続、鏡

『わたくしが

いつかあなたを壊すまで

この世で一番美しい

女が誰か教えなさい』


ある日あなたは言ったわね

わたくしよりも美しい

女がこの世にいるのだと

前日まではわたくしが

一番美しかったのに


ねぇねぇ鏡

そろそろあいつは死んだのかしら?

六人全員失敗なんて

役立たずにも程がある

でも今回は大丈夫

あいつは信頼してたもの

育ててくれたばあさんを


ふふっ


嬉しくて笑いが止まらないわ

とても

とても

とても嬉しい

あいつのいなくなった世界は

これ程までに美しい

わたくしには劣るけれどね

もっと早く

殺しておけば良かったわ


さあ 答えなさい

わたくしよりも美しい

あの女はもう

いないわよねぇ?


顔を醜く歪めた女が

大きな鏡に手を這わせ

猫撫で声で問いかける


いいのよいいの

言わなくて

あなたはもう要らないのだもの

赤い赤い林檎を食べて

あいつはきっと死んだのだから


さようなら


女は花瓶を持ち上げて

鏡に向かって投げつけた


ピシリ

鏡はひび割れて

ガシャン

花瓶は砕け散る


ガラスの欠片は飛び散って

女の顔を傷つけた










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る