第78話:二人称小説の解説

 二人称小説って、たぶんきちんとした形が確立していないと思われます。

 少なくとも「これだ!」というのは見たことがありません。


 そこで今回は、「あなたの大事な人の顔を思い浮かべてから読んでください」で、試しに2つのサンプルを紹介します。



 No.1は、手紙や電話などを意識した、会話型です。

 相手たるキャラクターがいるパターンです。

 いると言っても、手紙だったりした場合は、その場にはいませんが、どこかに存在しているパターンです。

 これは、見方を変えると、相手たるキャラクターの一人称とも言えます。

 No.1では、そのイメージを押さえるため、相手たるキャラクターに一人称(私、僕等)を一切使わせないで会話させました。

 それでも、これは二人称なのかと疑問に感じています。



 No.2は、語り部型です。

 心の声、神の声、作者の声など、実体が物語の中にないものが、読者に語りかける形です。

 たぶん、これが本来の二人称だと思います。

 その代わり、語り部は自分のことを一切語ることができません。

 語った途端に、それはNo.1と変わらなくなってしまうのです。



 二人称で見えるのは、「相手が語る相手」と「相手から見た自分」です。

 自分で自分のことを語ると、その途端に一人称になってしまいます。

 何かを語る時、必ず「相手」という鏡を通すのが二人称です。

 また、No.1のように「相手が語る相手」も一人称にはいりそうで微妙なラインです。

 まあ、主体が自分ならば、十分に二人称と言えるでしょう。


 じゃあ、これ、何の役に立つの? というと、個人的には「自分を薄くできる」という効果ではないかと思います。

 操られている自分、夢の中にいる自分、自失状態の自分を誰かに語ってもらうものです。

 自分の気がついていないことを相手が気がつくなどもできるわけです。


 そのため、ホラー、恋愛、心理物などではかなり有効でしょう。

 別にアクションとかできなくはないですが、やる意味はなさそうですよね。

 ファンタジーなどで、「汝、目覚めし時……」とかの語りも二人称ですね。


 ぶっちゃけ、普通は使うことがありません。

 ゲーム、手紙物、ホラーなど書く時に、ちょっと思いだしてみるといいかもしれません。

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