4

バイト先のコンビニまで送るという隆也に遠慮し、あたしはバスに乗った。



夏の終わり、バスの中は蒸し暑く、色んな匂いが入り混じっている。



流れ行く窓の景色をぼんやり眺めながら、あたしは、束ねた髪の毛を手で摘み、そっと匂いをかいでみた。



隆也の吸うタバコの香。汗の匂い。


移り香がまだほんのりと残っている。



さっき別れたばかりなのに、すでに、あたしは隆也を恋しがっていた。



でも…。



でも、どんなに恋しがっても、彼が帰ってゆくのは、結局、恋人と暮らすアパートなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る