ベラ太夫?

ベラ太夫だゆう?  【byナザリック風味?】


   著 ティトゥス・アンナエウス・セクンドゥス

   全面協力 アウラ・ベラ・フィオーレ


      発行 アッシュールバニパル魔童書房



・・・   ・・・   ・・・


 ナイショナイショのお話。


 とある住拠に二人の小父さんが居りました。

一人は赤く、第七階層の住人。

もう一人は青白く、第五階層の住人。


 二人は性格も性質も全く正反対な者ではあったが、とても仲が良かった。


 ある日、赤い小父さんは山へ山狩りに行って、山を火山に変えに行きました。

青い小父さんは火山が広がり過ぎない様に河を凍結しに行って、河を氷河に変えに行きました。


 青い小父さんが河を氷河に変えようと凍結していると、上流の方からどんぶらこ~から、氷の上に打ち上げられて、ドン! ツルツル~と、大きな大きな毒茄子ベラドンナが・・・滑って来た?


 これ幸いと、中の良い赤い小父さんと呑む時の肴に丁度良さげだとさっそく拾い上げた所。


「やぁ、そっちはどんな様子だい?」


 赤い小父さんが山狩りを終えて山から下りて来ました。


「コッチハトクニナニゴトモナカッタナ」

「それは良かった、こちらも特に得るモノは無かったよ。ところで、その手にしているモノは?」

「アア、コレハ肴ニチョウドイイトオモッテナ、コレデ一献ドウダ?」

「ふむ、それは良いね。さっそく戻るとしようか」


 毒持ちな茄子ではあるが、その位は丁度良い刺激的な味と感じる二人にとっては問題無かったり?


  ・・・   ・・・


料理?


「さて、これだけ大きいとどうしたものか」

「フム、サテ、ドウシタモノカ」


 どうやら二人とも料理をする事には不慣れな様子。


「・・・そうだ、焼き茄子にしてみるのは如何だろうか?」

「アレハタシカ、表面ヲ黒コゲニ焼イテ冷ヤスノダッタカ? ソレナラデキソウダナ」


 ・・・当の毒茄子は必死にジタバタと暴れ出している?


 では早速、と地獄の炎で毒茄子を丸焼きにし出す赤い小父さん。

表面の皮が焦げたら、冷やすべく待ち構えている青い小父さんに手渡すと、さっそく凍てつく吐息で冷まし始めた。


 熱々から程々に冷え、皮目がボロボロと剥がれ落ち・・・「あっつい!」と叫んで真っ二つに裂けた!


 真っ黒に焼けた毒茄子が自ずと真っ二つに割れた中から焼けた褐色肌の子供が飛び出してきたから二人ともビックリ仰天!


「な、な、なんだ!?」

「ナ、ナ、ナスガ! 焼キナスガァ~!?」


 ともあれ、何とか落ち着いた二人と、焼き茄子から生まれた・・・誰かさん?


 炙られていた所為なのか、焦げ茶色。ともあれ、目の前で生まれたのだから二人で育ててみようではないかと納得する二人?


 何はともあれ、名前が無いのは困るからと? 毒茄子ベラドンナから生まれたベラ太夫・・・なんて?

ともあれ、アレよコレよとすくすくと育ち、育ってから思い返せばあっという間に・・・76年?

 生まれた時から・・・余り変わっていない気もするが、まだまだこれかららしい・・・


・・・   ・・・   ・・・


決意?


 何やら思いつめたベラ太夫は、二人の前に立った。


「小父さん達、今日まで育てて頂いてありがとうございます。これからここを脅かしたらしい吸血鬼を退治に行ってきます!」

「・・・そうか、決意は固い様だね。では、せめてこれを・・・」


 赤い小父さんがそう言って差し出すは、夜鍋の具材にしようと・・・料理に関してはとんと不器用な小父さんが四苦八苦して作り上げた・・・不気味団子?

なんだか白っぽくて、所々が黒くてナニかドクロに見えなくもない団子・・・らしきもの?

 決して処分に困ったから、押し付けようとしている・・・訳ではない!

イザという時はソレをばら撒いて吸血鬼を毒殺してでも倒しきれという意図は・・・見え隠れしている?


