少年はラムネボトルに沈む

@miyu0059

第1話

ー蝉の声が、聴こえる。


僕の声はとうに掻き消えた。少なくとも、声を出す元気などもう無くなっていた。



「やめてよ」


その一言を絞り出すことさえ、今の僕には出来なかった。



蝉の声が、耳に届いた。


今日はなんて暑い日なのだろうか。僕はもう、立つことさえままならない。

このまま、死んでしまうのだろうか。

だとしたら、死因は一体なんだろうか。


あぁ、思い当たる節が多すぎて、まともに頭が動かない。




それにしても暑い。こんな暑い日には、おばあちゃんにスイカを切ってもらおう。そして縁側でのんびりと麦茶でも飲もう。




もう痛みすら、僕は分からなくなっていた。




ー下劣な笑い声が、響き渡る。



僕の耳に届いたかどうかは定かではなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る