とっさのひととき

@yuremarchan

第1話

ロミは今日も忙しい一日を過ごした。まだもう一つ家事が残っている。だが、今日は3か月ぶりに掛け布団のカバーを洗濯し、サラサラのカバーが出来ていた。


カバーを布団にかけるのがロミの大嫌いな家事の1つでもあった。カバーのひもを掛布団のあの細い穴に通すのが時間がかかる。ロミが不器用なせいもある。だが最大の理由は布団を敷くことを後回しにし、お風呂に入る直前や洗濯物をたたむ直前にちょこっと時間をとるだけなので、余計にこんがらがるのかもしれない。さらにこんな理由も考えられる。3日に一度カバーを洗う人なら、カバーの替えも楽々なのだろう。コツをつかむ前に期間があくので、いつも初心者になってしまうのであった。ロミは時々カバーがとんでもないことになっていたりする。


ある時は一緒に布団が数枚あり、一緒にカバーがけをしている知人にこうすればいいと教えられた。まずは布団を大きく広げ、カバーを上に掛け、カバーをスライドし、そこへ布団を入れればOKというものだった。


ロミはもしかしたら、布団のカバー掛けを家事としての仕事ではなく、普段のストレスの発散の場としていたのかもしれない。できてきた布団がえらいことになっていたとしても、それを吹き出して笑うことで日頃のストレスを発散させていたのだ。だからカバー掛けだけは成り行きで、最初の始点を決めたら、パズルのように感覚で取り付けていくのだった。


ある時はカバーの中で布団がねじれてしまい、さあ、掛けよう、ふわっとかけたときに、なぬ!?と言う感じだった。そうはいっても、ロミは自分が不器用だと思われるのが嫌だったので、そさくさとやり直すのだった。


今日はなぜか、掛布団とカバーがクロスになって出来上がってしまったのだ。(やってしまった。)ロミは赤面した。長方形の掛布団の縦部分をカバーの横部分とつなぎあわせてしまったのだ。そんな風にして出来てきた布団は長方形のはんぺんというよりは、丸い物体だった。


ロミはイライラが頂点に達した。1辺に3か所結び目がある。その沢山の結び目をまずは全部とり、それからクロスを同じ方向にして、また1辺につき3か所の結び目を結んで・・・


出来上がりの丸い物体のファスナーをはずし、最初の中間地点の結び目とその下の角の結び目をはずした時だった。


ロミは思わずカバーをセーターでも着るように頭からかぶってしまったのだ。


意外だった。カバーの中は外の蛍光灯の光が照らしているので、明るく昔入ったバルーンの世界のようだった。


始点の結び目を1つ結べば、カバーの中にいるロミは布団とカバーをつなぎ合わせ、結び目を辿る感じですぐに完成した。


ロミはこれからも夜に電気で部屋を明るくし、カバーの中に入って結ぼうと思ったのであった。

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