第88話 アサチュンデハナイ。

 朝ぼらけの夜空が白んで来た頃やっと僕はぽっかり目を開けた。

 まだはっきりしない頭で昨夜の事を思い出す。

 温泉に入ってカインさんのマッサージが気持ちよくて目を閉じて…、あーちょっと長く入りすぎて湯中ゆあたりしたんだ多分。

 迷惑…いや心配かけちゃった。

 なんて静かに反省していたんだけど今の体勢がなんとなく疑問になる。


 …………、ん?あるぇ………?

 なんか、僕、すーすーするな、けどほんのりあったかく、てー……………?


「…………………ッ!!」

 なんで僕全裸で寝て、あああお風呂からそのまま運ばれたっていうこと!?

 あわわわわヽ(´Д`;)ノ

 しかもなんかこの胴に巻き付いてるのってカインさんの腕ですよねー!?

 あばばばば( ̄▽ ̄;)

 ナニコノジョウキョウ!!!

~~~~~~~~~ヒイィーーーッッッ!」

 頭の中で金切声あげて両手で口押さえてパニクってたらもふっとモリーが体当たりしてきた。

「ヂュッヂュッ、主よどこか具合の悪いところはないかの?」

「…っ、あ、だだだだいじょぶうんだいじょーぶだ、よ、うん…!」

 言えない!恥ずかしくて言えない!

 朝のアレがおっきしてたけどビックリして萎えたなんて秘密ー!

「あ、えと、僕昨日寝ちゃってから…」

「ヂュー…護衛どのが運んできたんやけど主がしがみついておったからそのままで寝たんじゃの」

相変わらず妙な関西弁もどきまじりのモリーの話し方にぐるぐるしてた気持ちがちょっと落ち着く。

「あー、やっぱり…」


 だから僕全裸だしカインさんも浴衣っぽい寝間着が半端はんぱに引っ掛かった乱れた状態で、…たぶん僕が着てる途中に抱きついてしまったからカインさんもそのまま寝て。

 カインさんはまだ寝てるし空はまだ明るくなりはじめたくらいで朝には早い。

 でも目が冴えちゃった僕は起きようかなあと身動ぎする。

「ん…」

「あ、起こしちゃっ…カイン、さん?」

 うっすら目を開けたカインさんだったけどそっと声をかけたらまた目を閉じてぎゅっと抱き締められてしまう。

 カインさんはぼんやりして気だるげな流し目を寄越し。

「………まだ、早いだろ、寝とけ……」

「…んッ、!?」

 鎖骨の下に唇を押し付けられてピリッとしたと思ったらまた寝息が聞こえはじめた。

 何、今の?

 か、カインさんが色っぽかったよ。寝起きだからかな…。

 しかもなんかききききすきすき、す?…されちゃったよおおおお!?

 今のキス、だったよね?ね!?

 抱き込まれて動けないけど内心で悶える。

 うああああ恥ずかしい!でも、嫌じゃなかった…。

 やっぱり僕は……………。


 またもやぐるぐる考えていた僕は容量オーバーで再び気を失ったらしい。

 朝になって起きたときには浴衣を着ててアレは夢だったのかなと思ったけど、体調を聞かれて夢じゃなかったんだと赤面してまた心配させてしまったよ。

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