第39話「大料理大会二回戦決着」

「これがオレの料理です」


「こ、これは……!?」


オレが出した料理を前にグルメマスターを含める審査員達は完全に固まる。

なぜならそれは真っ白なご飯にルーをかけ、更にその上に乗っていたのは――魔物達から採れた甘い果実。

いわゆるフルーツの盛り合わせであった。


「ば、バカにしてるのか君は――!?」


その料理を見るや否やシンが激怒する。

いやまあ、そりゃそうだろうな。

いくらなんでも斬新すぎるとオレでも思う。

最初に見たとき、オレでも引いたもんこれ。


けれど、冗談ではなくマジ。

とりあえずは騙されたと思って一口食べて欲しい。

そんなオレの願いに対し、真っ先に動いたのはグルメマスターであった。


ご飯、ルー、そしてクイーンパインプラから採れたパイナップル。イチゴ亀から採れたイチゴなど、様々なフルーツが入ったそれをスプーンに入れ、口の中に入れる。


「ぐ、グルメマスター!?」


その様に驚く他の審査員達。

しかし、次の瞬間、グルメマスターから出た一言はまさに予想外。


「――旨い!!」


その一言と共に会場は騒然。


「お、おい! あんなフルーツが入ったカレー旨いってマジか!?」

「いや、そんなはずねぇだろう!」

「で、でも、グルメマスターが嘘を言うはずが……」


困惑する会場の人々。司会ですら、どうすればいいのかオロオロしており。

次々とオレが出したカレーを食べるグルメマスターに触発されるように周りの審査員達もそれを食べる。そして――


「こ、これは!」


「た、確かに旨い! し、信じられん!!」


と絶賛の嵐。

それをきっかけに会場中の雰囲気が一変した。


「カレーと言えば、辛い食べ物であり、実際先ほどのシン選手のカレーも辛さがあった。それが旨さの一つであるが、これはそれとはまた別。まろやかな旨さ。本来ならゲテモノとも思えるフルーツの混ざり合いが、全く邪魔をしていない。むしろデザートのような甘さがカレー全体に染み込み、しかしそれが旨さを引き立てる!」


「これはそうか……! キラープラントの水を下地にしているため、甘さがまったく抵抗ないのだ! フルーツの旨さと、キラープラントの実の甘さ。それらがスパイスと調和して、これまでにないまったく新しいカレーを作り上げている!!」


「カレーにフルーツ! ただの奇抜なだけのゲテモノかと思っていたが、そうではない! 組み合わせとしてちゃんと調和可能な料理となっておる!」


「――見事なり」


「こ、これはー! まさかの審査員、グルメマスター全員が絶賛!! キョウ選手の意外な料理! フルーツカレー! まさかの大穴だー!!」


審査員達の絶賛とグルメマスターの一言に会場は沸き立つ。

隣ではシンが信じられないといった顔をしている。


「では、審査を開始するが……おそらくするまでもないな」


「……ですな。グルメマスター」


次の瞬間、グルメマスターの合図と共に開かれた審査。

そこには『キョウ:4』『シン:1』の評価がくだされていた。


それを見た瞬間、司会の一言が会場中を駆け巡る。


「こ、これは―――!! 前回の優勝者シン選手! まさかの大敗!! キョウ選手のフルーツカレー!! 完全勝利です――!!」


「う、嘘だ!! あ、ありえない!! そんなフルーツ入れただけのカレーが僕の生み出した完璧なスパイスのカレーに勝つなんてありえないだろう!! 絶対僕のカレーの方が美味しい!!」


しかし、その結果に不平不満を叫ぶシン。

それに対し、グルメマスターはどこか呆れたようにため息をつく。


「……シンよ。お主はこの大会の趣旨がなんであったか、忘れたのか?」


「はあ? 食の開拓でしょう?」


「では、なぜ去年と同じ料理をお主は出したのじゃ」


「同じじゃないよ! スパイスちょっと変えてたよ! 去年はカラカラナツメグの実だったけど、今年はトゲトゲツメの種に、カレクレの実、更にはジャスミンフラワーの葉も入れたんだよ! 去年より僕のカレーは確実に美味しく、完璧になっている! 前のカレーよりも遥かに進化し、味や品質の最高に高めた。これのどこが食の開拓じゃないっていうのさ!?」


そう言ってグルメマスターに抗議するシンであったが、審査員達は難しい顔をする。


「……なるほど。既存の料理の味を更に高める。確かにそれも開拓の一種。だが、それは安全策に過ぎない」


「! そ、それは……」


「お主が去年優勝できたのはカレーという画期的で新しい料理を生み出したからこそ。私はそれを評価していた。そして、今回、そんなお主の画期的料理をアレンジ、更なる可能性を見せたのはそちらのキョウであった。お主もまたカサリナと同様に頂点を極めることで自惚れ、新たな挑戦を忘れたようであったな」


その一言にシンは膝をおる。

まあ、確かにミナちゃんとかさらってる時点で新しい料理の開発よりも、それ以外を優先させてた節があったからな。


何度も言うが単純な旨さの勝負なら分からなかったかもしれない。

けれど、結果は結果。

それを表明するように司会者の一言がこの場に響く


「それでは、大料理大会二回戦勝者は――キョウ選手!」

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