『英雄冒険記』≪地球≫から2年ぶりに故郷に帰還したら1000年が過ぎていた!?

光山都

第0章~現代世界『地球』編

0-1:現・・・夢誘うは誰を求めか

0章タイトル…I come back to the hometown at time when I am to me=「僕が俺になる時故郷に戻る」


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“――!”


またこの夢か、と夢の中なのに溜め息を付く僕。

何故これが夢かと分かるのか、そして溜め息を付きたくなるのか?

それは数週間前から、この夢をいつも見ているからだ。

夢の内容もいつも同じだ。

暗闇の中幾つもの輝きが満ちている空間。まるで宇宙の様だなと思う。そして僕はその空間を漂っている。そして漂っていると夢の中、誰とも知れない声が僕に呼びかけて来る。

そんな内容だ。


唯今日は少し違う様だ。

と言うより数日前からか、段々と僕を呼ぶ声が、少しずつ聴き取れるようになっていた。


“――ル ――ルゴ―!”

“アル―― ふたた―― ひつ―う――!”


(はぁ…またこの夢……いい加減迷惑なんだけどな…聴き取れるようになってきたと言っても、何を僕に伝えたいのか、解らない。この声の主が女の人な気がすると思うんだけど…)


…聞こえてくる声の感じから女性だと思われるその声は、初めは聴き取り難く一言くらい聞き取れる程だったが、夢を見る期間が増える毎につれ聴き取れる部分が多くなっていた。

綺麗な声だなと思う僕。

本当に不思議な夢だと思う。

それはこの夢の声が、聞き取れる部分が多くなるにつれ、なぜか懐かしいと僕は感じていたからだ。

…それと同時に声に対してイライラとした感情がするのも感じている。なんだかいつもからかわれている。そんな感じの…


こんな綺麗な声を僕は知らないはずなのに。

まあ、夢なんてそんなものかな。

そんな風に思っていると、夢の主である子とは違う女の子の声が僕を呼んでいるようだった。


(…この声は、優菜か……なら、この夢もここまでだな…)


これはここ2年間、毎日聞いている僕を起こしてくれるあいつの声だろうと…

夢から覚める前触れと言える声に僕の意識も夢から浮上しようとした時、今までで一番はっきりとした夢の声が聞こえた。


“さあ― アル  ト 迎えに行くよ ――――“


その言葉に疑問に思う間もなく、僕は夢から目覚めるのだった。



「アルトぉ!朝だよぉ~もう朝だよぉ!起きなさぁあい!」

「んん…優菜?」

「あっ!やっと起きたわ、おはよう、アルト♪」


夢から醒め、眼を薄らと開けていく。そして僕を起してくれる、女の子に寝惚け気味に視線を向けると満面の笑顔で挨拶してくる少女。

うん、僕も起してもらっているのだから文句はない。文句はないのだが……何故かこの少女、優菜は僕の上に、と言うより僕のお腹の辺りに跨っている。


「……起こしてくれるのはいいけどぉ、いい加減、僕の上に乗って起こすのは止めてくれないか、優菜?」


僕に跨りながら起こしてくれているこの女の子の名前は瀬々羅優菜せせらゆうなと言う。

2年前、僕は、ある保護施設の前に気を失って倒れていた。倒れていた僕を見つけ介抱してくれたのが優菜だ。同年代で、少し吊り目気味なのだが優しい瞳をしていて、その長く綺麗な髪をポニーテールしていて活発なイメージを抱かせる。

僕に跨っている優菜は既に、僕達が現在通っている学園の制服を着ている。その制服から見える手足は同年代の娘達よりもすらっとしており胸もそれなりにあると本人も言っておりモデルと言ってもよいとプロポーションの持ち主である。

そんな優菜は頬を膨らませる様に僕に楽しそうに文句を言った。


「なによぉ、アルトがいつもなかなか起きないのが悪いのでしょ…全く2年経っても変わらないね、アルトは♪」

「はいはい、僕が悪かったよ…起きて着替えるから部屋というか、僕からどいてくれないか?」


僕は起きたばかりで寝間着のままだ。優菜が学園の制服を着ている通り、今日も学園の登校日だ。なので、僕も起きて学園の制服に着替えないといけない。その為には、ベッド上に、僕に跨っている優菜がいては起きるに起きられない。


「よっと!…二度寝したりしちゃ駄目だよ!食堂で待っているからねぇ♪」


僕から退いた優菜はそう言うと部屋から出て行った。…「やれやれ、優菜はもっと女の子の自覚を…」と思いながら起きると優菜が用意してくれていたと思われる制服に苦笑しつつ着替え始めた。


++++


「おはよう~アルト君、相も変わらずギリギリねぇ~優菜ちゃん、待っていてくれてるわよ~」


制服に着替えて部屋から出ると食堂のある1階に下りた。僕の部屋は2階にある。

下りて食堂の入り口の前でこの学生寮の管理人である寮母さんが話しかけてきた。

因みに僕は学園の寮で生活して通っている。勿論優菜もである。

眠そうにしつつ僕は話し掛けて来た寮母さんに挨拶した。


「おはようございます。寮母さん。…すみません。また夢見が悪くて」

「そう、確かに少し顔色が優れない様ね…最近多いわね、今後も続くようなら御医者様に見てもらったほうがいいわよ。……朝食軽く作ったのにしておいた正解だったわね」



僕は「ありがとう」と心配そうな寮母さんに感謝の言葉を言うと、食堂に入っていった。

「遅いぞぉ~」と待ってくれていた優菜と軽く朝食を済ませた後、僕達は一緒に登校し始めた。


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