《01-18》

「そんなバカな」

「合成という可能性もありますね。少し調べてみます。その写真を預からせて頂きますね」

 

 春乃の了解も待たず、いきなり写真に手を伸ばした。

 乱暴にむしり取ろうとする意思が明らかに見える動きだ。

 

 咄嗟の事に春乃の反応は明らかに遅れた。

 が、写真に触れる寸前で、その指先が止まる。

 春乃の横から伸びた手が、鈴奈の手首を掴んでいたからだ。

 

「涼城、そういう真似は感心しないぞ」

「ハコベさん」

 

 春乃が安堵の混じった声をこぼす。

 

「その写真が草陰にとって大切な物なのは解っているだろう。それを乱暴に奪い取ろうというのは、あまりに無法だと思わないか」

 

 ぐっと引き離した。

 函辺の手の緊張具合を見れば、二人がかなりの力を込めていたのが解る。

 

 鈴奈の顔が悔しげに歪む。が、それも一瞬。

 すぐさま柔和な笑みが戻った。

 

「失礼しました。小鬼田さんの仰る通りです。あまりに驚いたもので、冷静さを欠いてしまいました。申し訳ありません。草陰様、許して下さいますか?」

「あ、いえ、僕の方こそいきなり変なことを聞いたから」

 

 涙目になって深々と頭を下げる鈴奈に、春乃は逆に罪悪感を抱いてしまう。

 

「冷静さを欠いた? 自分にはかなり冷静そうに見えたけどな」

「ハコベさん」

「はは、冗談だよ。近衛侍女隊の連中とはウマが合わなくてね」

 

 大袈裟に肩を竦める。

 

「しかし、ダラダラ歩くのは性に合わなくていけないな。草陰の部屋にさっさと向かおう」

 

 と、鈴奈の背中押した。

 

 流石の豪腕。

 か細い鈴奈が数歩よろめいて、どべちゃっと無様に倒れ込む。

 

 見事にめくれ上がったスカートから春乃は慌てて目を逸らした。

 

「あ、すまん。そんなに力を入れたつもりはなかったんだけど」

「こ、これだから野蛮人は嫌なのです!」

 

 身体を起しながら、鈴奈が非難の声を上げる。

 

「なんだよ、その言い草。謝っただろ!」

 

 怒鳴り返す函辺の耳に。

 

「見えたか?」

「見えた。やっぱり白だった」

「しかもフリル付きだった」

「武装風紀委員になって良かった」

「今日は人生最良の日でござるよ」

 

 武装風紀委員第一斑の男子五人組みの、実に男らしい会話が飛び込んできた。

 

「まったく、男ってのはバカばっかだな」

「そのバカ達にすら相手されない委員長ってなんだろうね」

 

 余計な一言を漏らす桜木を強引に抱き寄せると、拳骨を作って頭をぐりぐりと……。

 

  

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