320日目:反対理由の真相。

 神聖歴六一〇三年・木目牛このめうしの月第二七日・天気:晴


 ふぁ~よく寝ました。初めて利用する宿でしたけど、この宿は大当たりです。

 美味しい料理やふかふかベッドに加え、部屋には専用のお風呂までありました。

 一人一泊銀貨二枚でこれほど設備が整った宿は探してもなかなかないんですよ?

 できれば普段からここを利用したいほどです……お金が続けばの話ですが……。

 はぁ……お金は増えても増えても足りませんね……本当、世知辛い世の中です。


 早朝からそんなことを嘆きつつ、朝食後は冒険者ギルドへ。

 到着後、私は皆と別れて一人でギルドの資料室に向かいます。

 今日はそこでセーヴェル遺跡ダンジョンについて調べ直すつもりです。

 皆が依頼へ行っている間に一人だけ調べ物なんて……でも、頑張らないと。

 だって私はリーダーですからね。仲間の不安を解消するのは私の務めです!


 そう意気込んでいたら、いつの間にか資料室の前に着きました。

 頑丈そうな木製の扉を静かに押し開くと、ふわりと周囲に埃が舞い上がります。

 ケホッ、ケホッ……凄い埃です。職員さんたち、掃除とかしないんですかね?

 

 咳込みつつも規則正しく並ぶ書架の中から目当ての資料を探します。

 ふむ……掃除はされていませんが、しっかりと整理はしているみたいです。

 これなら意外とすぐに見つかるかも……って、ありましたよ!

 探していた【セーヴェル遺跡ダンジョン調査資料】です!

 作成から十年ほどたっていますが、まだ十分使えます。

 

 その後、部屋の隅の椅子に腰かけ、調査資料を読み始たんですが……。

 ……変ですね。ごく普通の遺跡系ダンジョンとしか思えません。

 一応、他では見ないような罠もあるにはあります。転移系の罠とか。

 

 あ、転移系の罠はかかるとダンジョンのどこかへ飛ばされる厄介なヤツです。

 でも、それが仕掛けられている深層へ近付かなければ問題はありません。

 というか、今の私たちでは中層に到達できるかも怪しいところです……。


 罠に問題がないとするとあの二人は何をあれほど気にしていたんでしょう?

 う~ん……ハッ!? もしや罠ではなく魔物のほうに問題があるのでは!?

 よし、今度はそっちを調べましょう……厄介な魔物がいるのかもしれません。


 数十分後……なるほど、そういうことですか。

 魔物一覧を隅から隅まで読むと、二人が反対する理由が分かりました。

 改めて見てみるとこのダンジョン、ナメーク系の魔物が沢山出てきます!

 その数ざっと三十種ほど……凄いですね。まるでナメークの見本市です。

 

 私はナメークが出るという認識だけでしたが、二人にとっては地獄でしょう。

 彼女達、特にノアさんはナメーク系の魔物が大嫌いですからね……。

 だから、二人で協力して難度を理由に反対したに違いありません。

 

 ……これは今夜きっちり話し合わないといけませんね。


 でも、ここを攻略するとナメークハンターズが不動の二つ名になる気も……。

 まぁ、大丈夫ですよね! 大丈夫ですかね? 少し不安です。


 今日の収支

 銀貨:-7枚(宿泊費×6+ソシオ)(食事◎、寝床◎)

    +4枚(依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨20枚、銀貨49枚、銅貨34枚


 (゙ `-´)/ しっかり問い詰めるのです!

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