いきなり完璧なものは作れない

 前項で『何故、進化したOSが必要になるのか』と云う疑問を投げかけて、一旦筆を置きましたが。

 その回答に掛かる前に、ちょっと御自分の端末やパソコンの事を思い出してみてください。


 時々、『更新プログラムをインストールしています』とかいうメッセージに出くわした事は無いですか?

 あれはOSやそれに類するプログラムに不具合が見つかり、それを修正するためにメーカーが行っているサービスなんです。それもまた、『現行のOS』に対してのみ行われるので、古いOSは度外視されてしまう訳なんですが。

 要するに、新しいOSだよと言って発表・販売し始めた製品であっても、使い込んでいくうちに欠点が指摘されたり、ミスが発見されたりと、細々した修正が必要になって来るんです。分かり易く言うと、コッソリとミスを隠蔽しつつ小さな問題を解決していくやり方なんですね。

 要するに、最初から完璧なものは作れないから、使いながら修正していってコツコツと欠点を消していく訳なんです。

 で、その修正だけでは間に合わないレベルの進化が必要になった時、メーカーは『新しい製品』を出して来るのです。

 凡そ、そのサイクルは3~4年に一度。

 まぁ、使い続けているパソコンにも飽きてきて、そろそろ買い替えようかなとか考える頃合いではあるんですよね。


 で、陳腐化した商品を引っ込めて新商品で目を引く、メーカーさんの常套がコンピュータの分野でも例外なく行われている。だから、定期的にOSも新しくなる……まぁ、これは新しいOSを売り出す理由の一つに過ぎないんですが。

 メーカーさん的には『新たなテクノロジーを搭載し、更に使いやすくなった』とか宣伝しますよね。これは嘘ではないです。確かに新テクノロジーは盛り込まれているし、見た目もより洗練されて……いるかどうかは、お使いになる皆様の判断にお任せしますが。兎に角、旧OSよりも機能は充実し、更に色々な事が簡単に出来るようにはなっている筈です。大抵は。


 しかし、新OSへの書き換えが、福ばかりを成す訳ではないんです。


 以前のパソコンでは使えていたプログラムが、新しいパソコンでは対応しなくなった……という経験、ありませんか?

 筆者は此処に、大きな疑問を抱いているのです。


 同じ系統のパソコンで動作するという事は、基本となっているプログラムに大差は無い筈。

 なのに何故、刷新した途端にプログラムが機能しなくなってしまうのか?


 思うに、理由は幾つかあります。

 その一つが、『そのプログラムに影響する部分を改造した』と云う事。新たな技術に対応させる為に古い技術を捨ててしまった事の悪影響が出た例ですね。

 これは実は、『同じ機能を備えた別なプログラムを使えば解決する』という側面も持っているので、操作性や外観に拘らなければ同じ結果を得る事は可能です。が、それは飽くまで『ソフトウェア上で処理できる範疇』のお話。


 冒頭で『デバイスドライバ』と云う字句が出たのを、覚えていらっしゃいますね?

 本項でいよいよ、この言葉を蒸し返して噛み砕いていく事になります。さぁ、準備は宜しいですか?

 ご記憶から外れてしまってるよと云う方はもう一度、序文を読み直してください。とっても大事なトコですから。


 先ず、パソコンと周辺機器が物理的に接続されただけでは役に立たない。これは説明済みですね。

 そこで必要になるのが、橋渡しの役割を担う『デバイスドライバ(以下、ドライバ)』である事も、既に申し上げた筈です。


 で。


 『物理的接続は出来ていて』『以前のOSでは動いていた』機材が、新OSに書き換えたら使えなくなった。

 これは一体、何故起こったのでしょう?


 答えは、ソフトウェア処理では解決できると申し上げた『欠点改良の結果、削られてしまった機能』にそのドライバの接点があった場合に起こり得るんです。

 しかし、これはユーザー側としては納得できないですよね。


 だって、そうじゃないですか?

 ドライバの役割なぞ、単にパソコンの中枢部と周辺機器のコントロール部が、I/Oポート(※)を介して結ばれていれば済む、ただそれだけなんですよ。

(※I/O:インプット/アウトプット――入出力 ※ポート:『港』から転じて『出入り口』)

 なのに、何故『物理接続は出来ている』のに『動かなくなってしまう』のか。

 改良した部分に対し、それほど多くの影響が出るならば、そんな改良はしてはならない。違いますか?

 旧式化した機材を捨てさせてまで、ユーザーに提供したい機能がそこに含まれているのか? これは大きな疑問となって残る筈です。

 理不尽極まりない。筆者は、そこだけは断固として許せないのです。


 ドライバが古くなる、これは時代の変遷とともに訪れる至極当たり前の事象です。避ける事は出来ない。

 しかし、単に外部機器との接点を担うだけのプログラムなら、機能更新でそのポートが使えなくなっても新たなポートを割り振ればいい。

 ポートの割り振りが原因でないなら、新OSにも対応できるようドライバも刷新すればいい。これぐらいの事なら、プロの技師なら片手間程度にこなせる筈。


 旧式だから、古いから、捨ててしまえ? そんな古いプログラムに、いつまでも構ってはいられない!?

 そんなメーカー側の言い分なんぞ、糞喰らえです!!


 それは単に、古い機材を意図的に見捨てさせ、新たな商品を買わせるための策略に過ぎない。

 モノは古くてもまだ使える、それを捨てろというのなら、その発言はエコに反する暴挙と云わせて頂く!


 それに、もっと深刻な問題として。

 古いソフトウェアや機材でしか出力できない結果や、入力できないデータだって、多々あるんです。

 その情報資源を、捨てろと仰るか!? そんな指示には従えませんよ。冗談ではない。

 例えば『掃除機のごみフィルタが、規格自体が変わってしまったので旧式のフィルタは旧式の本体でしか使えません』と云うのなら、それは仕方のない事でしょう。

 ですが『プログラムで解決できる部分なら、ちゃんとメーカー側の対応で責任とれよ!』と云うのが、ぶっちゃけこのコラムの趣旨なんですね。


 ……とまぁ、かなり私情に偏った意見の羅列ではあるのですが。大体、言わんとする事は理解して頂けたのではないかと思います。

 実際、筆者は現在、プリンタにペンタブレット、外部音源ユニットを『非合法な手段で無理矢理に』使っている有様なのです。

 機能を失い、やむなく交換せざるを得なかったソフトウェアも多々存在します。


 ――おっと、『何故に新しいOSが必要になって来るのか』と云う部分の解説が不充分ですね。

 では、これは次項に繰り越して説明をさせて戴く事に致しましょう。では!

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