モフラー、ネトゲ世界で救世主になる。

翔馬

はじまりの章

第1話 もふもふは好きですか?

林田悠希ハルキ、当年とって十六歳。

現在、迷子です。

場所は…


* * *


「ただいま~、タローヒメピーちゃんリュウジ~♪」

今年通い始めた高校から帰ってすぐ、俺は愛しのペットたちへと駆け寄った。

タローは父が仕事帰りに拾ったシベリアンハスキーだ。

俺の抱擁に嫌がりもせず尻尾をバサバサ振って答えてくれるなつこいやつ。

ヒメは三毛猫で、母が実家から連れてきた、もとは捨て猫。

背を撫でるとつんとそっぽを向いて興味ないふりをしているが耳はこっちを向いているし、可愛いボブテイルが機嫌良くピコピコと揺れている。

ピーちゃんは俺が生まれたときに両親がペットシェルターからもらってきたヨウム。

「オカエリ、ハルキ、オカエリ!」

唯一おしゃべりを返してくれるピーちゃんだが定型の挨拶以外はあまり上手じゃない。

リュウジは前に住んでたお隣さんが引っ越しで置いていったオオヨロイトカゲである。

リアクションは薄いがじっとこちらを見つめてまばたきをするのが彼なりの挨拶だ。


みんな販売されたペットというよりは拾った子たちなのだ。

ここまででわかっただろうがうちの家族は全員が動物好きだ。

むしろ両親の実家も揃って動物好きの一族だ。

俺はこのうちに生まれて幸せだと思う。

無制限にペットを増やすわけではないが家族でもふもふについて語り合い愛でることができるからだ。

トカゲのリュウジはもふもふじゃないが。

いや、つぶらな瞳は可愛いんだよ?

鎧みたいな鱗もかっこいいし。

まあそんなわけで俺は筋金入りの動物好きというわけだ。


一通り帰宅の挨拶をするとブレザーを脱ぎエチケットブラシをかける。

脱いでからにしろ?うちの子より優先されるものなどないよ?

とにかく制服を脱いで楽な部屋着のジャージに着替えた。

キッチンでみんなのご飯を用意してリビングに戻ると四匹とも行儀良く並んで待っていた。

みんなの前にご飯を並べて置き自分の飯の準備を始める。

今日は刑事の父は張り込みのために泊まりで母は同窓会で温泉旅行。

正直俺一人と思うと適当に済ませたい。

最低限栄養をと思いサラダと味噌汁、簡単に親子丼を作った。

「…うん、まあまあの味かな」

四匹の皿も下げて片付けをしたあと、ブラッシングだ。

タローとヒメにはダニ取り付きの首輪をしているが二匹ともブラッシングがお気に入りで、ペット用ボックスから自分でブラシをくわえて持ってくる。

「よしよし、今やるから」

ヨウムのピーちゃんに水浴び用のたらいを用意してから床にあぐらをかくとすぐ二匹が乗ってくる。

が、重いのでタローは顎のせだけにしてもらった。

最初は隙間の密なもので解すように、次に毛並みを整えるように隙間の荒い櫛ですく。

二匹分が終わると今度はリュウジの鱗の手入れをする。

埃や塵を小さな刷毛で払い、クリームを塗る。

リュウジは気持ちよさげに目を閉じ、気がつけばみんなうとうと寝ているようだ。

タローは全身だらっと伸びきってうつ伏せに寝て、ヒメはタローの腹に鼻を突っ込んでプウプウ言っており、ピーちゃんはタローに寄り添うようにくっついて舟を漕いでいた。

俺はリュウジをそっと三匹のそばに寝かせて、リビングを出る。

一緒に寝てしまいたいが、今夜は約束があるのだ。


モフモフVRMMO、メタモルモフモフワンダー。

アバターはすべて獣人。

全身毛皮バージョンと耳尻尾など一部のみのハーフバージョンがある、夢のゲームであった。

その噂を聞いて参戦したのは一年前。

小学生の時の将来の夢は猫になるだった俺にとってそれはまさに夢のゲームだ。

勿論一も二もなく飛び付いた。


新しいもふもふ仲間も誘ってのダイブの約束。

両親も留守で、ペットたちも夢の中。

ゆっくり友人たちともふもふ遊びに興じる…

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