気が向いたら書くショートショート

テニ子☆

五千円から始まる恋

笑顔が絶えない明るい食卓で

哲夫は妻と娘二人に高校時代の話をしていた。

もう十年も前、哲夫が十七歳 高校二年生のころの話だ。


それなりに真面目だったのに何故か

高校からヤンキー校に進学してしまった哲夫は。

毎週木曜日、三年生のガラの悪い先輩にカツアゲされていたのだ。

五千円払わなければボコボコにされる。

毎月お小遣いは貰っていたがまだ高校生の哲夫に

毎週五千円はかなりきつかった。


そんな日々が続いたある日

その日もいつもの場所に金を渡しに行こうとしていた。

しかし、これまたガラの悪い女の先輩にぶつかってしまったのだ。

ペコペコと頭を下げ散らばった小銭と五千円札を拾う。

拾い集めてふと顔を上げると先輩はこっちを睨んでいたが

それでもかなり綺麗な人だった。

「きーつけろや」

「すみませんっ」

少しドキドキしながら待ち合わせの場所へ走った。


プールの裏に着くと先輩がいる。

ささっと近づいて五千円を渡す。

早く逃げようと後ろを向いたときだ。

「待てよ。哲夫。お前一万だ。一万出せ」

無理だ。できるわけがない。

お小遣いを一切使わなかったとしても足りない。

「でっで来ません。そんなに……無理です。ごめんなさい。」

思った通りドカドカと殴られ、蹴られる。

何もできずただただ謝る。


そのときだ。

「人の金取るなんてはしたない男たちね」

恐る恐る顔を上げるとそこには、

あの女の先輩が立っていた。

殴りかかる男たちをバッタバッタとなぎ倒していった。

男たちが起き上がれなくなると去っていこうとする。

哲夫も慌てて立ち上がった。

「ちょっちょっとありがとうございました。あの、その

せっせめてお名前だけでもっ」

「私?私の名前は……美由紀」

..........................................................................................................

「そのお姉さんすごいねー」

子供たちがキャッキャと騒いで

自分たちの部屋に戻っていく。

哲夫は妻と顔を見合わせて笑った。


「愛してるよ。



美由紀………」














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