9月 ニート、彼女と反りが合わない

 やってまいりました、シルバーウィーク! フリーターの俺には関係ないが、晶子ちゃんがずっとお休みだ! 家事を分担しつつ、執筆に集中できるまたとないチャンス!

 かと思っていたのだが、現実はそう甘くはなかった。

「シルバーウィーク、友達と旅行するから、留守番よろしくね!」

 晶子ちゃんから衝撃の事実を突きつけられたのは一週間前だった。

「え、そうなの? どこ行くの?」

「んーとね、金沢」

「えー、いいなあ、何で俺も誘ってくれないの?」

「だって、女子会だし」

「ああ、それじゃしょうがないけど」

「二泊三日だからそんなに長くないよ」

「うーん、わかったよ」

 なんて会話をして、シルバーウィークは来た。俺は独りぼっちで他人の部屋の掃除や洗濯をして過ごした。執筆も少しはした。でも、バイト以外で誰とも会話をしなかった三日間は俺に多大なダメージを与えた。

 晶子ちゃんは予告通り三日後の深夜に帰宅した。

「ただいま! お土産買ってきたよ」

「……おかえり」

「どうしたの? ほら、お饅頭あるけど食べる? もうご飯食べたの?」

「うん、まあ、カップラーメンとか」

「それじゃお腹いっぱいじゃないでしょ? お土産買ってきすぎちゃったから、食べる物いっぱいあるけど、食べる?」

「いいよ」

「何で?」

「別に特に意味はないっていうか」

「何それ?」

 晶子ちゃんはお土産のお菓子や撮ってきた写真を楽しそうに俺に見せる。本当に楽しそうで、ベラベラと喋る晶子ちゃんを俺は何故かうっとおしく思った。

「もういいよ」

「待ってよ、まだ話したい事いっぱいあるんだから。この写真はね――」

「もういいって言ってるじゃんかよ!」

 俺は思わず叫んでしまった。

「何で怒るの?」

 晶子ちゃんは怯えた表情をした。俺は余計に腹が立って、自分を抑えられなかった。

「晶子ちゃんは仕事してるから旅行もできて、友達もできていいよね。俺はさ、夢だとかなんだとか言って、自分の好きな事してるからしょうがないとは思ってるけど、これじゃあんまりだよ!」

「ちょ、ちょっと待って! 統一くん!」

 俺は衝動的に晶子ちゃんの部屋を出て行った。元々少ない自分の荷物は片手で持てる程度だった。勢いよくドアを閉めたら、晶子ちゃんはそれ以上追いかけてこなかった。

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