④シートベルト着用義務違反

住宅街のはずれで

不意に現れた小学校、

その煉瓦製の花壇に

目の前で自動車が突っ込んだ。


まるで逃走を阻むように。


しかも運転手はシートベルトをしていなかったのか、

フロントガラスを突き破り

小学校の敷地にぼてりと落ちた。


脚が止まる。

手から携帯が滑り落ちる。


放心したまま拾った携帯の画面には

1997/6/27 15:42

感覚では5分も走っていない。

時間の流れが無茶苦茶だ。


どうして、どうしてこんな事になったのだっけ。


そうだ、自分は。





自分は、警察署に来ていたはずだ。

免許の更新のために。


新緑の眩しい四月下旬だった。

待合室でぼんやり椅子に座っていると、

何やら外が騒がしくなってきた。


そっと外の様子をうかがう。


「漫然運転で歩行者を見落とし、轢いてしまったそうだよ」


いつの間にやら

初老の警官が隣に立っていた。

自分は曖昧に相槌をうつ。


「はい、これ」


初老の警官が何かを差し出した。

思わず受け取る。


「頼むよ」


それだけ言い残し、警官は立ち去ってしまった。


手渡されたのは

古びたVHSだった。

『交通安全教育用』とだけ書いてある。


頼むって言われてもなぁ。

再生できる機器もないのに。


そう思い、







そこから先の記憶がない。








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