《05-11》
「今だ! 制圧しろ!」
力強い一声が図書館に響く。
と、春乃に迫っていた生徒が横に飛んだ。
何者かが走り込んで弾き飛ばしたのだ。
それだけではなかった。
本棚の陰から数名が警棒を手に現れた。
「数はこちらが多い。冷静に対処するんだ」
すぐさま結衣が指示を出す。
襲撃者は少なかった。半分にも満たない数。
だが、数を補って余りあるほどに、個々の戦闘力が圧倒的に高かった。
相手の警棒を巧みに打ち払い、的確な攻撃を繰り出す。
「姫様を護る騎士としてはまだまだ実力不足だ。けど、心意気は悪くないな」
状況を把握できずにいる春乃に、危機一髪で彼を救った長身の女生徒が言葉を投げる。
均整の取れた魅力的な身体付きにシングルポニーの髪。
手にした二本の警棒。
「ハコベさん!」
「感謝は後だ。まずは」
殴り掛かってきた警棒を軽く避けると、そのまま膝蹴りを叩き込んで転がす。
「制圧を済まそう。お前ら! 相手は素人の図書委員だ! 二分以内に片付けろ!」
函辺の命令に、麾下の武装風紀委員第一斑が攻勢を強めた。
包囲していた図書委員達を次々と倒していく。
「桜木! 遅刻してきた上に、ぼんやりしてるんじゃない!」
「はい、はぁい。もう面倒だなぁ」
本棚の陰で座り込んでいた桜木が、殊更面倒そうに腰を上げた。
「ここまで来たら、もう決着ついてるのに」
ぶつぶつと呟きながら、結衣の方に近づく。
気付いた結衣が警棒を振るう。
が、その攻撃を軽く頭を下げてかわすと、懐に滑り込んだ。
胸元に軽く触れただけ、にしか春乃には見えなかった。
たったそれだけの事で、結衣の身体から力が抜けた。
白目を剥いて口をぱくぱくさせたかと思うと、そのまま崩れ落ちる。
「はい。これでおしまい」
「どうしてお前はすぐサボるんだ」
「だって、弱いもの苛めって好きじゃないんだもん」
春乃達の方にやってきた桜木に函辺が大きく溜息を一つ。
その他のメンバーも制圧を完了して駆け寄って来た。
頬を腫らしている女子が一人。それ以外はほぼ無傷のようだ。
「誰か医務に連絡を入れておけ。実践訓練が激し過ぎて負傷者が出たとな」
「了解でござる」
男子の一人がレシーバーを手に少し離れた。
それ以外のメンバーが一列に並んで敬礼する。
「武装風紀委員第一斑、小鬼田以下六名、まろみ様と草陰様の救出に参りました」
「ふむ。ご苦労だったな。助かったぞ」
春乃の後ろから進み出たまろみが大仰に頷く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます