第63話:ジャンルでブームを語るのはナンセンス

 ジャンルがアウトプット時に必要なのは、あくまで「わける」という処理のために必要なものだと思っています。

 つまり、整理です。


 そこからレポートして、「ファンタジーが流行だ」とか「学園物が流行だ」とか語ることもあるでしょう。


 しかし、それはたとえば「ファンタジージャンル」自体が流行っているわけではありません。

 そこに内合される要素が流行っているだけだと思うのです。


 わかりやすい話で言えば、「異世界物」「転生物」「俺強物」。


 「異世界物」は、「異世界に行くこと」自体が魅力ではないと思います。

 未知への憧れ、逃避願望、そういったことの表れだと思っています。


 異世界に行けば読者が満足するわけではありません。

 異世界に行って、そこに未知の冒険があったり、現実から逃げられたり、そういうことに読者は魅力を感じているはずです。


 一言で言えば、これら流行り物は「欲望を実現させる物語」です。


 大事なのはジャンルではありません。

 やはり、あくまで物語です。

 アウトプットされたジャンルは、読者をその物語に導入させるための手助けをするものです。


 そう考えると、「異世界ものが流行だ」「転生物は廃れる」というジャンルで区切る言い方は、非常にナンセンスに感じます。

 もっと言えば、「今時のファンタジーは……」「なろう系は……」というような、論調自体も疑問視するべきなのかもしれません。

 少し前に、「なろう系を新しいとは思っていない」という意見も書きましたが、その根本にある「欲望を実現させる物語」は、なんら昔から変わっていないからです。

 うわべの見せ方が、それこそ文圧さげたり牛丼小説になっているだけなのです。


 

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