第58話 登山は焦らず。
街から一キロメートルくらいで緩やかな斜面になる。
そこからは軽い登山だ。
更に鳥形の魔物も出てきた。
最初にギャアギャア言いながら襲いかかられたときはかなり驚いて固まってしまった。
カインさんが的確にバッサバッサと倒してくれたのでかすり傷ひとつ無かったけど。
魔法も魔拳銃も使えるけど場慣れしてない僕は不意打ちにとても弱い。
カインさんは気配にさとく素早い剣捌きで死角から襲う魔物に対処してくれるので、本当に助かる。
「伏せて!」
前を歩くカインさんの声ですぐにしゃがむ。
「!」
すんでのところで僕の頭上を飛び去った鳥形の魔物をカインさんの剣が真っ二つに切り裂いていく。
「ギャアアー!」
ホッと気を緩めた途端後ろからブンっと低い唸りが聞こえて、振り返ろうとする前にカインさんに腰を引き寄せられる。
「…っ」
カインさんの鋭い呼気と共に繰り出された剣が横凪ぎに後ろから迫っていたものを斬っていた。
咄嗟のカインさんの指示に従うことには慣れてきましたけどやっぱり戦闘は慣れなくて、ボタッと落ちた音がしてやっと緊張が和らいだ。
ゆっくり振り向くと僕の頭より大きな蜂が縦半分ずつになって地面に落ちていた。
日本では見たことがない全身真っ白の大きな蜂だ。
「ひぇええ…」
「白蜂の兵隊だな。この辺りか…ああ、あの藪の奥に巣がありそうだ」
そのまま動こうとするカインさんにつられて僕も動く。
と言うか腰を抱かれたままだったので自然と寄り添って歩くことに。
気付いたら滅茶苦茶恥ずかしいですこの体勢密着度が高いですー!
「ひ、一人で歩けますよカインさん…」
「…そうかい?」
躊躇いつつ離れた腕に寂しさを感じたなんてそんなわけ無いよ…ね?
気恥ずかしさで心持ちちょっぴり離れて歩くこと五メートルほど。
低木も高木も入り乱れた藪の奥の土の中に巣穴はあった。
「これが…」
テレビで見たことがある蜂の巣なんかよりでっかい。
正にファンタジーゲームなどのダンジョン入り口のような暗い洞穴を見て僕は思った。
さっきの蜂の大きさから考えれば当然かもしれないけど…。
これってもう洞窟じゃね?ダンジョンだよね?
「白蜂蜜はこの巣の奥の餌場にあるはず。君は」
「もちろんついていきますよ。お願いしたのは僕です」
なんとなくカインさんに置いていかれそうな気がして言葉を被せた。
「守ってくださいね?」
「君は…ああもうわかったよ。必ず守る」
「はい!」
笑顔で念押ししたら頭を掻いて苦笑されました。
やっぱりイケメンはどんな
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