第2話 陸路(バイク)
「各チーム、港に続々と車、バイク、戦車等、色々なマシンを降ろしています。では、その間に陸路のコースについて説明します。今回は大きく分けて二通りのルートが考えられます。まずデジマを出てチクゼン、ブゼンを通り本州のナガトに通じるトンネルを通るカンモンルート。もう一つはデジマを出てブンゴからイヨに通じる橋を渡るブンヨルートです。ブンヨルートの方はそこからまたルートが分かれます。イヨから本州のビンゴに通じる橋を渡るセトウチシマナミルート。サヌキから本州のビゼンに通じる橋を渡るセトオオハシルート。アワからアワジへと橋で渡りそこから本州のハリマへとつながる橋を渡るナルトアカシルート。といった三通りの内容になっています。各チームどのような戦術で、どのようなルートを使って陸路のゴール、スルガの樹海へとたどり着くのでしょうか。非常に気になるところです」
「ただいまトップのメリケン合衆国チームの集団は予想通りカンモンルートを通るようです。トンネルを抜けるだけで本州に到達できますからね、他のルートだと最低でも二回は橋を渡らないといけませんので危険がつきまといます。さすが王者といったところ。さて、二位以下のチームを見てみますと、やはり各チームメリケンを避けてブンヨルートから本州に向かうようです。あっ、一チームだけメリケンを追うみたいです。ローラシア連合チームですね。やはり陸路には絶対の自信もっていますからメリケンチームと互角以上の戦いが期待できます」
「さあ、ブンヨルートの橋をラスィーヤ連邦チームとセリカ人民共和国チームが渡りきったところですが、やはり激しい戦闘になりそうです。二チームとも最後尾の戦車隊を十両ずつ橋の終わりに配置しました。ジパングチームとブリテンアウストラリス連合王国チームをここで迎え撃つつもりです。あーっと、始まりました。砲弾の雨がジパング、ブリテンアウストラリス、両チームに降り注ぎます。一台、また一台と、続々とリタイアしていきます。ジパング側も戦車で反撃しているのですがなかなか状況が変えられません。その間も、先を行く二チームとはどんどん差が広がるばかりです。開催国危うしか? おっと、ここでジパングチームの集団の後方から、コンテナを積んだトラックが最前線まで出てきました。一体何を積んでいるのでしょうか。あっ、少しずつコンテナが開いていきます。もう少しで中の様子が確認できそうです。何でしょうか、何か人の形をしたような白いものが見えます。それに、太いコードもたくさん見えます。どうやら白いものとつながっているようです。あっ、白いものが動き出しました。太いコードが次々に外れていきます。あれはどこかで見た記憶が……あっ、思い出しました。昔ジパングが開発していた人型二足歩行ロボットです。私の記憶では、先の大戦中、兵器として利用できないかを検討されていたが、全く使えないと分かり、そのまま全機廃棄処分になったと。うろ覚えですがメリケン合衆国にある、世界の歴史博物館で、若いころ見た記憶があります。まだ残っていたとは。その旧時代の遺物を持ち出して一体何をするつもりなのでしょうか? さあ、ロボットがコンテナを降りて、立ちはだかる戦車隊へと一直線に進んで行きます。今ちょうどラスィーヤ連邦の戦車が、前方から向かってくるロボットに狙いを定めたようです。撃ちました。一発、二発と砲弾を撃ち込んでいます。あーっと、直撃したか? しかし、ロボットの方は何事もなかったようにどんどん距離をつめていきますね。私の目には当たったように見えましたが、あの距離で外れたのでしょうか? 超々スーパーカメラのスロー映像がきました。リプレイを見てみましょう。さあ、ロボットの顔に砲弾がまっすぐ飛んでいきます。このままじゃ当たるようですが……なんと、当たりませんでした。信じられません。砲弾が顔に当たる寸前で何かみえない力のようなもので砲弾をはじくと言いますか? ずらすと言いますか? 弾が逸れていきました。一体何をしたのでしょうか? あーっと、ロボットがとうとう戦車隊の目の前まできました。