神様の加護(二人目)

 やってしまった…。

 神様仲間からからかわれ注意されていた。

 それを笑って流していたことを心底後悔した。

 異世界との境の壁に、寝返りで穴を開けてしまったのだ。

 しかしそれは既に塞いである。

 ただ、遅かったのだ。

 気づくのが、眠りから覚めるのが遅かった。

 そういえばよく寝坊するのも部下に苦言を呈されていた。

 神なんだから時間感覚など在って無いに等しいと鼻でw(以下略


 とにかくそうしていつものように昼寝している間に召喚ホールができ、異世界の民が迷い込んでしまったのである。

 仕方なく送還しようとして神様ルールを思い出し青ざめた。

 喚んだものは返せるが無意識に迷い込んだものを返すことはできない。

 仕方なく世界が壊れない程度のバランスで加護チートをつけておいた。

 そうすれば人間なんてどうにかやっていけるだろうと。

 だが彼は気づいてしまった。

 我のミスで異世界に来てしまったということに。


 極度のショックに失神したのをいいことに彼の魂を神の世界に呼び寄せた。

 初めこそ激昂したように叫んでいたが、詫びを入れ事情を説明すると、複雑そうにしながらも礼を述べたのだ。

 なじられても仕方ないことだろう。

 実際今まで会ったことのある民は大抵喚くか泣くかだった。

 思い通りいかないことに不満や愚痴を並べるとか、一生を道半ばで終えることを嘆くとか。

 人間なんてそんなものだと思っていた。

 今思えば全ての者に会ったわけではないのに。


 だがミストリップの理不尽さに落ち込みこそしたものの、彼は我の加護に感謝したのだ。

 その純粋さ真っ直ぐさに惹かれて、気付けばおまけの補正をつけていた。

 本来有り得ないことだが…彼であれば大丈夫だと思う。

 我の加護も特殊な力もない素の状態で、魂で我を魅了したのだから。

 周りの人間に好かれる加護おまけなんてそれこそ在って無いようなものだろう。

 そうして我は今後彼に関わったりなど出来ないものの、彼の動向を見守り助けることになる。

 なにせ初恋であったのだから。

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