じられない。なんて
アレックスは審判を仰ぐ為だけに、殺される覚悟すら抱いて事実を話した。
それを彼女は、あろうことか夫を殺した自分の罪を許してくれるというのだ。
明らかにこれは普通ではない。おそらく余程のお人好しでもなければ、このような結論には至らないだろう。
これまでアレックスが培ってきた人間の心理像とはまるで異なるエルシャの答えに、わけのわからないまま立ち尽くしてしまう。
「ありがとう……、ございます……」
それでも今は、彼女の善意が女神の救いのようにさえ感じられ、只々ありがたかった。
*
こうしてユニットバスに浸かって丁寧に体の汗や汚れを落とすのは、実に『ミスト・ガーデン』の施設で暮らしていたとき以来だった。
水の貴重な火星においては当然ながら住民の使ってよい水の量も限られているため、客人であるエリー達がわざわざ浴槽まで使わせてもらうのは些か抵抗があったが、ここはエルシャの好意に甘えることにした。彼女は何故かアレックスと共に墓参りへと行ってしまったため、今はサクラ、レミーナと共に浴室を使わせてもらっている。
「ふんふんふふんふーん♪」
気持ち良さそうな鼻歌を歌いながら、サクラが雨のような温水を浴びていた。やや褐色を帯びた肌は水気でほんのりと赤みを増しており、シャワーの水が健康的に張り出た大きな胸を伝って、程よく筋肉のついたへその辺りへと流れていく。
もしもこんな光景を同世代の少年が見ようものなら興奮で夜も眠れなくなりそうではあるが、当然ながらこの空間には女性しかいない。よって、エリーが生まれたままの姿となっているサクラを見たところで、
(やっぱり細い方が男の子としてもいいのかしら……)
と、少し肉が多めについた自分の尻を気に病む程度であった。
「エリーおねえちゃん、何か考え事してるの?」
「うえっ!?」
腕の中にいたレミーナに心配されてしまい、慌てたエリーはつい素っ頓狂な声を上げてしまった。サクラもそれに気付いたらしく、興味津々な様子で会話に加わってくる。
「ははーん。さては、アレックスのことでしょ! エリーってば、ずっとあいつを気にかけてるのが丸分かりだもん!」
「えっ。ええ……そう、そうなの」
ただ単にサクラのプロポーションが羨ましかっただけなどとは口が裂けても言えなかったが、エリーがアレックスのことを四六時中心配しているのは本当のことであった。
自分たちの義父であるウォーレン=モーティマーを失ったあの戦闘以降、塞ぎ込んでしまった彼とは殆ど言葉を交わすことができていない。7年近く一緒に過ごしてきたエリーですら、彼とどう接すればよいのかわからなくなってしまっていた。
「アレックス、火星に来る前もずっとピリピリしてたよね。正直、ちょっと近寄りがたいかな……。そりゃ、気持ちはわかるけど……普段からあんな感じなの?」
「そんなことはないわ、いつもはもっと優しいのよ。確かに少し頑固なところはあるけれど……」
言いかけて、エリーはすぐに首を横に振る。
「……ううん。小さい頃はもっと怒りっぽい性格だったかも」
「へえ、意外……。ていうか、エリーは昔からあいつと知り合いなんだ!」
「私も一緒の施設で育ったからね。アレックスとは家族みたいなものよ」
「ふうん。“家族”ねぇ……」
何やら意味有り気にサクラがにやけ笑いを浮かべている。レミーナも幼いながらこういう話題に興味があるのか、顔を赤くしつつも聞き耳を立てていた。
「べ、別にそういう関係とかじゃ、ないんだから……本当に家族よ、家族!」
「恥ずかしがってるところがますます怪しぃ……。それでさ、昔のアレックスはどんな子供だったの?」
「そうねぇ……。私は物心つく頃にはもうお義父さんのところでお世話になっていたけど、彼が施設に入ってきたのは10歳の時だったから、だいたい7年前の話になるわね……」
サクラとレミーナに語り聞かせながら、エリーは遠き思い出の中にある彼の姿を想起させていく。彼やミリアと初めて出会った日の記憶は、今でも鮮明に覚えていた。
「サクラと同じでね、私も第一印象は少し怖かった。言葉遣いも今よりずっと荒かったし、自分のことも“俺”なんて呼んでてね。とにかく凄くトゲトゲしてて、妹以外には全く心を開いてくれなかったわ」
「ミリアには、そうじゃなかったんだ」
「うん。ミリアと話す時だけは口調も穏やかで、ほかの人と話す時とは違って自分を“僕”って言っていたのが印象的だった」
今思えばそれは、虐待を受けて人間不信に陥ってしまっていたミリアを少しでも元気付けようとしていた、彼なりの優しさだったのかもしれない。彼は本来の粗暴な性格を押し殺してまで、せめて妹の前では温厚な人間でありたいと願い、仮面を被っていたのだろう。
