174日目:王都南区キャボット街。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第四日・天気:曇


 ふぁ……朝日が目に染みますね。昨日は森の入口で野宿でした。

 本来ならオーガ討伐後、すぐに王都へ帰る予定だったんですけどね。

 怪我人が多いので魔物が出やすい夕暮れ時の移動を避けたんです。


 さて、帰りですが馬車を二手に分けることになりました。

 理由は負傷者を早めに治療するためです。

 一方は東区アルシス街へ、もう一方は南区キャボット街へ向かいます。

 森から近いのは当然、南区です。

 なので、怪我人は南区へ行く馬車に乗ることになります。


 で、私たちが現在乗っている馬車は……南区へ向かっています。

 え? 誰も怪我をしていないのに、こちらの馬車に乗っている理由ですか?

 ……負傷者の救助と治療に奔走していたら、そのまま任されてしまいました。

 今も荷台ではニコさんが怪我人の応急処置に大忙しです。

 はぁ……早く帰ってゆっくりしたいですね。


 負傷者に気を使いながら静かに馬車を走らせること数時間。

 ようやく王都南区キャボット街へ到着しました。時刻はお昼少し過ぎ。

 お腹がすきましたが、先に負傷者を治療院へ運ばないと……。

 ……昼食までもう少しの辛抱です。


 移動中、馬車の中から街の様子を少し観察してみます。

 ……東区とはだいぶ雰囲気が違うんですね。

 まず建物は全て木造で、そのどれもが優しく柔らかな印象を受けます。

 街全体も静かなもので東区のような喧騒はまるでありません。

 通りには大勢の人がいて賑やかなんですけどね。

 ……なんだか森の中にいるような不思議な街です。

 同じ王都でもこんなに違うとは思いませんでした。

 ……残りの北区へ行くのが今から楽しみですね。


 そんなことを考えていると、馬車はいつの間にか治療院の前に……。

 清潔感の漂う白い木造の建物はどことなく教会の様な雰囲気があります。

 馬車に気が付くと、白い服に身を包んだ職員の方が数人中から出てきました。

 彼らは事情を聞くと慣れた様子で怪我人を次々と建物内へ運んでいきます。

 なにか手伝おうと声をかけましたが、やんわりと断られてしまいました。

 ……うん、見た感じ泥だらけの冒険者ですからね……仕方ありませんか。


 というわけで、怪我人は治療院の職員さんに任せその場を去ることに。

 まずは馬車を返却しに行きましょうかね……。

 話ではどこの貸し馬車屋に返してもいいということでしたし。

 そのあとは昼食を食べて、宿屋へ向かいましょう。

 折角、南区に来たんですから一泊ぐらいしてもいいですよね。


 ふふっ、実は移動中にいい感じの宿屋を見つけたんですよ。

 大通りに面している少し古い感じの建物だったんですけどね……。

 でも、その前を通るととてもいい香りがしたんです。

 あそこの夕食は絶対に美味しい、そんな気がします! 今から楽しみです!


 あ、東区へは明日朝一番で駅馬車に乗って帰ります。

 多分、それでも東区組の馬車と到着する時間はほぼ同じ筈です。



 今日の収支

 銀貨:-1枚(昼食代×4)

    -25枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床☆、食事☆☆)

 ――――――――

 残金:銀貨75枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


ヽ(=´▽`=)ノ この宿最高です!!

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