第162話「バハムート+キラープラント=」
翌日。
バハムートを栽培した場所の様子を見に行くと、そこから小さな苗が土の間から顔を見せていた。
おお! うまくいったのか!?
いやいや、まだ苗の段階。
この状態では、ここから生まれる魔物がバハムートを宿したキラープラントか。あるいはただのキラープラントであるかは判別ができない。
オレははやる気持ちを抑えながら、もうしばらく様子を見ることととする。
一方で、そんなオレの後ろから苗が出ていたのを見たフェリドさんは「せ、成功したのか!? ミーメは蘇るのか、キョウ君!?」とオレに詰め寄る始末。
「いやいや、現状だとまだわからないのでもうしばらく様子を見ましょう。フェリドさん」
となんとか彼を落ち着かせる。
とは言え、オレ自身うまくいっているかどうかは半信半疑。
苗の形から以前育てたキラープラントと、それほど変わりはないと思うが成長後、実の部分に卵のようなものが生まれ、そこからバハムートが生まれる可能性はあるかもしれないので、やはり最低でもあと一週間は経過を見守るしかない。
すでに栽培が上手くいっている以上、出来ることと言えば水をまき、土に栄養を送るといった地味なことのみ。
我ながら、やきもきしながらも目の前の魔物の栽培の様子を観察していくしかなかった。
「キョウ様。そのように焦っても仕方ありませんわ。ここは料理でも食べながら落ち着いてはいかがでしょうか?」
そう言って見ると庭先に作っていた木造のテーブルの上にいつの間にかフィティスがいくつかの料理を並べ、苗の様子を見ていたオレとフェリドに声を掛ける。
「お、おお、そうだな。すまない。フィティス」
フィティスからの誘いにオレもフェリドもそう言えば朝食を取っていないことに気づき、そのままテーブルへと近づく。
そこには実に色とりどりの料理が用意されていた。
「おお、今日の料理は随分気合入っているな。フィティス」
テーブルの中心に置かれたのはハムや玉子、キャベツなど様々な具合を挟んだサンドイッチがたくさん。
その周りにはコカトリスの唐揚げや、クラーケンの天ぷら、エントタケの汁物。
更にデザートにマシュマロエントから取れたマシュマロに、チョコエントから取れたチョコをたくさんかけたマシュマロチョコ。
他にもクッキーに魔物から取れた甘い蜜、実をかけたものなど、うちで採れる魔物をふんだんに使ったフィティスお手製の料理の数々であった。
「お、驚いたな。オレもいろいろな料理を食べてきたものだが、君はひょっとして料理系の勇者かい?」
驚くフェリドに対し、フィティスは胸を張って「ええ、こう見えてグルメ勇者の称号を持つ者ですから」と頷く。
さすがにその称号は伊達ではなく、相変わらずフィティスの料理の腕は素晴らしい。
どれも満足のいく味の数々であり、その旨さに夢中になり、オレもフェリドも一瞬、栽培のことを忘れながら、楽しい昼食を取るのであった。
ちなみに一番、フィティスの料理にがっついていたのはルーナだったりした。
◇ ◇ ◇
それから数日間。
オレとフェリドさんは共に庭に植えたバハムートの苗の様子が気になり、毎日と言っていいほど様子を見に行った。
しかし、そんなオレ達の心配をよそに苗はドンドンその大きさを増していき、四日目には成熟したキラープラントの大きさまで育った。
普通であれば、ここでキラープラントの栽培はほぼ完了だが、今回はあくまでもバハムートの栽培。
そして、そのキラープラントの実に当たる部分が今までと異なり果実ではなく、真っ白な卵のようなものを実らせ始めた。
おお、これは成功か!? とその日は喜んだものの。
まだ中でバハムートがちゃんと育っているかは未知数。
あまり大喜びした後、それがぬか喜びになってはいけないと表面上は「うまくいってます!」とフェリドさんに言いつつ、それからしばらく更に様子を観察することにした。
ちなみに普通にキラープラントを栽培したら凶暴化して暴れるんじゃないか? と心配している皆さんもいるかもですが、ご安心を。
これまで様々な魔物を栽培していき、複合栽培や異なる砂漠での地での栽培。
そうした諸々の栽培を経て、オレの魔物栽培のスキルもレベルが上がり、本来は凶暴なはずの魔物を温和な性質として栽培することにも成功しております。
これもいわゆる複合栽培より派生したオレの魔物栽培の新たな発展。
というよりも、これが本来オレが持つ魔物栽培の能力なのだろう。
この異世界に転移したての頃はオレの魔物栽培のスキルが未熟でキラープラントなどの凶暴な魔物はそのままの性質で生まれていたのだろう。
まあ、何にしても今回のSSランク魔物の栽培もうまくいかせる!
その決意を胸にキラープラントに実った白い卵の様子を観察しながら、更に数日が過ぎていった。
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