「う・・・あ、ありがとう、小父さん・・・」


【役に立つのかは微妙だが、心尽くしの一品? を手に入れた!】


「ナラバ、自分モ用意デキルモノヲ・・・! コレヲモッテイケ!」


 そう言って差し出すは、腰に佩いていた斬神刀皇を差し出した。


「こ、これは・・・」

「セメテ身ヲ守ルタメノモノヲ携エテオカネバナ」

「お、小父さん! ありがとう! コレがあればどんな敵でも!」


 掻き抱く様に受け取ったが、がしゃん! と取り落としてしまった。


「あ、あれ? しっかり握ってたはずなのに、おかしいな?」


 ガシャン! 手に取るまでは出来たが、少しでも気を抜くと、スルリと取り落としてしまう。


「・・・どうやら、扱い切れなかった様だね」

「そ、そんなぁ~」

「ム、ソコマデハ考エ至ラナカッタ、スマヌ・・・ナラバ、セメテ身ヲ守ルモノヲ」


 そう言って取り出したのは燦然とした輝きを放つ衣服一式と「第六層Ⅰ!」と書かれたのぼり


「お、小父さん! ありがと~!」ととっても嬉しそうなベラ太夫が青白い小父さんに飛び付いて喜んだ!


 それを見て、この差は何だろうかと思い悩む赤い小父さんだった。


   ・・・   ・・・


 さて、出発の日。


「じゃあ、行ってきま~す!」

「アア、気ヲ付ケテナ!」

「どんな事があっても・・・あの吸血鬼を滅してくるのだよ!」


 ガッシと肩を掴む手に力が籠る小父さんの目を見ない様に顔を逸らすベラ太夫。


「・・・はぁ~い」


・・・   ・・・   ・・・


お供?


 とっとこ歩いて道なりに進むと、プルプルとした白い装いの・・・犬っぽい何かを見付けた。


「あ! お、お姉ちゃん! その腰に付けたお団子、下さいな!」

「え? このお団子? 別に良いけど・・・はい」

「う・・・」


 まぁ、処分できるのなら処分してしまいたいという気持ちも見え隠れするベラ太夫は、躊躇することなく一つ手渡してみた。

 貰って見たは良いが、余りの不気味さと毒々しさから食べる事を一瞬躊躇する・・・が、貰ったモノは無駄に出来ないからと?


「えい!」とその犬っぽい何かが一口に頬張ると・・・「う!」と唸って蹲ってしまった!?

「だ、大丈夫かな? やっぱり何か不味い事でも・・・」と吐き出させるべきかを悩んでいると・・・ぽん! と△な犬耳と、ぽぽん! とフサフサな尻尾が生えた!?


【・・・は犬属性を手に入れた!?】


「お、お礼に・・・お供、させてください」と涙目で言って来た。

「う、うん、それは良いけど・・・大丈夫?」


 ヨタヨタと酷い顔色で立ち上がり「ダ、ダメ・・・」バタンキュウ! と倒れてしまった・・・


「衛、衛生兵メディック~!」と犬っぽいそれを背中に背負って駆け出したベラ太夫!



 どうにかこうにか持ち直した犬っぽい男の娘にベロと名前を付けて旅は続く。


・・・   ・・・   ・・・


 さぁ、これから鬼ヶ原にイザ挑もうとするプルプル震えるチワワっぽいベロと、もう一人のお供。


【え? 猿か雉が居ないって? ちゃんと居ますよ?】


 ちょっと遠い眼しながら思い返すベラ太夫。


   ・・・   ・・・


欠加山かかさん≫=無かったり足されたりした・・・山のように積まれたプロフィール?


 かつて、余りに目に余るヒドインな大猩猩ゴリラが封印された地のその麓。


「え、えっと、ここにはとてつもなく強いモノが居るらしいです!」

「ふ~ん、そうなんだ~」

「えっと、何でも至高の御方に欲情して襲い掛かったから、ここに反省するまで閉じ込められたって・・・」

「え~、そうなんだ~」


 ベロが一生懸命説明してもベラ太夫の生返事しか返って来なかったが、「ね、ねえ、私をここから出して貰えないかしら? もう十分に反省したから・・・」という別の声が足元から返って来た。


「「え!?」」

「この声が聞こえたのなら、ここから出して貰えない? 出してくれるのならお供でも何でも! でも、操だけは絶対ダメ! この私の初めては、あの方だけのモノだから!」

「えっと、封印されてる?」

「猩猩?」


 へぇ~! ほぉ~! とまじまじと近寄って見詰めてみるベラ太夫。


「あ、貴女がベラ太夫よね? 貴女のお供をすれば、ここから出してもらえるはずなのよ!」

「え~? でも、ルべドを外に出すのは不味くないかな?」

「許可ならそのお団子を食べる事なのよ!」

「え? このお団子?」


 と目の前で振りながら、「食べたら大変な事になるし・・・」とチラリと犬耳尻尾なベロマーレの方を振り返り見ていたら、ばっ! と入れている袋ごと毟り取られ、袋を引き裂いてザラザラと有り得ないほど大きく開かれた口の中に流し込まれた。