それをみてか、ロボットに一番近いセリカ共和国の戦車が、ロボットめがけて突っ込んでいきます。そのまま轢き壊すつもりでしょうか? なんと、ロボットが真っ向から戦車を受け止めています。ロボットはビクとも動きません。それどころか少しずつですが、戦車の方が浮き上がってきました。ああ、もう完全に片側のキャタピラが空回りをしています。そのままロボットが戦車を横に……倒しました。わお、キマリテはウワテナゲ~ウワテナゲ~さすがジパングのロボット、まるでオオズモウの精神が体に宿っているかのようです。さあ、戦車隊がロボットから逃げるように離れていきます。これでやっと橋を通れるようになりました。ジパングチームはしてやったりか。ただ、まだ戦車隊の脅威は残っているようですが? おっと、ロボットの姿勢が急に変わっていきます。あーっ、この姿勢はイアイです。昔、ジパングのサムライが使っていたイアイのポーズに似ています。んっ、なんでしょう? なにかロボットの体が発光してきました。電気の帯が体全体に発生しているのがはっきり見えます。それがだんだんと左腕と右手に集まってきています」
「っすっごい音です。すごい振動がこちらにも伝わってきています。一面、土埃があがってなにも見えません。すごい突風も巻き起こっています。一体何が起きたんでしょうか? だんだんと視界が良くなってきました。あーっ、ロボットが倒れてます。うつ伏せに倒れているのが見えます。それに、ロボットの前方を見て下さい。ラスィーヤ、セリカの両戦車隊全てが行動不能でリタイアしています。一体何があったんでしょうか? またまた、超々スーパーカメラでスロー検証したいと思います。さあ、イアイのポーズをしていますね、ここから電気の帯が左腕と右手に集まって……ここまでは見ることができたのですが。さあ、こっからですね。注目しましょう。あーっ、ロボットの左手首がパカッと開きましたね。それから、とても速いですね。スローでもやっと追い切れる速さです。パカッと開いた左手首から、電気の帯……プラズマですかね? それを、イアイで刀を抜くかのように、右手で掴むと、スパッと。空気を切り裂くと言いますか、まあ、簡単に説明すると左腕に溜めたプラズマを右手で刀のように掴んで、前方に向かってイアイギリをした。こんな感じでしょうか? その結果プラズマの刃がソニックブームのように前方の戦車隊を襲い、まさしく一刀両断にかけた……私の頭ではこれが精一杯です。すみません。大会後ジパングチームからロボットの事も含め聞いてみたい思います。さて、これで障害の無くなった二チームは続々と、前を走るラスィーヤ、セリカの後を追うように進んでいきます。どうやら先程大活躍したロボットはここに置いていくようですね。もう使えないんでしょうか? さあ、ここで強力兵器を使わされたジパングは一体どう巻き返していくのか、今後の展開に注目していきましょう」
「まだ抜けない、中々抜かしてはくれません。ローラシア連合が誇る陸路のマイスター。フォーミュラ軍団が、メリケン合衆国の四台の新型装甲車の前に苦戦しています。フォーミュラ軍団といえば、ローラシア連合の過去四度の優勝の立役者。優勝した大会は全て、フォーミュラ軍団が陸路で他の国をぶっちぎりそのまま優勝。といった、他国から最も恐れられている陸路のスペシャリスト軍団であります。その軍団が今は全く手も足も出ない状況です。なぜなら、メリケンの新型装甲車が全てブロックしているからです。四台の新型装甲車が一定の距離を保ちながらあらゆる攻撃に臨機応変に対応しています。銃は全く効かず、ミサイルは当たる直前に撃ち落され、それならと、自慢のテクニックで新型装甲車の間をすり抜けようとしても、赤外線のような光が四台の間に張り巡らされていて、そこに触れると途端にマシンが制御不能になり、そのままリタイアしてしまいます。もう十台以上は被害にあっています。堅いです。まるでダイヤモンドのように堅い守りです。ただ、もうローラシア連合は弱点に気付いているみたいですね。新型装甲車の屋根についてるパラボラアンテナです。あれを先程から狙っているようです。