ミステリー・スコッパー

津々浦 麗良

プロローグ

「投稿サイト『カクヨム』? そんなのもあるのか」


 俺は高校生探偵、<金田かねだ はじめ>。

 幼馴染で同級生の<もり 乱馬らんま>と遊園地へ遊びに行って、黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した。

 取引を見るのに夢中になっていた俺は、 背後から近づいてくるもう一人の仲間に気づかなかった。

 俺はその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら……、


 


 金田一が生きているとやつらにばれたらまた命を狙われ、周りの人間にも危害が及ぶ。

 <緒方おがた 博士ひろし>の助言で正体を隠すことにした俺は、 乱馬に名前を聞かれて、とっさに<淀川よどがわ コーナン>と名乗り、 やつらの情報をつかむ為に、 父親が探偵をやっている乱馬の家に転がり込んだ。

  たった一つの真実見抜く。見た目はアフロ、頭脳は大人。

 その名は、名探偵コーナン!!





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「って、これはダメだろ」

そう言って我が親友である乱馬らんまは、小説の1ページ目に目を通し、バッサリと切り捨てた。


「いやいや、まだこれ冒頭だから。こっから面白くなるし」

「だってこれ、モロ『名探偵コ〇ン』のパクリじゃん。いくら話が思いつかないからって、これは無いわ」

「違うちがう、これはオマージュ! あくまでもオマージュだから。ほら、ちゃんと変わってるとこもあるし」

「そういう、オマージュとかリスペクトとか言っとけばOKみたいな根性してるから、いつまで経っても書けないんだろうが」


 かくして、オレの渾身の力作は、最初の1ページの段階で、ボツとなってしまったのであった。





        ♦                  ♦          



 オレは(自称)高校生探偵(志望)の<金田 一>。

 といっても、現代の世の中で探偵なんてもんは、せいぜい不倫や浮気の調査とか、迷子になった犬の捜索とか、そんな仕事しか行わない。これは実際に探偵をやっている、乱馬の父から聞いた話だ。

 難解な謎と凶悪な犯人に対して、己の頭脳と推理を武器に戦うという、小さい頃ミステリー小説を読んで生まれた憧れは、現実という名の壁で微塵に潰されてしまっている。


 ならば、かつて自分がわくわくしたように、小説の中で探偵として活躍させたらいいのではないか?

 そう思いたったオレはすぐさまペンをとり、三日三晩徹夜して小説を書きあげ、意気揚々と乱馬に見せた。

 そして、その結果が冒頭の会話コレだった。



「――――まあ、他にもいろいろ突っ込みたいところは山ほどあるが、ひとまずはじめはもっと小説を読んで、参考にするべきだ」

「なにッ? 言っちゃなんだが、オレは結構ミステリーを読んできたぞ?」

「じゃあ適当に何冊か挙げてみろよ」

「えーっと、『金〇一少年』『名探偵〇ナン』『脳噛ネ〇ロ』『Q.〇.D.』、あと……」

「最近小説は何か読んだか?」

「小説? そんなのトリックさえ思いつけば、何とでもなるし。ほら、オレ古典名作の方が好きだし~……」


 そう口を濁したオレに対し、乱馬は溜息をついてこう言った。

「要は、小説を読まなきゃ、どんな風に書けばいいかも分からんだろうが」

 乱馬はスマートフォンを取り出し、あるページを開いてオレに見せてくる。


「今なら、こんなサイトがある。これを見て、まずは勉強してみろよ。さらにここなら、お前の作品も見てもらえるぞ?」




 こうしてオレは、『カクヨム』と出会ったのだった。

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