17話 - 魔王始動 -

「……いや、私そんなバケモノになりたくないから、イェレナさんのちょっと上くらいを目指すよ」

「いえいえ、魔王様は常にトップを目指していただかないと……」

「そ、そのうちにね! さー、ダンジョン作るぞー!!」

「仕方ない魔王様でござりますね。まぁ、本日はダンジョンに取りかかる日と決めましたからこれ以上は言いませんが、記憶の片隅にでも置いておいてくださりませ」

「分かったよ、なるべく頑張る方向で……。よし、ダンジョンクリエイト」


 イェレナさんの魔王強化計画が怖いけど、それよりもダンジョン作りがすごい気になるんだ、ごめんね。と、心の中で謝りながらスキルでダンコンダンジョンコントローラーを呼び出す。目の前に浮いている、開いた文庫本くらいの大きさの機械――横向きのタブレットPCにゲームのコントローラーを融合させた何か――を手に取ると、真っ暗だった画面が光り【welcome!】と表示が出る。完全にゲームだよねと思いつつ、前と同じようにAと印字されているボタンを押と表示が変わり<仕様書><全体図><配置><召喚>と出てきた。以前は仕様書を読んで終わったのだが、今回は全体図を確認して残りの配置と召喚をする。


「えーっと全体図、全体図っと……。あーこれほとんどボス部屋一本道じゃん。10部屋あるってことは十傑衆を順番に配置して終わりなんだろうね……前魔王さん手抜き過ぎるよ……」

「前魔王様はあまりダンジョンには興味がない方でござりまして、資料に載っていますが、どこのダンジョンもあまり変わらず……力でゴリ押しするタイプのものが殆どでござります」

「ホントだ。どこのダンジョンも、一直線だったり螺旋状に下り坂配置してるだけだったり……。浪漫の欠片もないね、これ」

「浪漫は良くわかりませんが、お陰でダンジョンの整備に使えるポイントが大量に余っていて、魔王様の自由度は高いと思いまする」


 仕様書にも書いてあった、ダンジョン整備ポイント<SP>を確認してみると1億ほどあった。このポイントSPは侵入者を撃退したり死亡させたりすると手に入る。消費するのはダンジョンの形状変化、モンスター召喚、アイテム召喚の3つだ。これを駆使して楽しいダンジョンを作るのが私の役目なんだけど、どの項目も平均1000SPほどしか使わないので、かなり遊びがあると思ってもいい。


「よーし、RPGツ●ールで鍛えた私の腕、いっちょ魅せてあげますかね!」


 私は腕を捲り上げ、ダンジョンの形を整える所から手を付けた。

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