173日目:オーガ。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第三日・天気:晴


 昨日、王都を出発して翌日のお昼。ようやく目的地の森へ辿り着きました。

 一応、馬車を使っての移動だったんですけど……。

 流石に四パーティ、二十三人もの大所帯だと時間がかかりました。


 今回も王都南にある森ですが、薬草採取の場所とはまた違います。

 あれよりも更に南に位置していてもっと深い森です。

 入口から中へ数歩入れば、もう陽の光が届かなくなるような暗い森。

 いつなにが出てくるか分からない不気味さがあります。

 

 しかし、そんな不安を感じつつも森の中へ。

 隊列は重鎧で固めたパーティ、アッシュハマーが先頭です。

 中間は私たちのパーティとBランク集団のサフィールが。

 殿は弓パーティのアルクが務めます。

 

 そうやって夕暮れ時の様に薄暗い森を歩いていると突然、先頭が足を止めます。

 気が付けば、周囲は静寂に包まれていて小鳥の声すら聞こえません。

 全員が困惑する中、後方から風に乗って運ばれてくる血の臭いと強い腐敗臭。

 それにハッとした瞬間、殿にいたアルクのメンバー数人が宙を舞いました。


 私たちの背後に回り込み、音もなく襲撃してきたのは緑色の巨人……オーガです!

 全く予想外の場所から現れた目標に、合同パーティはたちまち大混乱に陥ります。

 その間もばさら髪を振り乱し、アルクのメンバーを襲うオーガ。

 応戦しようとしていますが、彼らの武器は弓。あまりに相手が近過ぎます。


 この混乱の中いち早く態勢を立て直したのは、やはりサフィールのメンバー達。

 後衛職を残し、前衛の方たちが武器を手に取りオーガへ立ち向います。

 よし、私たちもできることをしましょう。

 ニコさんとルルちゃんはソシオを使い、吹き飛ばされたアルクのメンバーを回収!

 私は前線に残されたアルクの人達を助けるので、ノアさんはその援護を!

 行きますよ! でも、全員無理はしないように!


 各々に指示を出し、私も戦いの中へ身を投じます。戦況はオーガが有利。

 やはりBランク冒険者といえども周囲に怪我人がいると満足に動けない様子です。

 なので、私がやることは怪我で動けないアルクのメンバーを回収すること。

 しかし、怪我人へ接近しようとすると、オーガの拳がそれを妨害してきます。

 近づけずにいると、後方からノアさんの土属性の攻撃魔術が!


 僅かに生まれた隙に怪我人へ駆け寄り、急いで背に抱えてその場を離脱。

 けれど、オーガの拳は執拗に私を追ってきます。

 それを防いでくれたのは遅れて戦闘に参加したアッシュハマーの人達でした。

 あの重い一撃を受け止めるとか重装備は伊達じゃないですね。


 その後、どうにか怪我人を回収し終えると、戦況はジリジリと私達が優勢に。

 そうして一時間後、ついにオーガが大地に倒れ伏します。

 怪我の治療を手伝いつつ見ていましたけど……Bランク冒険者って凄いです。

 私もいつかなれるでしょうか……なりたいですね。


 ……こうして多くの怪我人を出しながらもオーガ討伐は無事終了したのでした。



 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨1枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


 (_ _;)…パタリ 怪我人の回収に大忙しでした。

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