第79話 しゅっぱーつ♪

 寮の一階食堂にて夕食を済ませると二階の自室のベッドに入る。

 亜空間収納から出したガラケーを開くとメールを打つ。

「王都に行くことになりました。魔石とお米が楽しみです…と」

 誕生日にメールとプレゼントをもらってからたまにこうして神さまにメールをしている。

 大抵一日後くらいに返事が返ってくるんだけど、どうやら神さまに同居人…というか上司?がいたらしい。

 時々上司のヒト、否、神さまからもメールをもらうようになった。

 今もまた着信があったけど上司の神さまからである。

『楽しんでこいよ』だそうだ。

 こちらの神さまの名前はあのふざけた神様と違って〈神様\(^o^)/〉ではなく〈神です。こいつの上司です〉になってた。

 口調は割りとぶっきらぼうなんだけどいい人そう、否、いい神そう?

 気軽に連絡していいと上司?さんも言ってくれたのでまたメールしようかな。

 僕…メル友が神様なんて珍生物ぶりに磨きがかかってるかも?

 それにしてもこのガラケーも考えてみると凄いよね。

 スマホにしようか迷ったりしたけど変えなくて良かったかな。

 神様のとこと異世界とお母さんとナツコのいる日本を繋いでるんだもん。

 ………ガラケー、恐ろしいこ…!




 翌朝シフトチェンジを調整した予定表の確認をしてから出発の運びとなった。

 徒歩で。

 馬車も馬も王都との行き来はあるんだけど。

 流通の品物用で、人を運ぶ便は贅沢。らしいよ。

 地道に歩くのがこの世界の交通の基本なのである。

「行ってきます!」

「おう、気を付けてな」

 お風呂の魔道具は自警団から交代で係りが決められ、街の守りは自警団がしっかりとしてくれる。

 ただちょーっと活発になってる魔物の動きが気になったので、こっそりとええこそりとですね、秘密の魔道具を作って自室に置いて来ちゃいました。

 ホントはまずいんでしょうけど、心配なので。

 だって僕の異世界での初めての街。

 迷惑もかけたしお世話になったし父さんもできた。

 日本と繋がるガラケーがあっても…新たなふるさとなのだ。


 大事な街を守るために、いざというときには発動する転移装置を空間属性の虹色の魔導石を使って作った。

 任意で行ったことのある場所に限り移動できる魔道具。

 あの警報と連動して手に負えない大物の魔物が現れたり危険にさらされた場合に、ガザシ父さんにテレパシーみたいに報せる。

 僕の自室の机の裏に貼り付けた魔道具を使えば任意の安全な場所に避難できる、と。

 街の人全員を運ぶ設定したから魔力が多く必要になって、僕の魔導石を使っても一回だけの使いきりだけどね。

 多分使ったら台座ごとボロボロに砕けると思う。

 勝手に作ったから怒られるかもしれないけど、その危険が来なければ使わないからバレないし保険ってことで!


「じゃ、行きましょうカインさん!」

「うん、行こう。王都へ」

 観光旅行に出発しまっす!

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