おそらく、あれが各新型装甲車の赤外線のような光を発生し、つなげる役目をしていると思われます。だが、崩せません。メリケンの守りが崩れません。ローラシアは一台に絞って集中砲火を浴びせているのですが、もう少しで押し込めるというところで、クルクルと新型装甲車が入れ替わり、決定的な攻撃を躱しています。ナイスコンビネーションです。さあ、フォーミュラ軍団がもたついている間にも、メリケン合衆国チームのマシン集団は早くもハリマに差し掛かっています。今回のメリケンチームは極力戦闘を避けるスピード重視の作戦のようです。まるでフォーミュラ軍団のお株を奪うかのような作戦です。たいして、ローラシア連合チームはまだビッチュウです。大分差がつきました。ローラシア連合は早くダイヤモンドの守りを崩したいところ」
「ようやく、一台のパラボラアンテナの破壊に成功しました。これで赤外線のような光の範囲が大分狭まりました。ローラシア連合俄然やる気が上がります。このまま全て破壊できるか? やりました。三台めのパラボラアンテナを破壊したところで、赤外線のような光の脅威はなくなりました。後は華麗に新型装甲車を抜き去るだけです。さあ、続々とフォーミュラ軍団が新型装甲車の間をすり抜けていってます。このままメリケンチームのマシン集団に追いつける事ができるか? あれ、ちょっとおかしいですよ。フォーミュラ軍団のマシンのスピードが徐々に落ちていってるようです。マシントラブルでしょうか? ただ、一台だけではなく、全台となるとただのマシントラブルではなさそうです。あーっと、苦労してようやく抜き去った新型装甲車がすぐ後ろまで迫ってきました。まるで磁石にくっつく砂鉄のように、フォーミュラ軍団のマシンが新型装甲車に吸い寄せられていきます。一体どうゆう……あっ、皆さんあれを見てください。先程破壊されたパラボラアンテナの位置にまた新たな別の種類のアンテナが伸びています。あれがこの一連の行動を引き起こしているのでしょうか? そんな事をいっている内にローラシア連合チームのマシンが全て、四台の新型装甲車の周りに引き寄せられました。また振り出しか? ローラシア連合、再び新しく伸びたアンテナを破壊したいところ。あーっと、地面が、道路が陥没していきます。四台の新型装甲車を中心に周りの道路が陥没しています。それに、あの中にいる全てのマシンが悲鳴のように軋んだ音を立てて潰れていきます。まるであそこだけ何十倍もの重力がかかっているかのようです。これじゃあ、ひとたまりもありません。ローラシア連合チーム、陸路でまさかのリタイアとなりました。メリケン合衆国チーム、たった四台のマシンでローラシア連合を落しました。さすがメリケン。さすが王者は伊達じゃないというところを見せつけました。さあ、この王者を倒せるチームはあるのか? 今後の展開に期待していきましょう」
「さあ、ラスィーヤ連邦チームは、一足先にセトオオハシルートを通って本州へと到達しました。残りの三チームはナルトアカシルートを通って本州を目指すようです。セリカ、ジパング、ブリテンアウストラリスの順でレースが進んでいます。さあ、三チームともアワジに入りました。あーっと、ジパングチームどうしたのでしょうか? ブリテンアウストラリスチームに前を譲るような形で突如スーピドを緩めました。一体何を考えているのか? さあ、ジパングチームがそんな事をしている内にセリカチームの集団はアカシオオハシに差し掛かりました。続いて、ブリテンアウストラリスチームが後につづこうというところ。ジパングチームは完全に動きを止めています。さあ、セリカチーム、橋の中腹まできました。本州までもう少しといったところ。あーっと、地震でしょうか? アカシオオハシが揺れています。物凄い勢いで揺れてます。でも、他の場所は揺れていません。アカシオオハシだけが揺れています。あーっと、ここで橋の表面に亀裂が走り始めました。これはいけません。セリカチームはまだ橋の終盤というところ。あーっと、ここで橋が崩れました。崩落です。今アカシオオハシがセトナイカイに沈んでいきます。