《04-14》

「でも、それは誤解だったようです。寝ている女子にこのような卑劣な真似をする男だったとは」

「凛華さん! 誤解の向きが違います!」

「黙れ! この色魔! 腐れ外道!」


 まさに取り付く島もない。


 唖然とする春乃の前で、凛華が静かに立ち上がった。

 乱れた胸元も、シャツの裾から覗く下着も気にする様子がない。


「全て私の誤りでした。こんなケダモノをまろみ様に近づけるわけにはいきません」


 冷酷にそう告げると、どこからともなく折りたたみ式のナイフを取り出す。


「死んでください」

「ちょっと待って!」

「お前らさ、何やってんだよ?」


 いつの間にかドアの所に函辺が立っていた。

 サンプルとしてショーケースに飾りたいくらい見事な呆れ顔をしている。


「女子がおパンツ丸出しで仁王立ちって、どういうシチュエーションだよ。まあ、自慢のおパンツを見せびらかしたいのも解るけどさ」

「そんなことするわけないでしょう!」

 

 急激な羞恥心に取り憑かれ、ガーゼケットを身体に巻きつけてしゃがみ込んだ。

 

「しかし、私が寝ているのを隙に服を脱がすような人間が」

「なんだよ。苦しそうにしてたからボタンを緩めて、スカートを脱がしてやったんだろ」

 

 函辺の言葉を耳にした凛華の目が、通常の三倍は大きくなった。

 

「まさか、小鬼田さんの仕業?」

「仕業じゃない。好意だ、好意」

「じゃあ、ひょっとして、私は……」

 

 限界まで見開かれた瞳が、春乃に向けられる。

 

「えっと、誤解ですね」

「うぅっ、私はなんということを……」

「気にしないでください。僕もデリカシーが足りませんでした。あのシチュエーションでは誤解されて当然ですよね」

「でも、私は……私は……」

「止めて下さい。僕は喜んでるんですから」

 

 意外な発言に凛華が疑問符を浮かべる。

 

「凛華さんみたいな素敵な人に、好意を持ってもらえているなんて、凄く嬉しいことじゃないですか」

「春乃様」

 

 そう呟くと両手で顔を覆って、肩を震わせた。

 

「あの、凛華さん」

「ここで声を掛けるのは野暮ってもんさ。自分達はあっちの部屋にいるから、落ち着いたら出てきなよ。お粥を作ってあげたから」

 

 顔を隠したまま頷く凛華。

 

「じゃあ、凛華さん、隣の部屋で待ってますね」

「おブラとおパンツが見えないように、ちゃんと服を着てくんだよ」

 

 二人が部屋を出て行った後、頭からガーゼケットを被って枕に顔を押し沈めた。

 

 

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