「ある時ね、彼がボロボロになって家に帰ってきたことがあったの。理由を聞いたら、学校のいじめっ子と喧嘩になったらしくてね。それも殴り合いじゃなくて、一方的にやられてただけ。何でそんな危険なことをしたのかって、私はつい彼を咎めてしまったわ」
『でも』とエリーは目を伏せ、続ける。
「これは後でわかった話なんだけど、どうやらアレックスは私を庇ってくれていたみたいなの」
「庇った……? エリーおねえちゃん、何か悪いことをしてたの?」
「ううん。ただ、ちょっとね。私のことを、あんまり快く思っていない人たちも結構いたから……」
別に悪名高かったというわけではない。寧ろ、当時からエリーは客観的に見ても真面目な人物で、誰もが認めるほどの正義感の持ち主である。
そのように曲がった事は決して許さず、見て見ぬ振りもしない彼女だったからこそ、それを面白がらない連中がいたというのもまた事実であった。そうしてエリーはいつの間にか女子生徒たちの集団から弾き出され、肩身の狭い思いを強いられてしまう。男子とは違っていじめの手段も陰湿極まりなく、直接的な暴力こそ殆どなかったものの、まるで人権そのものを取り上げられるような精神攻撃には日に日に耐えられなくなっていったものだ。
だが、そんな仕打ちもある時を境にピタリと止まった。アレックスがエリーを虐げていた生徒たちに片っ端から、あくまで拳は振るわずに刃向かったのだ。
釘を刺された女子生徒たちはアレックスを恐れたのか気味悪がったのかは定かではないが、それきりエリーからは完全に手を引くこととなる。以降は彼女自身の人柄の良さも幸いして、二度といじめの対象になるようなことはなくなった。
その代わりに、この一件で変人として名を馳せてしまったアレックスは心ない者たちに目をつけられてしまい、いつしか“殴られ屋”と呼ばれるほどのいじめられっ子となってしまう。
勿論、これに責任を感じたエリーはすぐにアレックスへと助け船を出そうとした。しかし『これは俺の問題であって、お前には関係のないことだ』と、他でもない彼自身にそれを拒まれてしまう。
そこでエリーはようやく、彼がミリアと接する時のように、自分にも不器用な優しさを向けてくれているのだと気付いた。彼がエリーに対しても温厚な口調で接するようになったのは、ほぼ同時期のことである。
「……はい、もうこの話はお終いっ。二人とも、もうあがりましょう」
「えー、これからがいいところなのにぃ」
「レミーナがのぼせちゃうでしょう。ほら、サクラも」
そう言ってエリーは強引に話題を切り上げると、浴槽から立ち上がってそそくさと脱衣所へと向かっていってしまう。
レミーナの体についた水の玉をタオルで拭ってあげていると、下着を着用していたサクラが呟いた。
「……今すぐは難しいかもしれないけどさ、いつかエリーの想いも、あいつに届くといいね」
「うん……そうだね」
つい反射的に、エリーは微笑んでそう答えてしまった。
だが、その意味を遅れて理解すると、エリーは次第に顔を赤く染めながらサクラへと必死になって抗議する。
「ち、ちが……っ、だから、えと、これは決してそういう意味じゃなくって、あくまで“家族”としてであってね……!?」
「あはは! まっ、これからも仲良くやろうよ。“恋する乙女同士”さっ!」
サクラは頬を膨らませるエリーの肩をポンっと叩くと、にこやかに笑う。そして、彼女もまた胸中で『私も頑張ろう』と、強く決意を抱くのであった。
*
アレックスは一人、歩いていた。
そこには太陽も月もなければ、昼も夜もない。眩いほどの光が立ち込め、それと同時に吸い込むような闇が蔓延している。そんな
風もなければ星も見えない。時間さえも感じ取れないその場所に、ただ足跡だけを残しながら突き進んでゆく。一体どこへと向かっているのか、そしてどこに辿り着くことになるのかは、自分でもわからない。
一体どれほどの距離を歩き続けただろうか。足はもはや棒のように感じられ、床を踏み締める度に苦痛が襲いかかる。それでも彼は、一度たりとも休むことはなく進む。この世界から逃れたい、ただそれだけのために。
──暴力なんて手段に溺れるのは、愚かしくて弱い人間だけだ……。でも、僕はあいつらなんかとは違う……、僕は、強い。そうだ、僕は強いんだ。だから、強く在り続けなきゃ……。
何度も何度も、自分にそう言い聞かせた。
この道を進み続けること自体は別に苦ではない。自分を肯定してくれている人だっているのだから、これは決して独り善がりな願い……というわけではないと思う。
ただ、これまで進んできた道に意味などないのではないかという疑念が生じた途端、一気に気が遠くなってしまった。不意に足場が崩れ出し、目の前に少女の幻影が現れる。
──いつまでお兄ちゃんは、そんな仮面を被っているつもりなの?
細く白い両腕が伸び、首元を力強く締め付けられた。
──そんなことじゃ何も救えないんだって、本当はわかってるくせに。
息ができない。その場で溺れてしまいそうになる。
アレックスの中で彼女は、いつしか逃れられぬ鎖と化していた。
すでに引き返すことなどできなくなっていることを悟り、彼は悲しげな瞳を見つめながら絶叫する。
どうしようもない過失。
引き返せない過去。
──あぁ……ああ……っ!
もう、何もかもが元には戻らない。
「……レックス、アレックス!」
強く肩を揺さぶられ、アレックスは飛び起きた。
怯えきった表情で周囲を見回すと、そこは男性陣に貸し与えられているエルシャ宅の一室であった。隣には、寝息を立ててテオドアが幸せそうに眠っている。気遣わしげにこちらを覗いているのは、自分と同じく床で寝ていたチャーリーであった。
「大丈夫か、ひどく
言われ、アレックスは自分の全身が冷たい汗でぐっしょりと濡れていることに気付く。どうやら先程まで見ていた光景は、すべて夢の出来事だったらしい。
「ああ……ごめん、起こしちゃったみたいで」
「気にするな。もともと2時間おきに起床する性分だ」
「はは……、そっか」
果たしてそれが気の利いたジョークなのか、それとも本気なのか判断しかねてしまい、アレックスは思わず苦笑いを浮かべてしまう。もしそれが本当だとしたら、睡眠というプライベートまでもが兵士として完成された人物だ。
彼の“強さ”も、まさしくそこにある。
「……チャーリーはさ、何のために戦っているの?」
無意識のうちに、アレックスはそんなことを聞いていた。
チャーリーの持つ力は、それこそアレックスの忌み嫌う暴力そのものである。だからこそ、物心つく前からそれを必要とし欲していた彼の意見が、何となく聞きたかったのだ。
「生きる為に、戦っている」
チャーリーは普段と変わらない平静な口調で告げる。
彼の出した答えは、予想していたどの答えよりもシンプルなものだった。
「生きる……それは、何の為に……?」
「……? 生きる為に、生きている。この答えでは不服か?」
それは人として、生物としての真理とも言えるだろう。
何も矛盾してなどいない。糧を戦場に見出し、生きるための手段として戦うことを選んだ彼だからこそ、混じり気のない強さが備わっているのだろう。
そんな彼を“愚かしい弱者”などと罵ることは、アレックスには出来そうになかった。
「……いや、ありがとう。君のことを、少しだけ理解できたような気がする」
「ならさっさと眠りについたほうがいい。起きていても寝ていようとも、生きている限り明日は訪れるのだからな」
「うん、そうだね……」
チャーリーの哲学が垣間見えるような言い回しも気になりはしたが、ここは彼の言葉に従って眠ることにした。
夜はまだ深く、部屋の窓の奥は未だ静寂と闇に包まれている。それでもアレックスは朝陽が登ることを信じて、再び瞼の裏側の世界へと堕ちていった。
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