なんということでしょう、セリカチームがアカシオオハシと共ににセトナイカイに飲み込まれてしまいました。これでは万事休す。セリカ人民共和国チーム、ここでリタイアとなりました。橋の老朽化の影響がここできていたのか、開催国ジパングが何か仕掛けたのか分かりませんが、まあおそらく後者でしょうが、不運にも一チームが脱落してしまいました。ブリテンアウストラリスチームは九死に一生。ジパングチームの動きを警戒してか、なんとか巻き込まれずに済みました。しかし、ジパングチームは一体どうするのでしょうか? アカシオオハシが落ちては本州に到達できません。かといってセトオオハシまで引き返すとなると優勝は遠ざかってしまいます。何か策はあるのか? あーっと、皆さん見て下さい。海が、海が浮き上がってきます。いや違います。道路が海から出てきました。なんと新しく道ができました。ジパングチームがちょうど止まっていたあたりからキイでしょうか? 本州のキイにつながっているようです。さすが開催国。やってくれます。秘密兵器のウルトラCいや、ウルトラZ炸裂といったところか。さあ、今、ジパングチームが動き出しました。アワジからキイへと、本州につながる新しくできた橋を渡っていきます。さあ、これを見てか、ブリテンアウストラリスチーム急いで引き返します」
「さあ、速い。ブリテンアウストラリスチーム、ぐんぐんジパングチームに迫っていきます。このままではすぐに追いつきそうです。おーっとここでジパングチーム。先程戦ったラスィーヤ、セリカチームのように、生き残っていた戦車を全台、橋の中腹に配置しました。だがこの数ではすぐに突破されてしまいそうです。ちょっとでも時間を稼ぎたいということか? さあ、ブリテンアウストラリスチームとぶつかります。やはり、物量では敵いません。一台ずつ撃破されていきます。さあ、とうとう残り一台となりました。あーっと、ここで橋が落ちました。新しくできた橋がアワジ方面から一ブロックづつ落ちていきます。まるで空にかかる虹が少しづつ消えていくかのように、橋が海に吸い込まれていきます。それがどんどんブリテンアウストラリスチームの後方に近づいてきました。ブリテンアウストラリスチーム、早く橋を渡りきりたいところ。さあ、ようやく最後の一台を片付けました。後は橋を渡りきるだけ。しかし、橋の落ちる勢いは収まってはいません。さあ、どうなる。今、ジパングチーム、全台渡りきりました。対してブリテンアウストラリスチーム。逃げています。必死で迫りくる猛威から逃げています。あーっと、つかまりました。最後方を走っていたマシンが海に落ちていきます。さあ、浸食が始まりました。橋の終わりはまだ先。ブリテンアウストラリス生き残れるか? 全台エンジンフルスロットル。走る、走る、逃げる、逃げる、進む、進む。あーっと、集団の後方から一台、また一台と姿が消えていきます。ブリテンアウストラリスチーム、ここで優勝の夢は潰えてしまうのか?」
「さあ、今、橋が全て落ち切りました。先頭のブリテンアウストラリスチームのマシンが後ろを確認します。いません誰もいません。なんと、一台だけ残して全台海の中に引き込まれてしまいました。唖然としています。あーっと、生き残った一台も待機していたジパングチームにハチの巣にされてしまいました。ああ、無情。ここでブリテンアウストラリス連合王国チームリタイアとなりました。開催国ジパング、開催国の意地を見せました。掟破りの逆落としならぬ橋落し。それを二回も決めました。さあ、優勝は残り三チームに絞られました。絶対王者のメリケン合衆国か? 極寒の地で頑張る国民のためにも絶対負けられないラスィーヤ連邦か? それとも地の利を生かし悲願の初優勝を目指す開催国ジパングか? 勝負は最後のランへともつれ込みそうです」
「日がどんどん暮れてきました。樹海の攻防は夜戦になりそうです。一体どのチームが夜のサバイバルを制し一番速くフジヤマのゴールテープを切るのでしょうか。勝負は大詰め、ますます目が離せません。では、またCMです」
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