第136話 ちびっこ精霊と僕。
「シェ、シェ、シェイドさん!?」
「む、闇の精霊シェイドである」
シェイドさんがちっちゃくなっちゃったよ!自己申告してたけどね!?縮むって!それにしたってびっくりだよー!
「ふむ、やはり弱体化したであるな」
封印石の中に居た青年を幼くしたらこんな感じという幼児と少年の間くらいに縮んだシェイドさんは、紅葉みたいな…だけどずっとちっちゃい手で腰より長い髪を引っ張ったり布の服をたくしあげて調節したりしている。僕の目の前にふわふわ浮かびながら。
石だって僕より小さい子どもくらいの大きさだったのに最早手のひらサイズの幼児だ。しかし本人は全くなんともないらしく落ち着いて状態を確かめては頷いているので僕もだんだん落ち着いてきた。
「…では行くか」
「行くってどこへ」
「このホクオウに封印されしはわしだけである。故に他の封印に移動せねば…そうであるな、一番近いのは水のであるかな…すると、王都、というのであるか?」
ちっちゃい幼児がしかつめらしい言葉づかいしているのはなんか可愛い。
「水の、精霊?」
近場の精霊から解放しようって事らしい。でもそれなら最終的に僕は王都に戻る予定で、先に行っちゃったら他のことは放って先走ってしまいそうだ。だったら王都から遠い方から進めたい。
そう言うとなるほどと納得してもらえた。
「では一番遠い地のからであるな」
遠くから順にすると地風火水となるようだ。闇の精霊がいるんなら光の精霊もいると思うけどそちらについては言及がなかった。
では行こう、とシェイドさんが手を振ってくるりと回る。布の服がひらめくのに合わせて魔言が踊るように飛び出て光り瞬く。蝶々みたいな魔言が群れになって視界を覆い尽くしたと思ったらくらりと目眩がして目を閉じた。
「少々通り過ぎたであるな、やはり微調整は難しいようである…」
シェイドさんの声にそっと瞼を上げたら見覚えのある場所だった。
「え…ここ、ナンオウ?」
どうやら精霊は長距離転移ができるらしい。シェイドさん曰く今の姿だと多少目的地から座標ズレが出るみたいだけど。空間転移は担当が違うんじゃと思ったけど属性精霊がいないんでみんな使うと後から知った。
便利だなーと思っていたら浮いてたシェイドさんがふらふらと落ちてきて慌てて手のひらに乗せる。
「どうしたのシェイドさん!?」
「……疲れた、である…」
「えええ」
体が縮んで弱体化したため魔力容量も減ってしまったのだそうで、長距離転移は無茶だった模様。
このあとめちゃめちゃ魔力込めた食事を作らされました。大気中に漂う魔力で活動力は得ているけど美味しい魔力で作った料理は精霊力の回復ができるのだそうな。うっかり甘いお菓子を渡したらことのほか喜び気に入ったようで、こまめに作って食べさせないと拗ねるようになっちゃいました…。
というかこの調子で精霊が増えるとなるともっと大量にお菓子作ってストックしないと!ちびっこなのに胃の容量がデカイのか!いやちびっこだから燃費悪いのか!
…幼児相手に僕より小さいとか、ヨロコンデナイヨ?ウン。
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