箱庭〜箱の外にあるものそれは死〜
シマの紙
第1話 プロローグ
今から二百年前、世界はとあるウイルスによって人口が半分に減った。
そのウイルスは昆虫から動物へ感染し、その感染した動物から人へと感染し、人から人へと感染していった。
そして、そのウイルスに感染した生き物は元の形がわからなくなるほど変形し化け物となり、まだ感染していない生き物を襲うようになった。
その化け物たちは互いに進化しあい、多様性を深めていった。
その中で生きようとする人々は化け物から逃げるために『箱庭』という場所を作った。
箱庭というのは一面ガラスのようなもので覆われた場所のことで、ウイルスが広まり始めた頃とある科学者が作り出したとされている。そしてそのガラスは化け物を近づけないようになっている。
生き残った人々はその箱庭の中で住むようになり化け物にも襲われないと思っていたが、今から百年前、一つの箱に一気に化け物たちが群がりそして……箱庭が潰れ多くの命が失われた。
その出来事のことを『大災害』と我々は呼んでいる。
大災害を受け、各国は化け物の対策に動き始めた。まずウイルスの名前に『Gウイルス』と名付け、化け物のことを『グルネア』と呼ぶようになり、世界はそのグルネアの危険度に対してランクをつけるようになりGⅠ〜GⅤの五段階に分けられた。
そして、国はグルネアに対抗するために力を持った。
軍を作り、その軍隊を養成する高等学校などを作った。
そして、軍は武器を持ち、兵器を持ち、そして核を手にした。
軍は力を手にしたが……一般市民にはそんな力などない。
人はこの先どこへ向かうのか?
「ふぅ……こんなものでいいか」
「終わったんですか? オリエンテーションでいう内容」
「ああ、今年はグリネアについて話そうと思ってる」
「まぁ、一応とはいえこの学校もグリネアに対抗できる人材を育てる対策学校の一つですからね」
「そうだな、今年は逸材が来るらしいから楽しみだよ」
「
「ああ、そうだ。網風はあの有名な血筋の一人で早瀬はあの早瀬流の剣術の血筋だからな」
「そうですね、明日が楽しみですね」
「ああ、そうだな」
ーーその頃。
「しゅんくん、明日が楽しみだね」
幼馴染のめぐが話しかけてきた。
急に電話をしてきて何かあったのかと思い電話に出たらこれだ。
「めぐ……高校生になってもくん付けで呼ぶのはやめてくれ、恥ずかしい」
高校生でそういう呼ばれ方をしている人間はそうそういないと思うが。
「なんで? しゅんくんはしゅんくんだよ?」
「はぁ、もういいや」
「私、高校……やっていけるかなぁ?」
突然めぐがそんなことを言い出した。
こいつ、自分の立場わかっていってるのか?
「早瀬流の血筋のお前が何言ってるんだよ」
めぐは早瀬流の血筋で剣術では……勝てないものがいないのでは? と思わせるぐらいだ。
「まぁ、そうだけど……あ、しゅんくん、私昨日夢を見たんだよ」
こいつはいつもいつも急に話を変えてくるな。
「……どんな夢だ?」
「しゅんくんが小さい私を助ける夢、でもねその時のしゅんくんはなんか……おかしかったな」
……
「……おかしかったってどういうこと?」
「おかしかったというか、怖かったかな」
……
「……なんだよそれ、まぁ俺はもう寝るからまた明日な」
「うん、また明日」
……怖かったか。
俺は、鏡に向かって笑ってみた。
「怖くない怖くない……これを見せなければ」
鏡に映る俺の瞳は暗闇の中で赤く輝いていた。
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