第22話「バハネロを育てよう」

さーて、今日は久しぶりの魔物栽培だ。なにを作ろうかなー。

一応候補はいくつかあって、たけのこ型の魔物だが中身はなぜかカカオが詰まったタケカカオ。

さつまいものようにたくさんの芋が育つが、中身は魔術道具の元となる危険な物質がたくさん詰まった通称爆弾芋。ちなみに下手に扱って落とすと爆発する。

あとはいっそのことコカトリスのようになにか魔物を捕まえてここで育てようかとも思ってる。

うわ、完全に魔物ランドになりそう。


そんなこんなでなに作ろうかなーと扉の外に出ると、そこには巨大な鬼がいました。


……。

え、えーと、なにこれ。やばい奴とエンカウントしたよ。

これどう見ても物語後半で出てくるやつだろう。肌とかめっちゃ赤いし、めっちゃ巨大だし、めっちゃ角生えて怖いし。

てかマジでなんでこんなのがうちの前にいるの?!


「オーガ! なぜこんなところに?! キョウ様下がってください!」


後ろからフィティスが慌ててオレの方へと駆け出すがそれよりも早く目の前に立つオーガの手がオレの手に触れる。


「どうも初めまして。あなたが有名な魔物栽培師さんでしょうか? 実はお願いがあってきました」


予想以上に紳士だった。






「実はお願いというのは他でもありません。最近私たちの里で魔物の栽培がうまくいかず困っていたのです。そこであなたの話を聞き、あなたならどうにかできると思い訪れた次第です」


ええと、つまり要約するとこうだ。

この人達(?)はオーガの里というところで暮らして、魔物を栽培しそれで自給自足をしていたと。

ところが最近になってなぜか魔物が急に育たなくなった。

で、魔物栽培師として有名なオレに頼みに来たと。というか魔物栽培師ってなんだよ。いつからそんな称号を手に入れたんだよ。


「なるほど、事情はわかりました」


けど、これ受けていいの。だって相手魔物だよ?

魔物の肩持ったってあとあと人間側から迫害されないかなー。


「オーガが自給自足とは珍しいですね。あなた方は人間から食料や生活品など奪うはずでは?」


「無論そうしたオーガ達もいますが、我々は無用な争いを好みません。食料も栽培している魔物と動物たちを狩るくらいです」


うーん、それが本当ならまあ別にいいかなー。

というか単純にオレを頼ってきてくれたのはなんか嬉しいし。


「わかりました。とりあえずやるだけはやってみますので」


「本当ですか。ありがとうございます。さすがは魔物栽培師殿。我ら魔物のよき理解者ですな」


ところでその魔物栽培師って噂は一体どこから流れたの?


「だろ。この兄ちゃんはいずれ魔物界に革命をもたらすぜ」


とドヤ顔のジャックがオレの頭の上に。お前か。






「見事にオーガだ」


というわけでオーガの村について一言。感想はそれです。

うむ、あっちには鶏という名のバジリスクを捕らえて加工しようしている職人オーガが。

あっちでは洗濯物を干してる主婦オーガが。

奥の公園では遊んでる子オーガと、それを見守る老人オーガが。


「それで畑というのはどちらでしょうか?」


魔物が育ててるという畑が気になって一緒に同行を申し出たフィティス。

彼女は早速、その畑が気になるのか案内を頼む。

それに促されるままオーガが畑の場所へと案内してくれた。


「これはもしや……ハバネロか?」


そこにあったのはお菓子の暴君ハバネロを思わせる邪悪な顔のハバネロがたくさん実った木がいくつか。

が、傍目にもわかるようになんか実ったハバネロ達の元気がない。

というか明らかにやつれてるし、酷い奴になると「ぜーぜー」言ってる。

これマジで大丈夫なのか? いや、症状の前に食えるのかって話で。


「バハネロ。この地方で見かける魔物ですが確かに随分弱っていますね」


バハネロ? ほぼまんまだな。

まあ、それはいいや。


「で、こいつらはどうやって栽培してるんです?」


「バハネロは実を切るとそこにたくさんの種が詰まっています。これらを地面に撒いてうまくいけばそのうちのひとつが木になります」


と言って取ったバハネロを目の前で真っ二つにする。その際バハネロが「ぎゃー!」とか喚いていたがオレはなにも聞いてない。


「なるほど、栽培方法はシンプルだな」


けど、実ったやつを見るとどれもくたびれてる。土が合わないとか?

けれど見る限りここらへんの土はかなりいい土で問題があるようには見えない。


「ここではこのバハネロ以外になにを育ててるんですか?」


「いえ、なにも。これだけですが」


はい?


「えっと、この一種類のみ?」


「はい」


「他にはなにも?」


「はい、我々辛いものが好きなので」


「……もしかして、いままでずっとこの同じ場所で育ててません?」


「ええ、それがなにか?」


あ、これわかったかも原因。しかもあっさり。

これあれだ、間違いなく。


「オーガさん」


オレは彼の腕にぽんと手を置く。


「ほかの魔物(野菜)も育てましょう」





というわけで原因はあれです。連作です。

そりゃ同じ場所で延々と同じ野菜もとい魔物育ててりゃ連作障害も生まれるわ。

そんなわけで彼らにはキラープラント、デビルキャロット、モンキーバナナをいろんな魔物の栽培を教えた。

一度育てた場所では同じ魔物を植えず、別の魔物を植えるよう指導した。

そのかいあってかひと月後には別の場所で育てたバハネロは以前のように元気になったと報告をもらった。


ちなみにお礼としてこちらでもバハネロの種をもらって育てました。

火属性持ちの激辛でした!!

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