「う!」


 ふらりと蹲るルべド。


「だ、大丈夫!?」


 流石に食い過ぎだ! と思わない事もなかった。


「ど、どうしようお姉ちゃん!」


 申べドを閉じ込めていた岩が無くなったので傍に駆け寄る事が出来た二人。


「と、兎に角、吐かせないと! 一個でもそうなのに・・・何十個もだなんて!」

「う! そ、そうだよね!」

「う、う・・・苦しい」


 苦しそうな申部ド? =変化が現れて来た?


「ど、何処か苦しい? 吐き出せそう?」

「ど、どうしよう!?」

「・・・生まれる」

「は?」「え?」

「どうしましょう! こんな時に授かるなんて!」


 ポンポコリンなお腹? =想像妊娠?


「え、え~と・・・」

「えっと、お姉ちゃん。食べ過ぎでお腹が苦しいだけなんじゃ・・・」

「そう思うよね?」

「ほ、本当の事、伝えた方が・・・」

「・・・暫くしたら落ち着くと思うからほっとこう」

「え? ええ!?」


 チラリと様子を伺うと、


「ああ! 男の子かしら? それとも女の子かしら? それとも・・・両性だったり無性だったりするのかしら!?」


 ・・・そっと目を逸らす二人。


「あれを見て更に何か言ったら、絶対に大変な事になるはずだから」

「う、うん・・・」


 取敢えずは申部努が落ち着くまで待って見た結果・・・


「う、うう!」


 申部℃は更に苦しがっている!


「な、何か不味かったかな?」

「う、うん、何だかお腹がボコボコ波打ってるよ!?」

「う、生ま、れそ、おぉう~!」


 次の瞬間、バチャァッ! と弾ける様に広げられた翼。


「え? ええ!?」

「え~? あ~・・・大丈夫?」


 慌てふためくベロとは対照的に、成るべくして成ったかと、もはや諦め気味なベラ太夫。


「ええ、すこぶる良い気持ち。まるで本来の姿に立ち返った様」


 申部弩は進化し、雉属性を手に入れた!?


 それを見たベロは、ベラ太夫の裾を引っ張り、申部弩から離れつつ尋ねた。


「お、お姉ちゃん。ナニかあったのかな?」

「・・・ねぇ、ベロ。世の中には見なかった事に、知らなかった事にしておく方が良い事って、一杯あるよね?」

「え!? で、でも!」

「良いよね? 見なかった聞かなかった知らなかった関わらなかった事にした方が!」

「う、うぅ・・・うん」

「ならよし」


 そうお互いに無理矢理納得しあっていると。


「そういえば、これから何処に行くのでしょう?」

「え~っと、御方に逆らった吸血鬼が・・・」

「何ですって!? あ、あの・・・」


 押し黙り、俯いてしまった申部弩からの、不気味な沈黙が周囲を埋め尽くした。


「・・・く」

「「???」」

「くふっ、くふふっ・・・これで、正々と処刑する大義が・・・よっしゃぁー!」

「あー、こうなったら触れないでおこう」

「う、うん! そうだよね!」


・・・   ・・・   ・・・


 それから・・・


「死、ねぇ!」と巨大な槍でド突くシャル血鬼。

「腐、されぇ!」と大戦斧で迎え撃つ申部弩。


 終わりなき決闘が繰り広げられているその少し離れた場所では。


「あー、まだ決着が付いてないかぁ」

「う、うん。まだまだ全然みたい」


 鬼ヶ原の外れの辺りには、ベロが自作したのか丸太小屋が建っていた。


「えっと、だからベロにはまだもう暫く監視してもらう事になるみたいだから」

「え!? ええぇ~? また?」

「うん、吸血鬼も正気に戻ったみたいだけど、もう暫くこうしてた方が平和だろうからって」



・・・   ・・・   ・・・


 こうして、沙漠と化したある土地は、鬼ヶ原と呼ばれる事になったとさ?


 ないしょ、ないしょなお話?



こうして史実と事実の入り混じったティトゥスの魔童書がまた一つ・・・ここに誕生してしまった?

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