魔法色世界<マジックカラーワールド>

結城

はじまり

俺が自我を持ち、世界を認識した時には……


世界は<灰色>で染められていた。


否、<そこ>が俺だけの世界だった。

その意味に、世界の理に気づくには、

俺はまだ幼く……無知だった。



「アッシュだ!アッシュがきたぞっ!」


誰かもわからないその言葉が「合図」かのように、散らばっていた子供たちが集まる。


これは俺の中で一番古い記憶。

俺が、<異端な存在>なのだと初めて認識した時の記憶。


己の周りをぐるりと囲む同い年ぐらいの子から、ちょっと年下の子たち。

幼い俺はその時点で、ビクビクと怯えていた。


「……っ…あの…………っ!」


意を決して、言葉を発するが詰まってしまう。

自分を取り囲む子たちの目に竦んでしまう。


怒り、恐怖、不安……

そんな様々な感情が潜んでいる視線を浴びれば、大人であろうと戸惑うだろう。

子供ならなおさら、怯える。


「アッシュ、なんでオマエここにいるんだよ?」


「ここはオレたちの遊ぶ場所!オマエなんか、イラナイんだよ!」


「厄災の子のくせに!」


「災いの子!」


「オマエなんか、きえちまえっ」


浴びせられる言葉に、感情に、視線に。

耐え切れなくなった俺はそこから駆け出した。

一目散に走って、走って、走った。


逃げ出したい!

ここからいなくなりたい!

消えてしまいたい!


押し潰されそうな己の感情に、

訳のわからない悲しみに、

涙を流しながら、走り続けた。


まるでここが世界の終わり。だと言わんばかりに先が真っ暗な闇が広がっている場所がある。


そこは<世界の終わり>と呼ばれていて、

その先には楽園があると言われていたり、

ただひたすらに暗く、何もない無限の闇が続く「地獄」だとも言われている。


だから、滅多に人は近寄らず誰もいない。

そんな所まで俺は走り続けてきた。


人の目がある限り、人がいる限り、俺はあの感情と視線からは逃れられない気がした。


「っ…はぁ、はぁっ……ぅ…くっ……ひっく…ぐす……」


走ることを止めた途端にポロポロと、涙が溢れてきた。

悲しいのか、と聞かれれば……そうなのかもしれない。

怖いのか、と聞かれれば……そうなのかもしれない。

言いようのない感情が自分の中に溢れそうなほどにあり、それをどう表現したらいいのか……

その頃の俺にはわからなかった。


唯一、涙と共に溢れそうな感情を少しだけ流してしまうと、楽になったのでそうして泣いていた。


<灰色>の世界の端っこで


その先は楽園なのか地獄かもわからない


<世界の終わり>は静かに闇を抱えていた

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魔法色世界<マジックカラーワールド> 結城 @yu_u_ki2525

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