《05-12》

「ホントに助かったよ。ありがとう」

「いえ、到着が遅れて申し訳ありませんでした」

 

 武装風紀委員委員長として堅苦しい言葉遣いに、春乃は苦笑を浮かべてしまう。

 

「構わん。いつも通り話せばいい。ここは公の場ではないからな」

「しかし」

「余も春乃もそれを望んでおる」

「はい。では失礼します」

 

 ふうっと一息。

 解りやすい反応にまろみと春乃が頬を緩める。

 

「どうして僕達がここにいるのが?」

「凛華から連絡があったんだ。不測の事態に備えるようにってな」

「で、図書館の外で様子を見てたの」

 

 函辺の説明を桜木が継ぎ足す。

 

「モールでのデートの時みたいなしっぱ……あぎぃっ」

 

 つい余計な事を口走り始めた桜木を、函辺が拳骨で黙らせる。

 

「なにすんのさ! 舌噛んだよ! 舌ぁ!」

「あぁ、すまん。蚊が止まってたんだ」

 

 涙の訴えを一蹴すると、倒れている図書委員達に眉を曇らせた。

 

「この時間帯の戦闘行為は、ルールで禁止されているはずなんだが」

「その件については、後で聞いてみればよいであろ。とりあえず執務室に戻るぞ」

 

 まろみの言に春乃が頷く。

 

 ルールについてだけではない。

 結衣の豹変。そして彼女達にまろみの力が及ばなかった事。更にディスクカードに残されていた映像。

 多くの謎がある。

 一旦、整理しなければならない。

 

「念の為、執務室まで護衛致します」

「ふむ、頼んだぞ」

「そう言えば、いつもより人数が少ないね」

「緊急招集だったからな。全員は集まらなかったんだ」

「でも大丈夫だよ、春っち。私がいれば百人力だから」

「ありがとう。悪いね」

「もう、私と春っちの仲じゃん。遠慮はいらないよ」

「全員、持ち場につけ。執務室に向かうぞ。ルール内だからと言って油断するな」

 

 函辺を先頭に、春乃とまろみを囲う位置につく。

 

「みんなが居てくれると心強いね」

「ふむ、まあな」

 

 隣を歩くまろみの浮かない顔に、優しい笑みを見せる。

 

「大丈夫だよ。それに……」

「春乃よ」

 

 重い口調に春乃は言葉を止めて、続きを待つ。

 

「春っちというのは、どういうことだ? まさかお前、余に隠れて良からぬことをしているのではあるまいな?」

「してないよ!」

 

 あまりに予想と違う問いに、つい声が半音跳ねた。

 

 

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