上下関係

第1話

とあるオフィスの一角。

ある男が、上司にこっぴどく怒られていた。

この上司はあまり良い性格ではないらしく、細かいことをねちねちと、延々と怒っているようだ。

(上下関係が逆転しないだろうか)

男は思った。

その時だった。

上司の顔から血の気が引いた。

そして、今までの失礼な言葉を謝り始めたのである。

男は暫くの間、困惑していたが、実際に上司が平謝りを繰り返す現実を前に満足していた。

周囲の人間は大層驚いていたが、それも含めて良しとすることにした。

男は上機嫌で家に帰った。

だが、家に帰った矢先で待っていたのは、こなされていない家事の数々であった。

男は恐妻家だった。子供も一人作っている。

男は、夢から覚めたような心境で家事をこなしていた。

そうして、

(逆転する範囲はもっと広くならないものか)

と、思いながら床に就いた。

翌朝。

男の生活は劇的に変わった。

朝起きると、朝食が既に作られており、会話をする時も、男の発言を聞き逃すまいとする態度が感じて取れた。

子供の態度がやたらと大きかったが、そんな事は大きな問題ではなかった。

男は有頂天だった。

朝、家を出る際に犬に引きずられる飼い主を見た。

しかし、ペットを飼っていない男にとっては他人事だった。些細なことだった。

しかし、他人事では済ませられない事態が起こった。

全国の動物園で暴動が起きたというニュースが入ったのである。